第58話 ロアダルギア廃鉱山
アキト達は身支度を整えて馬車を降りた。
「では、馬車を処分してきますわ」
メリダは馬車をキサラギ山道の方向へひとり走らせた。
遠くからかすかに音が聞こえた。しばらくしてメリダは帰ってきた。
「お待たせしましたわ。では参りますわ」
一行は砂利道を進む。砂利は石となり、進むにつれて道は険しくなっていく。
目をこすっていたルナは力尽きたかのように座り込んだ。
「ルナちゃんはもう限界のようです」
アリアはしゃがみルナの背中を撫でる。
「では、僕が…」
アキトはそう言うとルナを抱えた。
「にいに…」
ルナはアキトに抱えられると静かに目を閉じた。
恒星エリーゼが東の空から昇り始める。
「もう少しですわ」
先頭にいるメリダが声をかける。
雲がしだいに陽光を遮り始め、やがて風が強くなってきた。
一行が1時間ほど歩いた頃、大穴の開いた岩肌が見えてきた。辺りは暗くなりポツリ、ポツリと雨が降り始める。
「姫様?」
メリダは振り返りアリアを見た。
「私は大丈夫です」
アリアはか細い声で答えた。息が荒い。
メリダは立ち止まりアリアを見つめたあと告げた。
「本来ならアキトさんにやってもらいたいのですが、仕方ありませんわ」
「姫様、失礼いたしますわ」
メリダはアリアを抱き上げた。
「なにをするのですか、メリダ」
アリアは手足をバタバタと動かした。
「姫様、なにも案ずることはありませんわ。このメリダにお任せください。わたくしの首に手を回してくださいませ」
「こうですか…」
アリアは言われたとおりに手を回した。
「これは絵になりますわ。ザ・お姫様抱っこでございますわ」
メリダは高々と宣言した。
アリアの頬が少し赤くなった。
メリダはルナを抱えているアキトに言った。
「少しペースをあげてまいりましょう。本降りになる前に穴の中に入りますわ」
アキトは頷く。二人は駆け足で大穴を目指した。
ポツ、ポツと雨は少しずつ勢いを増してきた。
「アキトさん、そこぬかるんでいますわ。気をつけてくださいませ」
「ありがとうメリダさん」
二人はひたすら前へ前へと進んだ。
やがて岩肌にぽっかりと空いた大穴が目の前に見えてきた。
メリダがアキトの様子を見たあと言った。
「あとは平坦な道ですわ。アキトさん頑張ってくださいませ」
「僕は大丈夫です」
アキトは答える。
口から空気を吸い込み、力を振り絞りただ歩き続けた。
そして————
ついに二人は大穴へ駆け込んだ。
ほどなくして外は前が見えないほどの本降りとなった。
続く




