第54話 サラ・キャンベル
「彼らも私達を見ているはずです。ここで露骨に避ければかえって怪しまれます。ここは予定通りシンカイに向かうべきです」
アリアはメリダに話す。
「しかし、それでは敵の中に入っていくようなものですわ」
「そうなります。しかし、彼らは私たちをまだ敵とは認識していません。ここは彼らに近づき、普段通りに会話したあと自然と離脱するのがよいと私は思います」
メリダはしばらく考えたあとアキトに聞いた。
「ジョンはどう思います?」
「そうですね。僕も逃げることは不可能だと思います。確かにアリアさんの策以外に今は選択肢がないですね」
アリアはアキトを見て頷く。
「そうです。今の私達にはその選択しかありません」
「では、メリダ。彼らとの折衝をお願いします。安全に離脱できるよう話を進めてください」
「わかりましたわ。わたくしが交渉してきますわ」
馬車は宿場町シンカイの外に展開しているガルドア部隊に向けてゆっくりと進んでいった。
シンカイの入り口付近には多数の幕舎が並んでいた。
「では、行ってまいりますわ」
メリダはそういうと、ガルドア兵が駐留しているところへゆっくりと歩き出した。
◆ ◆ ◆
「あのぉ、すみません」
メリダが軽装備の兵士に声をかけた。
「なんでメイドがこんなところにいる。怪しいやつめ」
「あやしくはありませんわ」
メリダは両手を必死に振った。
「わたくしは主人に様子を見てくるようにと言われまして…」
メリダが馬車を指さす。
「ぁぁ、あんた旅人だったのか」
兵士は警戒を解いた。
「シンカイの様子はどうなっているのでしょうか?」
「今日はだめだ。陛下と近衛の者で一杯だ。警備のため一般客は立入禁止となっている。宿は諦めな」
「陛下!?」
メリダは驚く。
「別にお忍びというわけじゃないから隠す必要はない。あれを見てみな」
兵士は指先で旗を指した。ガルドア帝国の皇帝が用いる金の狼の旗が風にたなびいていた。
カイゼル!!!アルディアの仇!!!
メリダは唇を噛みしめる。
「本当ですわ。わかりました、わたくしたちは別の宿場町を目指しますわ」
メリダは一礼し立ち去ろうとしたとき、甲高い声が響く。
「あたしの飯を作ってくれるやつはおらんのかぁ!」
メリダは思わず声がした方を向いてしまう。
そして————
幸か不幸か声の主と目線が合ってしまう。
「おい、そこのメイドちょっとこい!」
「わたくしですの?」
メリダは自分を指差す。
「お前しかおらんやろが!」
魔女帽を被り赤い髪をした少女が指先をメリダに向ける。
「わたくしはただの旅の者で…」
「お前、あたしの言うことが聞こえなかったのか?」
少女の指先が輝きだす。
「悪いことは言わねぇ、サラ様の言うとおりにしたほうがあんたのためだ」
兵士が小さな声で囁いた。
「わかりましたわ」
メリダはゆっくりとサラのところへ歩いて行き、サラと対峙した。
「お前、名前は?」
「わたくしはメリダと申しますわ」
「あたしはサラ・キャンベル。まぁ魔女だ」
続く




