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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
第三章 アルデ州へ

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第53話 検問II

隊長は荷台を覗くとアリアとルナに出てくるように促した。


二人は外に出ると手を繋いだ。


アリアはルナの手が少し震えているのを感じた。


隊長は二人を見ると口を開いた。


「これはずいぶんとお美しいお嬢様方だ」


「ところであなた達は姉妹なのですか?」


「はい、私は姉のアリア、こちらは妹のアンナです」


アリアは背筋を正して答えた。


「姉妹にしては髪の色が違うみたいですが…」


隊長がルナの髪色を指さした。


「はい、私たちは異母姉妹です」


アリアは落ち着いて答える。


「そうでしたか。これは失礼しました」


隊長はルナに目線を移した。


「お嬢ちゃん、名前は?」


隊長はルナの目の動きをじっと観察した。


「私の名前はアンナです」


「ありがとう」


隊長は礼を述べると兵士に顔を向けた。


「あなた、どうなんです?」


「あの極限状態でしたので顔までは…」


「うーん」


隊長は頭を掻いた。そして手配書に描かれている姿とルナを見比べた。


「これは、手配書の顔とは似ても似つかない」


隊長はしばらく黙ってなにかを考えたあと微笑みながらルナに言った。


「おじさんに名前を教えてくれてありがとう。"ルナ"ちゃん」


隊長は細い目を見開きルナを見つめた。


その刹那。


アリアは手から汗が噴き出し、アキトは呼吸するのを忘れ、メリダは服のスリットに素早く手を入れた。


そして時間は動き出す。


ルナは首を傾げた。そして不思議そうな顔をして眼鏡の隊長を見つめた。


「私はアンナです。おじさま」


アリアの手の汗は止まり、アキトは呼吸を思い出し、メリダは服のスリットから手を出した。


「おじさん、間違えちゃった。ごめんね。アンナちゃん」


隊長はそういうと兵士たちに囲みを解くように指示をだした。


「お手間を取らせました。どうぞお通りください」


隊長は一行に深く頭を下げた。


二人が荷台に戻るとアキトは手綱を振った。


「では、失礼しますわ」


メリダは隊長に手を振った。


馬車は検問を越え、再び北上を開始した。


◆ ◆ ◆


車輪と馬の足音だけが聞こえた。しばらく、誰も話さなかった。


周囲に人気がなくなり、緊張の糸が解けた頃メリダが口を開いた。


「生きた心地がしませんでしたわ」


「メリダ、私もです」


アリアは大きく息を吐いた。


「僕もです。アンナ、ありがとう」


アキトは前を向いたまま言った。


「アリア姉様に教えられた通りにしただけなの」


ルナは頬を緩めた。


「いえ、教えられたからといってあの状況でなかなか演技できるものではありません」


「私たちの命を救ったのはアンナです。よく頑張ってくれました」


アリアは微笑んだ。


「みんなの役に立ててアンナ嬉しいの」


ルナは満面の笑みで答えた。


「そうです。アンナのおかげです」


アリアはルナの頭を優しく撫でた。


「うれしいの」


ルナは上機嫌だ。


メリダは振り返るとアリアに聞いた。


「わたくしのお色気大作戦も褒めてくださいませ。アリアさん」


「そうですね。よくやってくれました」


「では、なでなでしてくださいませ」


メリダはアリアに頭を向けた。


「わかりました」


アリアはメリダの頭をポンポンと叩いた。


「わたくしとアンナの扱い方がまるで違いますわ」


メリダは頬を少し膨らませた。


「メリダは私より年上ではありませんか。大人げない」


アリアはメリダを諭した。


「アリアさんのい・け・ず」


メリダは軽く舌を出したあと前を向いた。


エリーゼが西に傾き夕日が大地を朱色に染めた頃、前方に宿場町シンカイの柵が見えてきた。


メリダは望遠鏡を取り出し町の様子を見た。


するとその入口には青銀の鎧を着た者の集団がいた。


「ジョン、馬車を止めてください。前方に連隊規模のガルドア兵ですわ」


メリダが叫んだ。


続く


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