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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
第三章 アルデ州へ

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第50話 旅路

郡境界を越えるたびに検問があった。


通行証を確認したあと荷改めが行われる。その際に4つの樽は必ず蓋を開け入念に調査された。


アキトについては特に調べられることはなかった。


兵士にとっては赤髪の不健康そうな下男という評価以上のものは得られないのだろう。


恒星エリーゼは西に傾き夕陽が大地を黄金色に照らす。


馬車は予定通り港町ポートピアに向かっていた。


「私の予測よりうまくいっています」


アリアは荷台より顔を出して話しかけた。


「ジョンさんには誰も興味を示しませんわ」


メリダが応じる。


「これはメリダのメイクスキルに感謝しなければなりませんね」


「変装術は斥候部隊にいたころに叩き込まれましたわ。あの訓練は二度としたくないですわ」


メリダは軽く舌をだしたあと振り向いた。


「アリアさん、もっと、わたくしを褒めてくださってもよいのですよ」


「では褒めます。メリダえらい、えらいです」


アリアはメリダの頭をポンポンと軽く叩いた。


「まぁ、アリアさん」


メリダは頬を緩めた。


「重要なことですから、再度確認します」


アリアは人差し指を振った。


「ここから先、"アキト""ルナ"と言われても返事をしてはいけません」


「わかりました」「わかったの」


アキトとルナは頷いた。


「アキト、わかりましたね」


アキトは何も反応しなかった。


「ルナちゃんも、ですよ?」


アリアはルナを見つめた。


「はい、アリア姉様」


ルナは笑顔で応じた。


「"ルナ"で返事してはいけません」


「ごめんなさいなの」


ルナは俯いた。


「では、もう一度。ルナちゃん?」


ルナは黙っていた。


「よくできました。アンナ」


アリアはルナの頭を優しく撫でた。


◆ ◆ ◆


日が沈み、夜の帷が降り始め星々が輝き始めた頃、一行はポートピアの正門前に到着した。


門番は酒樽を開けて調べたあと一行をポートピアへ迎え入れた。


ポートピアの表通りには灯籠が並べられ、複数の宿と海鮮料理の店がひしめき合っていた。


海からの風が潮の匂いを運んでくる。


「海の匂いがするの」


ルナは目を輝かせた。


「今日はあの宿屋に泊まりますわ」


メリダは指で指し示した。一行は「しぐれ」という看板を掲げている宿屋の駐馬所に馬車を止めた。


「しばらくお待ちくださいませ。わたくしが交渉してきますわ」


メリダは御者台から降りると駆けて行った。


しばらくすると戻ってきた。


「一部屋とれましたわ」


「アリアさん、アンナさん、そしてわたくしは宿に泊まります。ジョンさんは馬車を見張っていてください。あとでお食事をお持ちしますわ」


「わかりました。アンナ参りましょう」


アリアはルナの手を引く。ルナはアキトを見てつぶやいた。


「にいに————」


と言いかけて慌てて口をふさいだ。


「ジョンはこないの?」


「やむをえぬのです。下男とはそういうものです」


「わかったの」


ルナはアキトに軽く手を振ったあとアリアと手を繋いで宿へ向かった。


アキトは一人馬車に留まる。


天空には蒼き月レイズと満天の星空の世界が広がった。



続く


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