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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
第三章 アルデ州へ

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第48話 旅立ち

紅天楼はいつもと変わらず営業を続けていた。


アリアが立案した逃亡計画にしたがってメリダが少しずつ準備を進めていった。


公衆の注目を浴びていた手配書も今では汚れ少し破れている。もう汚れた手配書を見る者はほとんどいない。


あの夜の騒動から一ヶ月が経過したのである。


蒼き月レイズが天空の中心に昇った頃、四人は丸テーブルを囲み最後の打ち合わせをしていた。


テーブルの中心に置かれたランタンの炎がゆれる。


「では、最終確認をはじめます」


アリアが話を切り出した。


「手配書を見たところ、あれはアキトを捕らえることのみを目的としたものです。手配書の似顔絵はかなり似ています。サネユキに関する情報も詳細です。一方、ルナちゃんの容姿は実物とはかなり乖離しています。アキトを捕らえるための補足情報という位置づけでしょう」


「ルナちゃんは私と同じ格好ならば年の離れた姉妹としてみなされると思います」


アリアとルナは女性用の革鎧一式に白いズボンをはいていた。髪が少し伸びたルナはアリアと同じようにポニーテールに髪型を整えていた。お揃いの薄ピンクのリボンで髪を結んでいる。


「では、ルナちゃん。練習した成果をみます。私のことを呼んでみてください」


ルナは頷くと精一杯の上品な声色で言った。


「アリア姉様————」


アリアの表情が一瞬緩む。


「よくできました。ルナ」


アリアはルナの頭を撫でたあとアキトに目線を移した。


アキトは髪をすべて切り落としていた。灰色のローブを頭から被り、赤髪のウイッグをつけている。


アリアは変装の出来を確認するべく顔を近づける。


アキトは距離感に少し動揺したが、それを表に出さないように心がけた。


アリアは手を頬に当てて思案したあとメリダに指示した。


「メリダ、目の下の化粧をもう少し濃くしてクマを深くしてください」


「わかりましたわ。アリアさん」


「では、アキトさん。後でわたくしの部屋へいらしてくださいな」


「わかりました」


アキトは頷いた。


「次は通行許可証についてです」


「こちらが通行許可証になりますわ。あのタダ飯食らいもこーゆーことには役に立ちましたわ」


メリダが得意げな顔で羊皮紙を広げた。


羊皮紙には確かに郡長ブルトとロンフォール州太守テオドールの封蝋が施されている。


アリアは拡大鏡を取り出し封蝋の真贋を調べる。そして封蝋の匂いを嗅ぎ、ランタンの明かりに近づけ封蝋の色合いを確認した。


「問題ないでしょう。ガルドア帝国の香石類をちゃんと混ぜています。メリダ、よくやってくれました。ありがとうございます」


「どういたしまして」


メリダは軽く頭を下げる。


「最後に紅天楼のことですが、まずはゲンさんとの話の内容を聞かせてください」


「ゲンさんには"旅から帰ってくるまで"この紅天楼の管理をお願いしましたわ」


「ゲンさんはなにか言っていましたか」


「ただ『分かりやした』とだけ言っていましたわ」


「そうでしたか」


アリアはしばし沈黙したあと続けた。


「ゲンさんを謀るのは心苦しいですが、いつか謝りましょう」


「必ず、謝りますわ」


メリダも小さく頷いた。


アリアは一同を見回したあと静かに言った。


「準備は整いました。夜明けとともに出発しましょう」


「皆さん、手を重ねてください。風の女神シルフィに旅の成功を祈りましょう」


アリアの手にルナの手が、そしてアキトの手が最後にメリダの手が重なった。


一同はしばし目を閉じ旅の成功を祈った。



続く


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