第46話 夜
夜の帷は落ち満天の星空に蒼き月レイズが昇り始める。
心地よい虫の鳴き声が秋を物語る。
アキト、アリア、ルナ、メリダは丸テーブルを囲み座っていた。
メリダが口を開いた。
「本日、アキトさんとルナちゃんの手配書がこの紅天楼にも来ましたわ」
「僕だけじゃなくルナも…」
アキトは唇を噛む。
「ルナちゃんは、私が守るから安心してください」
アリアはルナの手を握る。
「アリアねえ、ありがとうなの」
ルナは微笑む。
「となるとアリアさんはアキトさんと行動をともにするということになりますわ、その意味はお分かりですか?」
メリダはアリアの目を見つめる。
「分かっています。昨日、アキトを止めることができなかった以上そうすることに決めたのです。メリダ」
アリアはルナの手を強く掴む。
「アリアさん…」
アリアがルナの手を強くつないでいるのを見てアキトは言葉を止めた。
「決意は変わらないようですわね」
メリダは一同を見渡す。
「では、わたくしも参りますわ。アルデ州に向かわれるのでしたらアルディア一のメイドであるわたくしが役に立ちますわ」
そしてメリダはアリアを見て顔を緩めると言った。
「アリアさんのお世話ができるのは、テレシアではこのわたくしだけですから!」
「私はもう大人です」
アリアは少し頬をふくらませて反論するも「そういうことにしておきますわ」とあっさりと躱される。
「では、ここからはアルデ州に行きます作戦ですわ」
メリダは拳を上げた。
「行くのぉ」
ルナは無邪気に拳を上げた。
「さあ、アリアさんもアキトさんも」
「わかりました。行きます」
アリアも拳を上げる。それを見たアキトも拳を上げて静かに言った。
「ありがとう、メリダさん。ありがとう、アリアさん」
全員の拳が上がった。
蒼き月レイズの光が窓際に座っていたルナを照らす。その刹那、ルナが煌めいたかのような錯覚をアキトは感じた。
四方の柱にかけてあるランタンの炎がゆらゆらと揺れている。
一同は上げた拳を下ろしたあと微笑んだ。
メリダは立ち上がり言った。
「お茶をもってまいりますわ」
そう言うとメリダは厨房のほうへかけていった。
残された者は黙ったまま互いを見つめている。外では虫の鳴き声が秋の夜を謳歌していた。
◆ ◆ ◆
「お待たせしましたわ」
メリダが各自にお茶の入った木のコップを配る。
ルナはコップをとるとコクコクと飲んだ。
「お茶、おいしーの」
「ルナちゃんのお茶には蜂蜜を少し混ぜておきましたわ」
メリダは微笑む。
「わたくしたちはもはや運命共同体ですわ。だから、もう隠しごとはなしですわ」
メリダは一同を見渡す。メリダに異を唱える者はいなかった。
「まず、わたくしのことを教えますわ」
「わたくしは元アルディア王国第一斥候隊に所属していました。隊長はロシュさまですわ」
メリダは胸を張る。
「僕たちを助けてくれたロシュフォードさんのことですか?」
アキトは目を見開く。
「そうですわ、もう10年前のことですけどね」
メリダはアリアを見つめた。アリアの様子を確認したあと話を続けた。
「アルディア王国がガルドア帝国に滅ぼされたあとはアリアさん専属のメイドとして今日に至りますわ。以上がわたくしの自己紹介になりますわ」
「次はアリアさんの紹介ですわ。アリアさんは————」
メリダは言いかけたがアリアは手を出してメリダを制止した。
「私が話します。メリダ」
アリアはお茶を一口飲むと静かに話し始めた。
「私の本当の名前はアルテシア・ヴィ・アルディアです」
続く




