第32話 道
ルナはアキトの後ろに隠れてロシュフォードを見ている。
「立ち話もなんだ、まずは座ろうか」
ロシュフォードは二人をじっと見つめる。
「朝食はまだみたいだな、俺が作ってやる。ちょっと待ってくれ」
そう言うとロシュフォードは手慣れた手つきで石炉に火を入れて鉄鍋に湯を沸かした。
湯気が湧き出る。
アキトの後ろに隠れていたルナが石炉の前に出てきてロシュフォードの調理を見ている。
持ってきたバックパックを開くと乾燥ハーブ、ベーコン、固パン、岩塩を鍋に入れた。
ものの数分で朝食が出来上がった。
ロシュフォードは真っ先にそれを口にいれた。
「うむ、いい味付けだ」
「大丈夫だから少年も嬢ちゃんもまずは食べてくれ」
彼は温かいスープを皿にいれて二人に渡した。
「おいしいの」
ルナは涙ぐみながらスープを口に運ぶ。
アキトも食べてみた。程よい塩味がいい感じだ。
「おいしいです」
二人は黙々とスープを口に運んだ。
二人が食べ終わるのを待ってロシュフォードは口を開いた。
「少年と嬢ちゃんの名は?」
「僕はアキトです」
「ルナ」
ロシュフォードが一息置いて質問した。
「確認したいことがある。セザールを斬ったのはアキト君か?」
ロシュフォードがアキトを見つめた。
「僕が斬りました。たぶん…」
アキトが小さな声で答えた。
「俺はセザールに剣技で勝った奴を今まで見たことがなかった。だが、アキト君は奴に勝った」
「気が動転して、ただ無我夢中で…」
「セザールは左目に大きな傷を受けたのは事実だ」
ロシュフォードはサネユキに目を向けた。
「今、アキト君が置かれている状況について説明したい」
「セザールを斬ったアキト君は帝国にとっては反逆者ということになる。このままでは反逆者として帝国に追われるだけだ」
「そうなりますね…」
アキトは俯いた。
「打開策は一つだけある」
アキトはロシュフォードを見つめる。
「————帝国を倒すことだ」
「僕が帝国を倒す?」
「アキト君ならできる。俺はそう信じたい。そしてセザールを斬れるのはアキト君だけだ」
「俺はアキト君に賭けたい。だから"今"助ける」
ロシュフォードは語気を強めた。
「ロシュフォードさん、僕からも質問があります、よろしいですか?」
「答えられるものなら答える」
ロシュフォードは頷く。
「兄さん、カイト兄さんの消息を知っていますか?」
「カイト?」
「僕と同じ黒髪で大柄な人です」
ロシュフォードは落ち着いて答える。
「あの男か…」
「君たちを逃がすため山道を塞ぎ兵を斬り続けていた」
「だが、体力が尽きたところにやってきた狂人ライに斬られた」
「残念だが…」
アキトの両目から涙が溢れ出す。
流れ落ちる涙が止まらない。
「うぅぅぅ、兄さん————」
声を押し殺して泣いた。
「デカにぃ、ねぇね…」
それを見ていたルナは声をだして泣いた。
ロシュフォードは何も言わず、二人の涙が枯れるまで静かに見守り続けた。
続く
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