第31話 ロシュフォード
「吊り橋を落とすとは、ろくなことしないねぇ…」
ライは両手をあげる。
「これじゃ兵をつれていくのは無理だね」
「ロシュフォードはおでについて来なさいよ」
「はっ」
ロシュフォードはガルドア式敬礼をライにする。
そして二人は迂回路を目指した。
二人は雨の中夜通し駆けてやがて対岸にたどり着き、アルデ州方向へ追跡を続けた。
「雨でおでの大嫌いな血の匂いがしなくなったねぇ…」
ライは不機嫌に笑う。
やがて二人の前に分岐路が出てきた。
あれは…
ロシュフォードは雨で消えかけていた右側方向に微かで小柄な足跡に気付く。
彼はさりげなく自分の足跡を上書きする。
「ライ様、ここは二手に分かれましょう。私は右側を探しアルデ州方面へ向かいます。ライ様は左側から向かってください」
ライは処刑斧の柄で自分の肩を二度叩いた後、口を開いた。
「そのほうが確実だねぇ…」
「だけど、あんたが見つけてもおでの手柄だからねぇ… ケヒッ」
「もちろんです。ライ様」
「私の手柄はすべてライ様のものです。では、私は右側を捜索します」
ロシュフォードはライに敬礼すると右側へ駆けて行く。
消えかかっている微かな足跡を追い、やがてアキト達のいる石窟の前までやってきた。
◆ ◆ ◆
幸運なことに夜の間は何事もなかった。
朝が来ても、アキトは疲労のあまり深い眠りについていた。
先に起きたルナが石窟の前にいる男に気付く。
「にいに、起きて!にいに!」
ルナは大きな声で叫び、アキトを懸命に揺する。
「ん…」
アキトの意識が回復し、辺りをみると石窟の入り口に男が立っている。
慌てて横にあったサネユキを抜き構える。
「ようやく起きたか、少年」
男は口を開く。だが、剣を抜く気配がない。
「よく考えるんだ、少年。俺が敵なら寝ている君の首を斬っていたはずだ」
「…」
アキトは警戒しまだ構えを崩していない。
「では、これならどうだ」
男は剣帯から剣を外し、アキトに投げた。
「これで俺は丸腰だ」
男は両手を上げる。
アキトは勅使が来た日のことを思い出す。この男も勅使側にいたことを。
「あなたはエルダ村に勅使が来た時、彼らと一緒にいましたよね?」
「そうだ。俺は今、帝国でクソみたいな仕事をしている。だが、俺は元アルディア王国第一斥候隊に所属していたものだ」
「俺の心はアルディアだ」
「自己紹介がまだだったな。俺の名前はロシュフォード。会話ができるのならまずは話し合うのが人というものだ」
「確かにそうですねぇ」
アキトはサネユキを鞘に納める。
「では失礼する」
ロシュフォードは石窟の中に入ってきた。
続く
評価やレビューなどがあれば励みになります。
よろしくお願いします。




