第30話 石窟
アキトは泣くルナを抱きかかえ山道をアルデ州方向へ向かう。
やがて、日も傾いてきた。夕陽が木々を朱色に染めあげる。
夕方になると気温も下がり肌寒くなってきた。
『日が落ちる前に野営の準備をしなければならないぞ』とカイトが言っていたことを思い出す。
寒さをしのぐため、野営地を探さなければならない。
野営できる場所を探しながら山道を下っていると、石でつくられた空洞を見つけた。
アキトは中を見る。
中には誰もいなかった。
石で囲まれた炉があるだけだった。誰かがここで野営していたのだろう。
アキトは石窟にはいるとルナを降ろした。
「ルナ、すこし待ってて」
ルナは頷く。
アキトは背負っていたバックパックをあけた。
カイトとエリナが用意しアキトに持たせたものだ。
中には一枚の毛布、小型ランタン、火打石、炭化布、乾パン、水筒、少量の炭、簡素な調理道具などが入っていた。
「兄に(にいに)、寒いの」
ルナが震えていた。
「毛布だよ、ルナ」
アキトは毛布を取り出すとルナを包んだ。
「兄に、ありがとう」
石炉の灰を掃除し、炭化布を敷いた。
カン、カンッ
火打石で炭化布に火をつけた。
炭化布が燃える。その上に小さな炭を少し置く。
やがて炭は赤くなり熱を持ちはじめる。
炭を追加して口で空気を送る。全体が赤々としてきた。
次に細い木の棒に火を移してランタンを灯す。
石窟に暖色の明かりが広がった。
外を見ると雨が降りだして来た。
アキトは調理道具を使い水を温め白湯を作る。
やがて小鍋から湯気が湧きたった。
鉄のコップに白湯を注ぎルナに渡す。
「ルナ、これを飲んで」
「うん、兄に」
「あたたかいの」
ルナは小さな口でコクコクと飲んだ。
「ルナ、乾パン食べる?」
「いらない…」
ルナは白湯を飲むと眠くなってきたようだ。
「兄に、抱っこ」
「はい、ルナ」
アキトはルナを正面から抱き毛布で包んだ。
「姉ね…いないの、姉ね…どこ」
ルナはまた泣きだす。
アキトはルナの背中を優しくトントンと叩き続けた。
アキトは静かに泣く。
サネユキを側に置きルナが寝るまで外に目を向け警戒していた。
やがて泣きつかれたのか、ルナの寝息が聞こえてくる。
雨の音、炭の弾ける音、ランタンの暖かい光。
疲労が限界に達していたのだろう。アキトも意識が朦朧としてくる。
幻想的な雰囲気の中、アキトはいつしか寝てしまった。
続く
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