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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
エルダ村での日々

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第26話 逃亡

今年のエルダ村での収穫祭は中止になった。


広場にはセザール率いる親衛部隊が駐屯している。


朝、ロシュフォードが捜索を終えて帰ってきた。


ロシュフォードはセザールに跪き報告した。


「殿下、ロワーヌの森をくまなく探しましたがそれらしき形跡は確認できませんでした」


「ちっ、奴らはいずれかへ逃げたということか」


セザールは立ち上がり指示を出した。


「セルケト州、ロマリア州、アルデ州のいずれかに逃亡したんだろう」


「隊を三つに分けろ、俺様はアルデ州を探す。ライ、ロシュフォード、ついてこい!」


「畏まりました、殿下」


「ケヒヒ...」


処刑斧をもった男ライは不気味な奇声を発した。


「エリナを探し捕らえよ!」


「皇帝の勅命に背いた以上エリナは反逆者である。生死は問わぬ!!」


セザールの怒号が轟く。


やがて、エルダ村から3部隊が出発した。


葦毛の馬に乗りセザールはアルデ州へと続くキサラギ山道を目指した。


騎兵が先を行き、そのあとから歩兵が続く。


そして、キサラギ山道の入り口に到着する。


入り口は倒木で塞がれていた。


「殿下、これでは馬は通れません」


「倒木をどかせろ!」


「殿下、三日はかかります」


「ちっ!だが、アルデ州が本命のようだな。お前ら徒歩で追うぞ」


騎兵たちは次々と下馬した。


倒木を乗り越えセザール達は追撃を開始する。


道中、ククリ罠や仕掛け罠がセザール達に襲い掛かり進軍を阻害する。


だが、トムが仕掛けた罠には殺傷性がなかった。ゆえにセザール達の進軍速度を落とすことができなかった。


◆ ◆ ◆


一方、アキト達は初日に比べて足取りは重かった。


日々鍛えたものとそうでないものの差が現れる。


エリナの荷物はカイトが持ち、ルナの荷物はアキトが持った。


会話も少なく、ただ歩いていた。


やがて日が傾き夕陽が草木を紅に染める。


「姉ね、疲れた…」


ルナは呟いた。エリナがルナを見る。


「カイト、ルナがもう限界です」


エリナがカイトを見つめる。


「俺がルナを背負うぞ」


カイトは背と右手にリュックを持ち左手にルナを抱えた。


「もう少しで山小屋が見えるはずだ。頑張ってくれ」


しばらく歩くと古びた山小屋が見えた。


「今日はあそこで休もう」


カイトが山小屋を指差した。


一同は山小屋へはいり、暖炉に薪を置き火を入れる。


温かい豆のスープと乾パンを食べ一息いれた。


「少し周りを見てくる。アキトここを頼むぞ」


カイトはそういうと外に出た。


ルナは疲れたのだろうか、寝息を立てて寝ている。


エリナとアキトは暖炉を囲い座っていた。


「ナガトさんとやってきたときはこんなにも小さかったのに、随分と立派になりましたね」


エリナは微笑む。


「アキトが来てからの日々は私とルナにとって幸せに満たされた日々でした」


「私とカイトをめぐり合わせてくれたのもアキトがいてくれたからです」


「僕も兄さんができて嬉しかったよ」


アキトが微笑む。


「ゴブリンに襲撃されたあの日もアキトがいてくれたから私たちは————今生きています」


「アキト、ありがとう」


エリナは頭を下げた。


「やめてよ、姉さん。急に畏まってどうしたの?」


「アキト、よく聞いてください」


「この先、なにがあるか分かりません。私が後宮に入ることになっても、どうかルナのことをよろしくお願いします」


「ルナはアキトのことが大好きです。私がいなくなったらアキトが唯一無二の兄妹ですから————」


「ルナのことをよろしくお願いします」


エリナは重ねてアキトに願った。


「なんで今そんなことを言うの?姉さん」


「僕たちはアルデ州へ行って四人で暮らすんじゃないの?」


「そうですね、私もそうなればよいと思っています」


「姉さんは僕が絶対に守るよ」


「頼りにしています。アキト」


バチンッ


薪が割れる音が響く。


「アキト、こっちに来てください。最近はしてなかったけど、今から抱きつきの刑を執行します」


エリナがにっこりと微笑む。


「僕、悪いことはしてないよ」


アキトは突然の宣言に戸惑う。


「はい、アキトはお姉ちゃんのところに来てくれませんね」


「お姉ちゃんの言うことに聞かなかったで執行しまーす」


エリナはアキトのとなりに座りなおし、そして刑を執行する。


いつもとは違い優しくアキトを抱きしめた————



続く

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