第24話 家族
勅使が去り、エルダ村には平穏が戻った。
やがて夜になり、虫の鳴き声が聞こえてくる。
四人はテーブルを囲み座っていた。テーブルに置かれたランタンの光が暖かく周りを照らす。
「姉ねがいなくなるのはいやなの」
ルナが涙声で訴えた。
「ルナの言うとおりだ。帝国にエリナを渡すわけにはいかないぞ」
カイトはルナに同調する。
「ちゃんとお話すれば分かってもらえると思います」
エリナが落ちついた声で言った。
いつもはエリナの言葉に抗わないカイトがこの日は違った。
「話して分かるような連中ではない」
カイトは語気を強める。
「領土領民はすべて皇帝のものであるがくそったれどもの法だ」
カイトはアキトに目線を移す。
「アキトの考えを話してくれ」
「僕も姉さんがいなくなるのはいやだし、帝国の考えは間違っていると思う」
「ならば、今は逃げるしかない」
「逃げだせば、勅命に背いた反逆者となります。私一人が帝都へ行けばみんなはいつも通り暮らせます」
エリナは少し寂し気な目で告げた。
「俺は嫌だ。四人で暮らしたいんだ」
カイトが叫ぶ。
「姉ねがいなくなるのはいやなの、姉ねと暮らしたいの」
ルナはエリナにしがみつく。
エリナは目を閉じしばらく考える。そして目を開けると頷いた。
「みんながそういうのなら分かりました」
「よし、俺たちはアルデ州へ向かうぞ。アルディア王国の首都があったところだ。10年たった今でも抵抗活動が続いている」
「俺はそこでレジスタンスに入って帝国を倒してみせるぞ」
カイトは拳を握った。
「アキトも入るか?」
「兄さんが入るなら…」
アキトは頷く。
「善は急げだ、俺はロイドとトムのところへ行ってくる。明日の夜、逃げるぞ」
カイトはそういうと家を出て行った。
◆ ◆ ◆
翌日、四人は淡々と旅立つ準備をした。
そして、村人が眠りについた夜、一同は家を出た。
街道でトムとロイドと落ち合う。
「ロイドさん、トムさん、どうしてここに?」
エリナが声をかける。
「カイトに頼まれてな。キサラギ山道の入り口まで送る。そのあと、いろいろと妨害工作をするためだ」
「簡単に追わせたりはしない」
ロイドは胸を叩いた。
「追手の妨害工作なら任せて欲しいな。罠一杯しかけておくからな」
トムは微笑んだ。
「ありがとうございます」
エリナは頭を下げる。
「夜のハイキングみたいで楽しいの」
ルナは無邪気に笑った。
アキトは空を見上げて思う。満天の星空に願う。どうか四人無事でありますように。
空が白みかける頃、キサラギ山道の入り口についた。
「俺達はここで木を切り倒しまくって街道を封鎖する。やつらの馬を使えなくしてやる」
「カイト、ひと段落したら連絡をくれ」
「ああ」
カイトとロイドは手をかわす。
「アッキーまたな」
トムが手を振る。アキトも手を振る。
「トム、やるぜ」
トムは真剣な顔で頷く。
ロイドとトムは斧で木を切り倒し始めた。
「よろしく頼むぞ」
カイトは二人に頭を下げた。
四人は手を振ったあと、山道へ消えていった。
収穫祭当日の午後————
ガルドア帝国第三王子セザール率いる親衛部隊がエルダ村に到着した。
続く
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