表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
エルダ村での日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/29

第18話 狩

冬————


辺り一面が純白の世界で覆われていた。吐く息が白い。


アキトは村の東側にある小屋へ向かった。


その小屋はカイト達が村の自警団本部として使っている。


自警団と言ってもカイト、ロイド、トム、そしてアキトしかいない。


村で武器を扱うことができるものは自警団員となる。


トントンッ


アキトは小屋の扉を叩いた。


「アキトです」


「開いてるぞ、入れ」


アキトが中に入るといつもの仲間がそこにいた。


「待っていたぞ、アキト。今日はアキトを狩へ連れて行くぞ」


「わかった。僕は何をすればよいの?」


「今日は俺たちに連れてくればよい。それだけだ」


アキトは頷いた。


「冬場は食糧が少ない。俺たちの狩に村の命運がかかっているといっても過言ではないぞ」


「ついにアッキーも狩要員だなぁ」


トムは矢を確認しながら筒へ入れていた。


「アキト、まずは慣れることだ」


ロイドは槍を磨いていた。


カイトはアキトに古びた皮鎧を差し出した。


「これも俺のお古だが今のアキトにはぴったりだ。これをやる」


「ありがとう。カイトさん」


「では、皮鎧を装着してやるぞ」


アキトは皮鎧をカイトに装備させてもらい、そしてサネユキを背中に背負った。


皮鎧にはカイトの匂いが染みついていた。


「アッキー、かっこいい。まるで本物の剣士だなぁ」


トムは感心した。


「似合ってるじゃねーか。アキト」


ロイドは親指を立てた。


「よし、野郎ども行くぞ」


村を出て、四人はロワーヌの森の中へと入っていった。


◆ ◆ ◆


森にはいりしばらく進むと————


「黒兎が二匹だなぁ」


トムが指さす。


「あれを仕留めるよ」


トムは弓矢を構える。


グググググ


弦がしなる。


二連射した。


ビューーーン、ビューーーン、ズサッ、ズサッ


「うまく当たったな」


トムは矢の当たった黒兎に近づくと短剣でとどめを刺した。


「よし、次に行くぞ」


しばらく歩いた。一行は小さな池に近づいた。


すると、一匹の山鹿が水を飲んでいた。


カイトは指でトムに合図を送る。


トムは弓を引き、二連射した。


ビューーーン、ビューーーン、ズサッ


山鹿は悲鳴をあげて逃げ出した。


「ちっ、浅かったか」


ロイドは槍を力限り投げた。


ブッシャャッ


胴に命中。山鹿は倒れた。


「よし、アキト。止めを刺してこい」


カイトはアキトに指示を飛ばす。


アキトは山鹿に近づく。山鹿はアキトを見つめる。


「・・・」


アキトは躊躇する。斬ることができない。


「アキト、ためらうな。山鹿を仕留めればエリナさんやルナちゃん、そして村の人の命を繋ぐ糧となるんだ」


カイトが声をかける。


「アキトがよくいう"いただきます"は、きっと命を頂くという意味なんだと俺は思う」


「生きるためには俺たちは命を頂かなければならないんだ」


「アキト、ためらうな!」


アキトは頷く。


そして、震える手でサネユキを振り下ろした。


山鹿の首から鮮血が噴き出しやがて息絶えた。


「よくやった。アキト」


カイトはアキトの肩を叩いた。


「あとの処理は俺がやるからアキトはそこで見ているんだ」


カイトはそういうと山鹿の解体を行った。アキトはその様子をただ見ていた。


「よし、今日はこれで十分だ。帰るぞ」


「山鹿をとれてよかったなぁ」


「ああ、これで村の人たちに肉を配給することができるぜ」


四人は帰路についた。


しばらく歩くと後ろから大きな足音が聞こえた。


ドドドドドドドドドッ


「なにか来るぞ。散開だ」


カイトが指示を飛ばした。


全員が散った。


木々の間から二本の角をもつ巨大な白い豚が姿を現した。


「おいおい、ジューシーボアじゃねーか」


ロイドが槍を構えた。


「極上の肉なんだけど、あの角はやっかいなんだな」


トムは弓を構えた。


ジューシーボアは、辺りをひと睨みしてやがてアキトの方を向いた。


そして————


アキトに向かって全力で突進してくる。


「アキトは逃げろ!」


カイトが叫ぶ。


だが、逃げる時間はもはやない。


アキトはサネユキを構えジューシーボアに対峙する。


アキトの体に流れる戦女神の血が全身を駆け巡る。


二本の角はアキトの心臓に明らかに狙いを定めている。


ジューシーボアの突進を紙一重でかわすとサネユキを素早く振り下す。


「せいっやー!」


アキトは声を発し、全身全霊をサネユキに注ぎ込む。


刃から発する蒼白いオーラが輝きを増し、鋭い弧を描く。


気合一閃!


ズバッ!


ジューシーボアの首を切り裂く。


鮮血が噴き出る。


ジューシーボアは悲鳴を上げ倒れた。


しばらくするとジューシーボアは動かなくなった。


「おい、アキトがやっちまったよ」


ロイドが口笛を吹いた。


「アッキー、すごいな。今年一番の大物だよ」


トムは驚いた。


「無事でなによりだ」


カイトは胸をなでおろした。


◆ ◆ ◆


四人は村へ戻ってきた。


木の棒に吊るして獲物を村に持ち帰った。


「ジューシーボアだ」


外にいた村人が叫んだ。


「ほんとだわ、ジューシーボアよ」


村人がぞろぞろと家から出てきた。


「このジューシーボアはアキトが仕留めたんだ」


カイトは大声で宣言した。


「あの少年が」


「噓でしょ」


「すげぇー」


村人から歓声が上がった。


村長のヤンバと肉屋のブッチが駆けつけてきた。


「カイトさん、よくやってくれた」


ヤンバは頭を下げた。そして、ヤンバはブッチに言った。


「ブッチさん、いつものように獲物の肉を分けて村民に配ってはくれないか?」


「わかりました。村長」


ブッチは獲物を受け取ると直ちに作業を開始した。


この日、村人たちは久しぶりに美味しい肉を味わうことができたのである。

もちろん、エリナもルナも大喜びしたのは言うまでもない。


ジューシーボアの肉を見たルナはアキトに抱きついた。


「兄に、大好き」


その様子をエリナは微笑みながら見ていた。



続く

評価やレビューなどがあれば励みになります。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ