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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
エルダ村での日々

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第12話 家族II

「姉ね」


ルナがエリナに駆け寄り布切れに書かれた絵を見せた。


「兄にと描いたの」


「これが、ルナで、姉ねで、兄になの」


ルナは満面の笑みを浮かべた。


「まあ、上手ね」


「この絵は、後で機織りの部屋に飾って置きましょう」


エリナは微笑んだ。


アキトはその様子をぼーと眺めていた。


「二人とも顔が真っ黒ですね。ルナ、兄にと一緒に洗ってきなさい」


「わかったの」


ルナはアキトを振り返ると手を掴んだ。


「兄に行くの」


「ぅ、うん」


ルナはアキトを引っ張って外に出た。


「どこに行くの?」


アキトが尋ねる。


「川」


ルナが無邪気に答える。


二人は少し歩くとやがて小さな清流が見えてきた。


ルナは手を洗い、顔を洗い、水を両手に貯めると飲んだ。


「兄にも洗うの。ここで洗ったり、水を飲んだりするの」


「わかったよ」


アキトも手と顔を洗い、そして水を飲んでみた。


水、それは身体が求めるもの。


おいしい————


水の有難さをアキトは改めて感じた。


アキトは蛇口を捻ると水が自由に使えていた在りし日々を思い出した。

帰れぬ故郷を思い涙を流した。


「兄に、泣いてる」


ルナが心配そうに見つめた。


「大丈夫だよ、ルナ」


アキトはまた顔を洗い、ルナと手を繋ぎ家に戻った。


◆ ◆ ◆


「帰ったのぉ」


「ただいま」


「おかえり。ふたりとも綺麗になりましたね」


エリナが微笑んだ。


「今日はソーセージを買ってきました」


エリナは連なるソーセージを見せた。


ルナの目が輝く。そして飛び跳ねた。


「ソーセージ、やったの!」


「そして、パンは白パンでーす」


エリナは真っ白なパン生地を竈に入れた。


「姉ね、大好き!」


ルナがエリナに抱きついた。


アキトはその様子をただ見ていた。


バチンッ


薪が燃えて、弾ける音が聞こえた。


エリナは野菜スープを温めながら隣のフライパンでソーセージを焼き始めた。


ジューーーーー、パチッパチッパチッ


ソーセージの焼ける音とともに香ばしい肉の匂いが漂ってきた。


「姉ね、早く食べたいの」


ルナはエリナのそばでうろうろしていた。


アキトはただ少し離れてエリナが調理する様子を見ていた。


そして————


テーブルの中央にソーセージの大皿、白パンのはいったバスケット、野菜スープの入ったお椀が3つ並べられた。


「さあ、アキト、ルナ、夕食です。こっちにきてください」


エリナが手招きをした。みんな着席した。エリナは二人を見渡したあと話した。


「今日は、アキトが私たちの家族になった記念すべき日です」


「だから今日はご馳走を用意しました。さぁ、食べましょう。私たちのこれからを祝して!」


「兄に、家族」


ルナは微笑み手を叩いた。


「アキトは、私の家族です」


エリナも同様に拍手した。


「僕が家族?」


アキトは戸惑いながら言った。また、目から涙がこぼれた。


エリナはハンカチをもってアキトの涙を拭いて背中を撫でた。


「まずは食べましょう、アキト」


優しい声で言った。


「うん。いただきます」


アキトは囁いた。


そして、フォークを取るとソーセージをさして口に運んだ。


素朴な味だが、美味しい。


いままで食べた中で一番おいしい。アキトはそう感じた。


「おいしいです…」


アキトは震える声で言った。


「久しぶりのソーセージおいちーの」


ルナはソーセージをパクパクたべている。


エリナは白パンをちぎってゆっくりと口へ運ぶ。


温かい。ただ、温かい。


僕のためにこの人たちは————


「ありがとう」


アキトは小さな声で呟いた。


涙を浮かべながらソーセージを食べ白パンを口に入れた。


エリナは二人の様子を優しい目で眺めていた。


◆ ◆ ◆


夕食が済んだ頃、もう外は真っ暗になっていた。


柱にかけてあるランタンの光がゆらゆらと部屋を照らした。


後片付けが終わったエリナがアキトのもとにやってきた。


そして、アキトに寝間着を手渡した。


「今日はこの寝間着で我慢してくださいね」


「明日、アキトの服を作ります」


「ありがとう」


アキトは言った。


「では、今日はもう寝ましょう」


「少し狭いけど、三人でも大丈夫でしょう」


エリナが言った。


「僕は床で寝るので大丈夫だよ」


アキトは躊躇する。


「ダメです。アキト、お姉ちゃんの言うことを聞いてください。また、お仕置きされたいのですか?」


エリナは頬を膨らませた。


「わかったよ」


そういうとアキトは布団をめくりベッドに入ると隅で横になった。


右にエリナ、左にアキト。二人に覆いかぶさるようにルナ。


三人の家族は一緒のベッドで川の字になり眠った。



アキトの一生忘れることができない一日がこうして終わった————



続く

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