3.黒太陽
2話では、光が黒竜人の存在と拓弥の秘密を知りました。
そして3話――。
洞窟の奥で、拓弥はもう一つの秘密を打ち明ける。
黒太陽の光の中で、拓弥の目が赤く染まる。
これが――黒竜人の力。
――翌朝/イディア世界・希龍家 玄関前
朝日が差し込む中、拓弥は扉の前で荷物の確認をしていた。
拓弥「そろそろ出発するか」
その声に、背後から光が声をかける。
光「拓弥さん。僕も……ついて行っていいですか?」
拓弥は少し驚いたように振り返る。
拓弥「え?いいのか?でも、グリフォンの世界とか行ったら……当分帰ってこれないかも」
その時、奥から魔佐が顔を出す。
魔佐「行ってきなよ。覇弥斗さんには僕から伝えておくよ。昨日、光くんからはお家の場所も聞いたし」
光「魔佐さん、お願いします」
光が深く頭を下げると、魔佐は優しくうなずいた。
拓弥「光……ありがとう」
拓弥はその言葉に、ほんの少しだけ柔らかな笑みを浮かべ、小さくお礼を言った。
そして二人は、並んで希龍家をあとにする。
――バルゴの洞窟・入口
空が黒太陽に染まり始めた頃、二人はようやく目的地にたどり着いた。
拓弥「……ここか。まあ、夜までにつけてよかった」
光「この洞窟のどこかに、グリフォンへのゲートが……」
拓弥「ああ。隈なく探そう」
二人は薄暗い洞窟の中へと足を踏み入れる。しばらく無言のまま歩いていたが、光がぽつりと口を開いた。
光「……前に、断片的に前世の記憶があるって言ってましたけど……ナイトメアの部下として、何をしてたんですか?」
その言葉に、拓弥の足が止まる。
拓弥「……あんまり言いたくはないけどな。俺がやってたのは、ナイトメアに逆らう村や町を――まとめて潰すことだった。村長や市長を狙って、そこに住む人たちごと……」
洞窟の空気が、さらに重たく感じられた。
光「そんな……そんなことをやらされてたんですね」
拓弥「“やらされてた”ってより、自分からやってたのかもな。少なくとも、当時の俺はそれを平気でやってた……。それが怖いんだよ。今の俺が、それを思い出しても――どこかで受け入れてしまいそうで」
光「……でも、本当に“平気”だったんでしょうか? もしかしたら、やむを得ない事情があったのかもしれませんよ」
その言葉に、拓弥はわずかに目を細める。
拓弥「……そうだと、いいな」
小さく息を吐いて、彼は再び歩き出す。
拓弥「ま、とにかく。ナイトメアとの因縁は、ここで終わらせるつもりだ」
その背中はどこか軽く、けれど確かな決意が感じられた。
――バルゴの洞窟・探索中
しばらく黙々と洞窟を歩き続けていると、今度は拓弥の方からぽつりと声を上げた。
拓弥「……光、ちょっと早めに言っておきたいことがある」
その声は少しだけ真剣だった。
拓弥「実は俺、希龍家の生まれじゃない。本名は“雨川 拓弥”。10歳の頃に家出して、このイディアの世界に来たんだ。……当てもなく彷徨って、倒れた俺を拾ってくれたのが魔佐兄で、それから希龍家で育ててもらった」
光「……」
拓弥「それと……俺は“黒竜人”なんだ。竜人とは長い因縁のある種族だ。もしかすると……お前も、そういうのを気にするかもしれないって、少し不安だった」
光は立ち止まり、ゆっくりと言葉を選ぶように口を開いた。
光「……僕はこっちの世界に来たばかりだし、“因縁”とか“血筋”とかは正直よくわかりません。でも――昨日、拓弥さんに出会えて、本当によかったって思ってます」
拓弥「……光」
光「たぶん、魔佐さんや翔さんも同じ気持ちだと思います。だって、拓弥さんは僕たちにとって――」
小さく間を置いてから、光は優しく微笑んだ。
光「……大切な“家族”ですから」
拓弥「……光、ありがとう」
拓弥は少し照れたように、けれどしっかりとお礼を言った。
そのとき――
拓弥「……洞窟の奥から、黒太陽の光が漏れてるな。外はもう夜か」
光「あ、あれ……もしかして、ゲートじゃないですか?」
拓弥「……ああ、あれだな。けど……待て、光。魔物がいる」
光「でも、道中で見た魔物と何か雰囲気が違います……」
拓弥「黒太陽を浴び続けて、変異したんだろうな。……よし、俺がやる」
拓弥が一歩前に出て、黒太陽の光を真正面から浴びる。
その瞬間――彼の目が赤く染まり始めた。
拓弥「……雷撃!」
轟音が洞窟中に鳴り響き、魔物は一撃で沈んだ。
光「た、拓弥さん……今の、何ですか……?」
拓弥「……黒竜人はな、黒太陽を浴びると力が増すんだ。」
倒れた魔物は、もうピクリとも動かない。
拓弥「よし……行くか。このゲートの先が、グリフォンの世界だ」
光「はい……行きましょう」
そして、二人はそのゲートをくぐり――新たな世界へと足を踏み入れた。




