2.黒竜人
1話では、光は異世界へ転移し、拓弥たちと出会いました。
そして2話――。
光は“竜人”としての力、
そしてこの世界に隠された“黒竜人”の存在を知ることになります。
静かな夜。
黒太陽の下で、
運命は少しずつ動き始めていました。
――希龍家/食堂・夜
長いテーブルの上には、豪快で香ばしい料理が並んでいた。肉の香り、野菜の煮込み、スパイスの効いたスープ。どれも人間界ではあまり見ない料理ばかりだ。
光は少し緊張しながら席に着く。
翔「遠慮するな、たんと食え。こっちは人数分より多めに作るのが流儀なんだ」
光「は、はいっ……いただきます」
口に運んだ瞬間、光の目が見開く。
光「おいしい……!」
柔らかな肉の旨味が口いっぱいに広がる。どこか懐かしさもある味だった。
拓弥「翔さんの料理は本気出すと、すごいからな」
翔「本気“出した”んじゃねえ、普通に作っただけだ。……まあ、光がいるってことで少しは張り切ったけどな」
魔佐「光くん、体は大丈夫? こっちに来て疲れてると思うけど」
光「はい……ありがとうございます。まだ、夢みたいで……でも、平気です。」
魔佐「そうか。それならよかった」
にこやかに微笑む魔佐。その穏やかな表情に、光は少しだけ緊張を解いた。
翔「明日はこっちの世界のこと教えてやるよ。まずは“竜人”としての力についてだな」
拓弥「俺も協力する。お前が炎を出せたってことは、もう才能は動き出してるからな」
光「……はい。僕、知らなかったけど……こっちに来て、少しだけ自分のことを知れた気がします」
テーブルの上、グラスが重なる音が響く。
翔「じゃ改めて、ようこそ――わが家へ光」
照れくさそうに、けれど真っ直ぐに光も言葉を返す。
光「……ただいま、って言っても、いいですか?」
魔佐「ああ、もちろん。おかえり、光くん」
――希龍家/夜・ダイニングの片隅
ディナーを終えて、みんなが少し落ち着いた頃。
食後のお茶を飲みながら、翔がふと口を開いた。
翔「そうだ、拓弥。さっきの小悪魔たちの件だが――」
拓弥「……何かわかったのか?」
翔「ああ。どうやら“グリフォンの世界”って場所から来てるらしい」
拓弥「グリフォンの世界……やっぱり、ゲートを通じて別の世界から来てたのか」
翔「風魔が教えてくれた。あいつ、最近いろんな世界を回ってるからな。どうやらかなり悪政が続いてて、治安も最悪らしい」
光「え……人間界や竜人界以外にも世界があるんですか?」
翔「あるな。俺たちが確認できてるだけでもいくつかあるが、理論上は“無数”に存在してると言われてる。上層に重なってたり、横に並んでたり、層のようになってな」
拓弥「グリフォンの世界に繋がるゲートは、どこにあるんだ?」
翔「バルゴの洞窟の奥らしい。風魔が調べてきた」
拓弥「……明日、行ってみるか」
少し空気が張り詰めた。光が、遠慮がちに声を上げる。
光「そもそも、なぜ拓弥さんは狙われてるんですか?」
拓弥「……ナイトメアをこっちの世界で見かけてな。そしたら……記憶が少し、蘇ったんだ」
光「記憶?」
拓弥「ああ。突拍子もないこと言うけど……“前世”の記憶だ」
光「……!」
拓弥「勿論、全部じゃない。ただ断片的に……俺は、前世ではナイトメアの配下として、あいつに従ってた。で、今また……アイツは俺を“取り戻そう”としてる」
光は言葉を失いながらも、じっと拓弥を見つめていた。
魔佐「……やっぱり、僕も明日一緒に行こうか?」
その言葉に、拓弥はふと目を伏せる。
拓弥「……いや、魔佐兄〜たちは手を貸さないでくれ。これは俺の問題だ」
静かに、けれど固く決意を込めて言った。
その横顔に、光は何も言えず、ただ胸の奥が少しだけ痛くなった。
その夜
光「なかなか眠れないよ今日は色んな情報が入りますぎた……」
光は寝付けず一人廊下を歩いていた。窓の外を見た
光「黒い太陽?」
魔佐「光くん、眠れないのかい?」
光「いやまあ、アレって?」
光は窓越しに黒い太陽を指差した
魔佐「ああ、黒太陽だね神秘的だよねイディアの世界で夜は日中の太陽は沈み黒太陽が出てくるんだ。窓越しなら大丈夫だけど僕ら竜人は黒太陽の下では長時間活動ができないのだよ。あの黒太陽が平気なのは黒竜人」
光「ブラックりゅうじん?」
光は新しい単語に疑問に尋ねる
魔佐「黒竜人は今から1000年前ほどに竜人と争った種族だよ。その時の黒竜人のリーダーが雨川家……」
光「雨川家?」
魔佐「拓弥はね。本名は『雨川 拓弥』って言うだよ」
光は驚き、沈黙した。
魔佐「あの子自身は雨川家を嫌って幼い頃に家を出てこの家で育った。だからあの子と僕らの間に因縁はないよ」
光「拓弥さんは事こと?」
魔佐「知ってる見たいだね。でも拓弥は僕たちが知らないと思ってるし今もそれを隠してる」
光「……何で隠してるんですか?言わないですか?」
魔佐「それはあの子自身の気持ち次第だろうね。ただ、雨川家は黒竜人の長として竜人と敵対していた家系だ。もしあの子がそれを明かせば、周りの竜人たちがどう思うか……きっとあの子はそれを気にしているんだと思うよ。」
光は再び黒太陽を見上げた。その光はどこか冷たく、不気味なほどに静かだった。
魔佐「それと、黒竜人はこの黒太陽の下でこそ真の力を発揮する。僕たち竜人にとっては長時間の活動ができない夜でも、彼らはむしろ力を増すんだ。」
光「じゃあ、拓弥さんも……?」
魔佐「彼が黒竜人としての力を持っているかはわからない。けど、彼が抱えているものは僕たちの想像以上に重いはずだよ。」
光は静かに拳を握りしめた。
——拓弥さんは、ずっとそんなものを背負って生きてきたのか。
魔佐「……明日は拓弥について行って手伝ってくれないかい?僕たちが手伝うのは嫌がるが、光くんなら」
光「はい。分かりました。」
光はもう一度だけ黒太陽を見つめて、魔佐と共に廊下を歩き出した。




