9/20
9 合格
声優事務所【ドッグ・ワン】。
「観里、おめでとう」
社長室を訪れた観里に里夜が笑顔で言った。「オーディション、合格したわよ」
「本当に?」
「ええ。『スーパー・メタル・フレンズ』の主人公鉄壁マリモ役よ」
「うそっ?ありえないよ。だって、桑本さんで本決まりって噂を聞いてたけど」
「おめでとうございますぅ、先輩」
一緒に社長室に呼ばれた零名も自分のことのように喜んだ。
「ありがとう」
観里はまだ戸惑っていた。
「社長、零名はどうなったんですか?」
「零名は須藤フブキ役よ」
「やっほーい。てっきり、先輩の代わりに落ちたかと思って、ドキドキしてました」
「人聞きの悪いこと言わないでよ」
観里は零名の頭を小突いた。
「やめてくださいよぉ、バカになるじゃないですかぁ」
零名は頭を自分でさすった。
「内倉さん……ううん、社長、ありがとう」
観里は涙ぐんだ。
「あなたが実力で勝ち取ったのよ。自信持ちなさい」
「はい」
観里は元気よく返事をした。
観里のこんな明るい顔を見るのは、里夜自身、久しぶりであった。
「でも、オーディション合格はまだスタート地点だからね。頑張って」
「わかってる」
観里自身も久しぶりにやる気がでてくるのを感じていた。




