14 襲撃
「遅いなぁ……」
観里は夜の公園で、一人ブランコに座り、携帯電話をいじって、待っていた。
携帯電話の画面には簑島東子からのメールが表示されていた。
『至急、大事な話があるので、今夜九時、谷池公園のブランコで待っていて』というものであった。
東子とは【パドミック】に所属していた頃の声優仲間であった。
昔は仲が良かったが、【パドミック】を辞める頃は、考え方の違いから対立し、辞めてからは、一切、連絡を取っていなかったので、メールでの連絡は久しぶりであった。
「電話してみようかな」
観里は携帯電話の画面にアドレス帳を表示させた。
そこから、簑島東子を選んで、携帯電話の発信ボタンを押す。
しかし、いくら待っても繋がらない。メールの方は既に五通ほど送っているが、音沙汰無しであった。
「からかわれたのかなぁ」
観里がそう呟いた時だった。
観里の座っているブランコが微かに揺れた。誰かがブランコの鎖をつかんだのだ。
な、なに?!
観里は戸惑った。
観里はその瞬間、背後にいる人の気配を感じとった。
背後の影と観里との距離は十センチにも満たない。すぐ真後ろにいるのである。
どうして気づかなかったの。
観里の乗るブランコは鎖を背後の何者かに捕まれ、完全に動かなかった。その動かないと言うことが、観里に大きな不安を与えた。
どうする?振り返るか、それともブランコを離れるか。
観里は二者択一の判断を迫られた。
背後の影はじっと押し黙っている。
観里のまわりには助けを呼べるような人はいない。
その時だった。観里の背後から大きな黒い手が観里の口に覆い被さった。
「ん!!」
観里が呼吸をしようとした途端、つーんと鼻をさす臭いがした。
クロロホルム!
観里は直感的にそう悟った。
観里は賊の手を振りほどこうともがいたが、賊の手にある白い布は完全に観里の口と鼻を覆い、観里の意識を急速に奪っていった。




