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12 怒り
同じ頃、大手芸能事務所【クリア・クラウン】の社長室では、一人の女性の怒声が飛んでいた。
「どういうこと、主役は決まりだって言ったじゃない」
事務所所属の声優・桑本ほとりは椅子に座る社長の井野崎の前で机を強く叩いた。
「今回は手違いがあってな。次はちゃんと主役を回すから、機嫌を直してくれ」
井野崎がなだめるように言った。
「いいのよ、私は別に。事務所、移籍するから。そうなったら、パパからの融資もなくなるから、この事務所も終わりね」
「待ってくれ。この埋め合わせは必ずする。だから……」
普段は偉そうに振る舞っている井野崎もほとりの前では低姿勢であった。
「いや。『スーパー・メタル・フレンズ』の主役が出来ないなら、やめる。まだ、プレスリリースの前なんだから、どうとでも出来るでしょ。頑張りなさいよ」
「……わかった」
「じゃあ、いい報告待ってるから」
ほとりはそう言うと、つかつかと社長室を出ていった。
「畜生、バカ娘めが……」
井野崎は拳を固め、歯ぎしりをした。




