女王さまとお諏訪さまの宿題
【前書き】
ちょっと、あんたたち!
あたし、黒木舞桜の気高い知性がビルドする、全盛期のログにアクセスする準備はできているのッ!?
今回のエピソードは、あの非論理的に冷たい滝行という名の物理的バグ排除から一転して。
二〇二〇年という実行環境を根底から書き換える、新たなインフラ構築へのプレリュードよ。
昭和の熱狂? テレビの魔法?
そんなレガシーな代物を、あたしたちの最高な演算コアがどうやって現代に再起動するのか。
あたしたちの略奪的なまでの熱量を、一ピクセルも逃さず網膜に焼き付けなさいッ!
当然の帰結よねッ!
2020年2月下旬。横須賀にある、とある神社の境内。
あたし、黒木舞桜は、非論理的に多い落ち葉を竹箒で掃きながら、精神の境界線という名の、最も不純なノイズに晒されていたわ。
「あ、舞桜さん。箒止まってるわよ。また妄想特急?」
防大組の倉田琴葉ちゃんが、あたしの煩悩という名の、最も非論理的なシステムエラーを、凛とした眼光でスキャンしたわ。
あたしは、熱っぽく沸騰した顔面を箒の柄に押し付けながら、潤んだ瞳で宣った。
「お黙りなさいッ、琴葉ちゃんッ! 今あたしの脳内メインフレームじゃ、あたしの『完璧な生体データ』を、勇希という名の特定の検体に、あたかも事故であるかのように披露する、全盛期のロマンティック・レシピがレンダリングされているんだからッ!」
あたしの気高いプライドは、自分の完璧な曲線を、最も論理的なタイミングで勇希に見せつけるという、最も非論理的で濃厚な帰結を求めていたのよッ!
「だめだこりゃ。舞桜さんの妄想のベクターデータは、もうデバッグ不能ね」
琴葉ちゃんは、ため息という名の、最も無駄な排気熱を吐き出した。
「一度、頭を冷やしたほうがいいわ。あたしの、凛とした、けれど惚れっぽい知性が、あんたの、このメンドクセー事情を、デバッグするための最適解を導き出したの」
あたしは小首を傾げる。
「え、なに? あたしに、新しいプログラミング言語でも学ばせて、脳内リソースを全振りさせろっていうのッ!?」
「いいえ。もっと物理的な制裁よ。……いえ、修行ね」
琴葉ちゃんは、獲物を狙う猛禽類のような瞳で、神社近くの茂みを射抜いたわ。
「あそこの滝、有名でしょ。滝行よ。冷水という名の、最も冷徹な物理法則で、あんたの、この非論理的な妄想特急を、脱線させてあげるわッ!」
★ ◆ ★ ◆ ★
数時間後。あたしたちは、滝行のルールが書かれた看板がある、木製の脱衣所に立っていたわ。
琴葉ちゃんが、タブレット端末に自分の『完璧な生体データ』をレンダリングしながら、冷水に対する精神統一の科学的効果を、軍事的な精度で宣っている。
「……だから、冷水に触れた瞬間、脳内の煩悩という名のノイズは、一瞬にしてシャットダウンされる。……これは、国防にも通ずる重要なレシピだ」
「琴葉ちゃん。……あんた、国防という名の、最も巨大なシステム負荷を、なんであたしのオッパイ救済計画とマージしちゃっているのよッ!」
あたしは不機嫌さを極限までバーニングさせ、プラズマ級に加熱した顔面で言い返したわ。
「てか、なによりこれッ! なんであたしは、この恥ずかしいワンピースの水着の上に、こんな白いガウンを着なきゃいけないのよッ! 巫女装束のままでいいじゃないのぉーッ!」
あたしは、腰に行衣の紐を締めながら、自分の恥ずかしいバイタルデータをスキャンした。
「巫女装束は神聖なレシピだから、水に濡らすのは、非論理的なバグになるわ。……これは伝統的な手順よ。……水着は万が一のため」
琴葉ちゃんは、冷たい諦念が混じった瞳で、あたしの抵抗を全肯定という名のシステム保守で受け入れたわ。
「万が一ってなによぉーッ! あたしが冷水という名の暴力に蹂躙されて、この聖域を売り払う未来しか見えるじゃないのぉーッ!」
あたしの絶叫は、脱衣所の隔壁を突き抜けて、滝のという名の、最も暴力的なノイズに飲み込まれていったのよッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
そして、あたしたちは、滝の下へ。
あたし、黒木舞桜は、目の前の絶望的な質量を持つ水柱を前に、足の指先から震えが止まらなかったわ。
琴葉ちゃんが、すでに冷水に身を委ね、手を合わせて精神統一を始めている。
「南無、帰命頂礼――」
あたしも、怯えながらも、滝の下へと足を踏み入れた。
その瞬間、致命的な冷気が、あたしの曲線美を蹂躙したわッ!
「ひぎっ……アガガガッ!? て、てかッ! 冷たッ! 冷たすぎるわよぉッ!」
あたしは不機嫌さを極限までバーニングさせ、沸騰した顔面を冷水で冷却しながら絶叫したわッ!
あたしの論理回路は、この原始的なまでの暴力的なパッチ当てによって、致命的なオーバーフローを起こした。
羞恥心と、非論理的なまでの寒さが、脳内リソースのすべてを「破壊」という名の単一コマンドに書き換えていく。
「舞桜さん。集中して。……煩悩を、デリートするの」
琴葉ちゃんは、冷水の中でも眉一つ動かさず、むしろ獲物を狙う猛禽類のような瞳で、精神の境界線を射抜いているわ。
「お黙りなさいッ! 集中なんて、100万光年早いのよッ! いい、琴葉ちゃんッ! これ、これ、致命的なシステムエラーよッ!」
あたしは潤んだ瞳を激しく明滅させ、濡れて張り付いた行衣を指さして訴えたわッ!
「これ、スケスケじゃないのよぉーッ! あたしの処女的な観測領域が、この行衣という名の安価なレシピによって、全方位からデジタルにアーカイブされるディストピアじゃないのーッ! あと、単純に致命的に寒いッ!」
あたしの絶叫は、滝の水しぶきとマージされ、最も非論理的で濃厚な帰結へと、帰結しようとしていたのさ……。
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜は、非論理的な寒気が支配する滝の下で、物理的な限界をデバッグしていたわ。
不意に、世界という名の実行環境がフリーズした。
あたしの網膜に焼き付いたのは、倉田琴葉ちゃんが彫像のように静止した、最も高解像度な静止画。
「またあんたなの? 分類的にお諏訪さま」
あたしは不機嫌さを極限までバーニングさせ、凍りついた水飛沫の中で、不可視の神性へとパケットを投げたわ。
【アホなの?】
神さまという名の管理者が、ログも残さず失礼なメッセージをデプロイしてくる。
当然の帰結よねッ!
「アホってなに。あたし、来月には20歳になるレディよ? 少女じゃなくてレディとしての知性を、1秒につき120フレームの速度で回しているんだからッ!」
あたしは潤んだ瞳を鋭く光らせ、止まった時間の隙間で、この非論理的な状況をスキャンしたわ。
【滝行をエロティックって言っている時点でアホっぽいよ、舞桜】
「スケスケの濡れティー状態を心配するのは、乙女としての正当なセキュリティ意識よッ! 茂みで不純な観測を続けている、勇希たちの方をデリートしなさいなッ!」
あたしはプラズマ級に加熱した顔面を、神さまという名のバグへと向けた。
この神さま、以前あたしたちに港湾の清掃という名の、過酷なフィールドテストを依頼してきたわ。
結果としてあたしたちは、ヘドロから抽出した貴金属という名の、莫大なキャッシュを手に入れたけれど。
「それで、なんの用なのよ。分類的にお諏訪さま。ここは大海神さまの聖域よ?」
【お礼じゃなくて、次のお願いだよ、舞桜。テレビの魔法を掛け直して欲しいんだ】
テレビの魔法。
あたしの論理回路は、その非論理的な単語を受信した瞬間、一時的なエラーを吐き出したわ。
「魔法? そんなオカルトなパッチ当て、あたしの専門外よ。テレビなんて、今やノイズに埋もれた古いハードウェアじゃないの」
【掛け直して欲しいんだよ。レディ・舞桜】
神さまがそう宣った瞬間、止まっていた時間が物理的な慣性を持って動き出した。
「……舞桜さん? なにを、空中に向かって吠えているの?」
倉田琴葉ちゃんが、あたしの肩にタオルという名の物理的な防御壁をデプロイしながら、怪訝そうな、けれど凛とした瞳で問いかけてきた。
「琴葉ちゃん……。魔法って、なんだと思う?」
あたしは潤んだ瞳を揺らし、濡れて張り付いた行衣の不快指数を、脳内で高速デバッグしながら尋ねたわ。
「舞桜さん。滝行くらいで、超能力という名の、非論理的なスキルが身につくとは思えないわよ?」
倉田琴葉ちゃんは、呆れたように苦笑し、軍事的な精度であたしのバイタルをチェックし始めた。
「当然の帰結よねッ! あたしの気高い知性は、いつだって全盛期の動作保証範囲内なんだからッ!」
あたしは不機嫌さをバーニングさせながら、茂みの奥で、あたしたちのバイタルデータを略奪しようなんて、100万光年早い勇希たちをスキャンしたわ。
「いい、勇希! ボッチ! あんたたちのその、不純な動機を隠れ蓑にした観測レシピは、あたしの知性がとっくにデバッグ済みよッ!」
あたしはプラズマ級に加熱した顔面で絶叫したわ。
テレビの魔法。
全人類の意識を一方向へマージさせていた、あのかつての巨大なメディア・アルゴリズム。
あたしの知性が導き出した「テレビの再起動」という名の、最も非論理的で熱いプロジェクト。
2月の冷たい風。
あたしの気高いプライドは、神さまからのシステム負荷を、世界を書き換えるための燃料へと変換し。
次なるセイタンシステムズの世界改変へと、帰結しようとしていたのよッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
あたしたちは、神社から頂上にある温泉帝国へと移動したわ。
正直、あたし、黒木舞桜に、
乙女が喜ぶデートプランを期待されても困るわ。
あたしの周りにいるのは、
極道プリンス白井勇希に、デリカシーゼロ下僕の斧乃木拓矢。
拓矢の彼女であるアホの子代表、サブリナこと福元莉那。
つまり雑なパッチを当てたようなヤツしかいないんだからッ!
だから、この温泉帝国には、
和洋折衷なもんでござれのレストランが用意されているの。
そして、ゲームコーナー、ビリヤード、ボウリングまで完備した、全盛期のアミューズメント施設を併設してやったわ。
山の上だから、夜景という名の光子パケットも、バッチリ網膜に焼き付けられるわねッ!
「さあ、琴葉ちゃん。才色兼備な一学年上のおねえさんとして、乙女が喜ぶ至高のデートプランを教えてちょうだい?」
あたしは、倉田琴葉ちゃんに、女子力という名の未知のレシピを求めたわ。
「そうね。まずはフレンチのコースを、クラシックが流れる静寂な実行環境でいただく。
その後は、展望デッキで星空をサンプリングしながら、
互いの将来という名のソースコードを語り合う……。
それが一般的な、デートという名の最適解かしら」
琴葉ちゃんは、凛とした瞳を伏せて、
カタログスペック通りのプランを提示したわ。
「だがッ! あたしの本能が導き出す真の答えは、別にあるわッ!」
琴葉ちゃんは突然、プラズマ級の熱量を帯びて絶叫したわッ!
「まずはボウリング場で、本気の3ゲームマッチよッ!
ストライクを取るたびに、ハイタッチという名の物理的な同期を強制する。
その後は、レストランで一番ギトギトした特盛カツカレーを、全盛期の速度で胃壁にデプロイするのよッ!
最後はゲームセンターのパンチングマシーンで、互いの戦闘力を数値化して競い合う。
これこそが、あたしの血をバーニングさせる、略奪的なガサツ・デートプランよッ!」
「な……、なになにを軍事演習の打ち上げのような、暴挙を提案しているのよ、琴葉ちゃんーッ!」
あたしの論理回路は、琴葉ちゃんのガサツなプランによって、致命的なエラーを吐き出したわ。
「……舞桜。カツカレーのカロリーは、僕が医学的な執着を持って、舞桜の細胞の隅々までモニタリングしてあげる。
ボウリングの衝撃で、舞桜の手首が赤くなる推移を、心のMRIに焼き付ける準備はできているよ……」
勇希が、ヤンデレ王子特有の「不純なバイタル・チェック」を宣言したわ。
「ははッ、特盛カツカレーのトッピング全部乗せも、ボウリングのレーン貸し切り代も、俺がCEO権限で福利厚生として落としてやる。
……ただし、俺のスコアを1ピクセルでも超えられたらな」
ボッチのヤローが、不敵な笑みをデプロイして宣ったわ。
「お黙りなさいッ! このヤンデレ王子と成金魔王ーッ!
あんたたちのその、不純な動機を『全肯定』という名のパッチで、塗りつぶそうとする魂胆は、あたしの知性がとっくにデバッグ済みよッ!」
あたし、黒木舞桜の気高いプライドは、おねえさん風を吹かせていた琴葉ちゃんが、いつの間にか道場破りのような顔になっているのを、呆れた瞳でスキャンし続けることにしたのよッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
あたし、黒木舞桜は、3杯目という名の略奪的なまでの熱量を誇るカツカレー丼を、全盛期の速度で胃壁へとパージし終えたわ。
当然の帰結よねッ!
テーブルの上には、あたしたちがデプロイした「雑なメニュー」という名の、最も非論理的な残骸がスタックされている。
勇希の前には、脂身を極限までバーニングさせた特盛ステーキの鉄板が冷え切り。
琴葉ちゃんは、軍事的な精度で完食した特大ラーメンのどんぶりを、満足げにスキャンしているわ。
茅野万桜……ボッチのヤローは、ソースまみれになった皿を前に、呆れたように吐息をデプロイしていたわ。
「分類的なお諏訪さまから、新しい宿題を出されたわ」
あたしは食後のコーヒーという名の、脳内リソースを再起動するための冷却剤を嗜みながら切り出したわ。
「なにその雑メシ。神さまからの割り込み命令受け取る巫女さまにしては、食事が低次元すぎない?」
ボッチのヤローが、カツカレー丼という名の、あたしの完璧なメニュー構成にケチをつけてきやがった。
「うるさいわね。カレーライスじゃ、米という名のリソースが不足して、あたしの全盛期の食欲をカバーしきれないのよッ!」
あたしは不機嫌さをプラズマ級に加熱させ、ボッチの脆弱な反論をデバッグした。
「いい、あたしたちが向き合うべきは、もっと高次なバグなのよ」
「テレビの魔法を掛け直して欲しいんですって」
あたしが神さまからの提示をパケットとして送信すると、勇希が、医学的な懐古モードへと移行した。
「テレビか……。父さんたちの世代だと、背番号3番の試合を、街頭にあるテレビという名の共用端末で、見も知らぬ他人同士が同期して、熱狂をサンプリングしていたらしいね」
勇希は、コーヒーカップを繊細な指先で弄びながら、眼鏡の奥で遠い過去のログをレンダリングしている。
「まだ町に、電気屋さんという名の物理的な保守拠点が、たくさんあった時代の話だよ」
勇希は、記憶という名の不確かなデータベースを、慈しむようにスキャンし続けていたわ。
「みんなが同じ光子パケットを見つめて、一喜一憂する。……それは、現代の分散型ネットワークには存在しない、最も強力で非論理的な連帯感という名の魔法だったのかもしれないね」
「ふうん。なるほどね。解像度が致命的に悪いからこそ、脳内の演算ユニットで、不足した情報を補完していたんじゃないか?」
ボッチのヤローが、不敵な笑みをデプロイして宣ったわ。
「当時の野球中継や試合観戦って、兄貴から聞いた話だが、今よりずっと身近なイベントだったそうだ。誰もが一度は、球場という名のメインサーバに足を運んでいる」
ボッチは、積み上がった汚れた皿をジト目で睨みながら、論理的な推論を加速させたわ。
「つまり、あのブラウン管という名の低スペックな出力デバイスは、ただのモニターじゃない。人間の想像力を最大化させるための、『脳内補完デバイス』だった可能性があるな」
当然の帰結よねッ!
あたしの気高い知性は、その「失われた魔法」の正体が、低解像度という名の余白を、人間の情熱で埋めるという、最も略奪的なユーザー体験であったことを一瞬で解析したわ。
「いい、みんなッ! 神さまの宿題は、単なる映像技術のアップデートじゃないわ。あたしたちの全盛期の技術で、全人類の意識を再びマージさせる、最強の『テレビの魔法』をビルドするのよッ!」
あたし、黒木舞桜の気高いプライドは、温泉帝国の夜景を背景に、次なる非論理的な世界改変へと帰結しようとしていたのよッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
【そうじゃないんだ。そっちはもうやってる】
空間が停止して、またあの声。
あたし、黒木舞桜の網膜に映る景色は、カツカレーの湯気さえもが物理的に固定された、最も静的な解像度の世界。
「お、おい、これ?」
茅野万桜……ボッチのヤローも動けるみたいね。
あたしの知性と、ボッチという名の成金魔王のリソース。
この二人の演算コアだけが、神さまという名の管理権限者に、強制的に割り込まれたというわけね。
【オリンピックに、4K、この国のトップは魔法の効能を知っている】
「魔法? だから、あたし来月二〇歳になるレディだって言ってるじゃないの。やらないわよ魔法少女なんかッ!」
あたしは不機嫌さをプラズマ級に加熱させ、不感地帯にいる神さまへと絶叫したわ。
「オリンピックという名の巨大な演算処理。そして4Kという名の高精細なパッチ……。政府という名のシステム管理者の狙いは明白だ」
ボッチのヤローが、冷徹な推論をデプロイし始めたわ。
「高度な専門性を持たない職種。つまり、土木やサービス、小売りといった現場に、広くリソースを分配するのが政府の目的だ。熱狂と成長。二〇二〇年の政府は、昭和の高度経済成長という名の成功ログを、現代という名の実行環境に無理やり焼き直そうとしているんだ」
ボッチは、止まった時間の中で、自分の眉間を掻いたわ。
「昭和のテレビには魔法があった。だが、ハイビジョンテレビという名のレガシーなデバイスは、魔法には弱かったんだ」
あたしは、ボッチの論理的な推論を脳内で高速デバッグしたわ。
「ハイビジョンは、解像度という名の情報量が中途半端だった。脳内補完という名の魔法を起動させるには詳しすぎたし、現実という名のテクスチャを上書きするには、あまりにも解像度が不足していたのよ」
あたしは、プラズマ級に加熱した顔面を、神さまという名のノイズへと向けたわ。
★ ◆ ★ ◆ ★
【百聞は一見。体験しておいで】
分類的なお諏訪さまがそう宣うと、空間という名の実行環境が強制的に切り替わったわ。
あたし、黒木舞桜と、ボッチのヤローが立っていたのは、見知らぬ球場のスタンドだったの。
背番号3番が打席に立つや否や、球場という名の巨大な演算回路が、爆発的なパルスを発したわッ!
群衆の歓声という名の物理的なノイズが、あたしたちのバイタルを強制的に揺さぶる。
一打席、一スイングに対する全人類の熱量が、一方向へとマージされていく、恐ろしいほどの同期処理。
「おい、女王さま! なんだこの、非論理的なまでの熱狂のオーバーフローはッ!?」
ボッチが、資本主義の魔王という名の余裕をパージして、興奮のあまり絶叫しているわ。
あたしの気高いプライドも、この昭和という名のレガシーな実行環境が叩き出す、凄まじいトラフィックに飲み込まれそうになっていたのよ。
だけど、次の瞬間。
熱狂に呑まれたあたしたちが立っていたのは、球場じゃなかった。
電気屋さん。あたしたちが見たことのない、昭和の電気屋さんの店先に据え置かれた、小さな白黒テレビの映像だったのよ。
「嘘でしょ……。たったこれだけの低解像度な出力デバイスで、さっきの熱量が再現されているっていうのッ!?」
あたしは、潤んだ瞳を激しく明滅させたわ。
白黒の、粗いノイズまみれの画面。
なのに、さっきの球場での匂い、風、人々の息遣いが、脳内のメインフレームで完全に4K以上の解像度として再生されている。
群がる大人たち、少年少女たちの瞳には、同じ光子パケットを共有し、歓喜という名の同期信号を交わし合う「魔法」がデプロイされていたわ。
「……これが、脳内補完デバイスの正体か。圧倒的なデータ不足を、人間の情熱という名のリソースで埋めているんだ」
ボッチが、隣で息を呑むような音量のログを吐き出したわ。
そして、空間が再び流れ出す。
温泉帝国。カツカレーの湯気が揺れる、2020年の夜景へとリダイレクトされたわ。
フリーズが解除された瞬間、ボッチとあたしは、異口同音に同じ言葉を紡いだの。
「「夢の箱」」
あたしたちの知性は、完全に同じソースコードをビルドしていたのよ。
「いい、ボッチッ! テレビの魔法を現代に掛け直すなら、中途半端なスマートデバイスじゃだめよッ!」
あたしは、プラズマ級に加熱した顔面で、テーブルを物理的に叩いたわ。
「記憶機能なんていう、レアアースを浪費する高コストなストレージは全消しするわッ! ただ受信したパケットを、画面の解像度として展開することだけに特化した、究極のエッジデバイスをビルドするのよッ!」
「ああ、その通りだ女王さま。おまえの言う通り、複雑なOSも、悪辣なサブスクも存在しない。ただ電源を入れて繋ぐだけの、純白の白物家電だ」
ボッチも、不敵な笑みを全盛期の角度でデプロイして言い放つ。
「枯れた3G回線という名の細いパイプでも構わねえ。そこに魔改造スキャンコードという名の超高密度データを流し込み、専用チップで物理的に展開する。これなら世界中の通信インフラ格差を、完全にフォーマットできるぜ」
「当然の帰結よねッ! 冷蔵庫や洗濯機と同じように、一家に一台、黙ってそこにある『ホワイトボックス』。それが、巨大プラットフォーマーどもが築いた搾取の帝国を根底からぶち壊すわッ!」
あたしの気高いプライドは、勇希や琴葉ちゃんが呆れたようにスキャンしているのも構わず、全人類の孤独と格差をデリートする「白い箱」の設計図を、夜空という名のキャンバスに描き出し始めていたのよッ!
「ま、待ちなさいボッチ! 魔改造された高密度QRコードを電気信号として細いパイプに通したら」
ボッチのヤローは、テーブルの上で致命的なバグに気づいたように顔面を歪めたわ。
「……データが非論理的に肥大化するッ!」
ボッチは、資本主義の余裕をパージして、慌てたパルスを吐き出した。
「二次元の空間マトリクスを、一次元の直列な電気信号に直列化すれば。
空間座標を定義するためのメタデータが、爆発的に増殖してしまう。
3G回線という名の細いパイプじゃ、即座にトラフィックがパンクして、受信側のキャッシュが死滅するぜッ!」
「た、確かに……アナログが鍵、ファクシミリ通信、復号特化LSI。それでもまだ足りない」
あたしは、プラズマ級に加熱した脳内メインフレームをフル回転させ、知恵の深淵を探ったわ。
あるはずよ。
高価な通信インフラに頼らない、全人類を繋ぐ最強のインフラが。
それが成立すれば、先進国が独占していた「専門性のある職」という名のプレミアムは激減するわ。
クラウド上の人工知能から、最高峰の技術と教育が、ホワイトボックスを通して等しく世界中へデプロイされるからよ。
一つの専門的な演算結果が、無数の端末へと同時にコピーされる。
誰もが生まれた場所で、最高レベルの医療や教育という名のパッチと同期できる。
そうすれば、一部の国や都市に人間が集中する「工業による格差社会」という名の、旧時代的な搾取のメインループは完全に崩壊する。
出稼ぎや移民という名の、物理的な移動をする理由が、根底から全消しされるんだからッ!
でも、どうやって?
データ肥大化という名の致命的なエラーを回避し、貧困層にまでそのパケットを届けるには。
あたしの気高い知性は、昭和の白黒テレビが映し出した「魔法」の本当の正体を求め。
深く、どこまでも深い、論理の海の底へと潜行し始めていた……。
【後書き】
……はぁ、まったく。
温泉帝国での琴葉ちゃんのガサツなデートプランをデバッグしていたと思ったら。
神さまからのいきなりの割り込み命令なんだから、あたしの脳内リソースもパンク寸前よ。
あたしたちの「ホワイトボックス構想」は、世界の格差という名のバグを全消しする最強のパッチよ。
でも、直列化によるデータ肥大化なんていう、物理的な壁にぶち当たってしまったわね。
高価なインフラに頼らず、細いパイプで膨大なパケットを送る魔法……。
安心しなさいッ!
あたしの気高い知性が、この深淵から必ず最適解をサルベージして、世界をアップデートしてやるんだからッ!
次回も、プラズマ級に加熱した全盛期の熱量でログを吐き出してあげるから、首を長くして待っていなさいなッ!




