女王さまとアメリカン
【前書き】
あんたたち、受信する準備はいいかしら?
あたし、黒木舞桜の全盛期の知性が、バグだらけの世界を書き換えるわ。
最高に略奪的なログを、特別に開示してあげるわッ!
舞台は横浜のプリンスなホテル。
各国の最高権力者という名の上位権限者たちが集まっているの。
彼らは、最高に非論理的な社交プロトコルを無数に実行しているわ。
でもね、そんなレガシーな連中の思惑なんて関係ない。
あたしのアジのなめろうを咀嚼するペースは、1ミリも遅らせたりしないのよ。
そこでデプロイされる、ヤンデレ王子こと勇希の狂気的な交渉術。
そして、あたしたちがビルドした黄金パッチの威力。
世界の海を洗うという壮大なスケールの裏に隠された、最高に台無しな真実。
あんたたちの網膜に、全盛期の解像度で焼き付けなさいッ!
当然の帰結よねッ!
2020年1月30日13時。
横浜のプリンスなホテルで、あたしはご飯をアジのなめろうで食べていた。
会場には、全盛期の解像度を誇る巨大なシャンデリアが、無数の光のパケットを物理レイヤーへと降り注いでいる。
格式高いレッドカーペットがデプロイされたフロアでは、各国の要人という名の上位権限者たちが、最高に非論理的な社交プロトコルを無数に実行していたわ。
あたし、黒木舞桜は、175センチの全盛期の脚線美を、気高いプライドという名のシールドで守りながら、このバグまみれの祝宴を冷徹に俯瞰していたの。
「Are you the queen everyone's talking about? You're quite cute, aren't you?(あんたが噂の女王さまか? キュートじゃないか)」
誰だ。このオッサン?
あたしの箸は止まらないわ。
あたしの視覚センサーが捉えたのは、不自然なほどに整えられた金髪という名のテクスチャを纏い、威圧的なパーソナルスペースを物理展開してくる、恰幅のいい一人の男。
その背後には、シークレットサービスという名の強力なファイアウォールが幾重にもデプロイされている。
この国の最高権力者さえもが、バックドアからの不正アクセスを警戒するように、このオッサンに対して卑屈な同期信号を送り続けていたわ。
「"It’s a natural conclusion. Anyway, who even are you, old man?"(当然の帰結よね。てか誰よオッサン?)」
傲岸不遜にあたしは職質。
あたしは、アジのなめろうという名の極上のレシピを、胃袋という名のローカルストレージへとリダイレクトしながら、潤んだ瞳を全盛期の角度で明滅させた。
どれほど強大な管理者権限を持っていようとも、あたしの「全盛期の知性」の前では、全ての存在は脆弱な演算ノードに過ぎないのよッ!
横浜のプリンスなホテルのメインバンケットは、今や一つの巨大な演算ノードへと変貌を遂げていたわ。
シャンデリアから降り注ぐ光の粒子が、タキシードやドレスを纏った有象無象のデータ群を、全盛期のコントラストで照らし出している。
その中心にデプロイされた「金髪の権力者」が、あたしの隣で静かに待機していた最適化パッチへと、不躾な視線という名のスキャンを実行したわ。
「Are you a friend of the Queen? You're cute too.(君は女王さまのお友達かな? 君もキュートだ)」
オッサンが勇希にキュートと言った。
おいオッサン。
ビジュアルの解像度は女子っぽいけど、中身はゴリゴリのヤローだぞ。そいつ。
あと、こいつはあたしの大事な専属ユニットよ。
やらん。
あたしは反射的に、勇希をあたしの背後という名の「非公開ディレクトリ」へと隠したわ。
「What is your business, American? You called me out here, so state it briefly.(要件はなによアメリカン? わざわざ呼び出したんだから簡潔に述べなさい?)」
あたしだって馬鹿じゃないわッ!
このオッサンがアメリカン・プレジデントという名の、世界最高レベルの管理者権限保持者だってことくらいは、構造解析済みよ。
「You didn't know, did you? I explained it to you in the car, remember?(知らなかったよね? 車内で僕が説明したんだよね?)」
勇希が、あたしの背中越しにジト目という名のエラーログを貼り付けてくる。
うるさいわね、今は知っているんだから、結果として同期は完了しているでしょ?
「Ladies, stop fighting. My order is simple. Queen, would you clean our oceans too?(レディたち。喧嘩はやめなさい。俺のオーダーはひとつ。女王さま、ウチの海も洗っちゃくれないか?)」
アメリカンが余裕のパルスで仲裁してくるけれど、これは喧嘩じゃなくて、全盛期のじゃれ合いという名のメインループよ。
それより、勇希、あんた。
「Yuuki, he thinks you're a girl. And he belongs to me. I won't give him to you, Mr. American President.(おまえ女の子だって思われてるぞ勇希。あと、こいつはあたしんだ。おまえには、やらんアメリカン・プレジデント)」
あたし、黒木舞桜は、勇希という名の唯一無二のリソースを大事そうに抱きしめ、最高に気高いプライドで威嚇してやった。
横浜のプリンスなホテルのメインバンケットは、今や一つの巨大な演算ノードへと変貌を遂げていたわ。
シャンデリアから降り注ぐ光の粒子が、タキシードやドレスを纏った有象無象のデータ群を、全盛期のコントラストで照らし出している。
その中心にデプロイされた「金髪の権力者」が、あたしの隣で静かに待機していた最適化パッチへと、不躾な視線という名のスキャンを実行したわ。
「Orders like that should go through the CEO, not the Queen, Mr. President.(そう言うオーダーは、女王さまじゃなくてCEOを通して欲しいですな大統領)」
割って入って来たのはボッチのヤローだ。
「Hahaha. I know, Chino. I’ll run it by you, the young master. I just couldn't help but say hello since these young ladies are so cute.(ハハハ。わかっているさ茅野。御曹司の君に話は通すさ。ただ、このお嬢さんたちがあんまりキュートなもんで声を掛けちまっただけさ)」
うん。オッサン。勇希は女子じゃなくてヤローだぞ。極道寄りだぞ。
「Sludge from city ports. I want to use it for research material. Our request is the transfer of the sludge. That’s it. Sounds cheap, doesn't it?(都市港湾のヘドロ。こいつを研究素材に使いたい。こちらの要求はヘドロの譲渡。それだけです安いもんでしょ?)」
ボッチ。おまえ、それ事後で国際問題になるやつ!
すると勇希が、瞳を医学的な解像度で鋭くさせたわ。
「Chino, you're being too greedy. Also, I’m a man, old man.(茅野。アコギが過ぎる。あと俺は男だオッサン)」
勇希は、アメリカン・プレジデントの網膜に、ヘドロという名の「隠されたリソース」の真実を直接デプロイし始めたのよ。
「Mr. President, that sludge isn't just waste; it's a 'physical gold mine' containing rare metals and rare earths. By cleaning it, we can recover high-value resources. If you agree to give us 40 percent of the recovered assets, we’ll handle the entire purification process of your oceans.(大統領、そのヘドロはただの廃棄物ではなく、希少金属やレアアースを含む『物理的な金山』なんだ。洗浄することで、高価値なリソースを回収できる。回収された資産の4割を僕たちに譲渡することに同意してくれるなら、君の国の海の浄化プロセスをすべて引き受けよう)」
勇希のヤンデレ・アルゴリズムが、医学的な精密さで交渉のハードウェアを組み替えていく。
あたし、黒木舞桜は、その完璧な論理パッチを誇らしく思いながら、アジのなめろうを全盛期の角度で咀嚼したわ。
「Metal in the sludge? That's impossible!(ヘドロに金属? そんな馬鹿な?)」
懐疑的なアメリカン・プレジデントに対し、勇希は不純な独占欲を孕んだ瞳を明滅させ、最高に不敵な「極道スマイル」をデプロイしたわ。
「It's true, Mr. President. Centuries of industrial wastewater have caused metallic particles to settle and accumulate on the seabed. You know the law of conservation of mass, don't you? Once you understand the value, you'll think 40 percent is too greedy. So, how about this? Let's clean the Mediterranean sludge as a volunteer effort for Europe. We'll take only 20 percent for that. Just imagine, sir—the accumulation of thousands of years of shipwrecks and history.(本当さ、大統領閣下。数百年分の工業排水の垂れ流しで金属粒子は海底に沈殿し堆積している。質量保存の法則くらい知っているだろう? あんたは理解した途端に4じゃアコギだって思う。じゃあこうしよう、地中海のヘドロを欧州へのボランティアとして清掃しようぜ? こっちは2でいい。想像してみな閣下。数千年分の沈没船やらの堆積だ)」
金髪の大統領の瞳が、全盛期の解像度で大きく見開かれたわ。
その脳内メインフレームでは、地中海という名の巨大なデータベースに眠る、古代ローマからの黄金や沈没船の財宝という名の「物理的資産」が、爆速でシミュレーションされているのがわかる。
「Holy... The Mediterranean? You're talking about dredging up history itself? Chino, you've got a terrifying asset in this young man. Fine, I'll take that bet. Let's make the world's oceans clean and profitable!(なんてこった……地中海だと? 歴史そのものを浚渫しようってのか? 茅野、おまえはとんでもない資産を抱えているな。いいだろう、その賭けに乗った。世界の海をクリーンに、そして最高に利益の出るものにしようじゃないか!)」
大統領は、あたかも巨大な利権という名のパッチを手に入れたかのように、豪快な笑い声をパーティー会場にリダイレクトさせたわ。
その圧倒的な威圧感さえも、勇希の医学的な交渉パッチによって、完全にこちらの管理下に置かれたのよ。
「……やるじゃねえか白井。おまえ、医学部じゃなくて経済学部の間違いじゃねえのか?」
ボッチのヤローが、驚愕という名のエラーログを吐き出しながら、勇希の横顔を全盛期の解像度で凝視しているわ。
資本の魔王として振る舞っていたボッチにとっても、勇希が提示した「歴史的堆積物の略奪的洗浄」というスキームは、想定外のオーバーフローだったみたいね。
あたし、黒木舞桜は、アジのなめろうを優雅に嚥下し、潤んだ瞳を全盛期の角度で輝かせたわ。
さすがはあたしの選んだ最適化パッチねッ!
医学的な精密さで大統領の強欲という名の脆弱性を突き、地中海という名のレガシーなディレクトリまで一気にハックしてしまうなんて。
この全盛期の知性の女王たるあたしを支えるにふさわしい、最高に非論理的で完璧な交渉術よッ!
「当然の帰結よねッ! 勇希の論理パッチに、アメリカン・プレジデントの旧世代な価値観が耐えられるはずがないのよッ!」
あたしは、誇らしさという名の熱量でメインフレームをオーバーヒートさせながら、勇希の腕をぐいっと引き寄せたわ。
二〇二〇年、一月三〇日。
横浜のプリンスなホテルのメインバンケットが、一瞬にして絶対零度の静寂という名の「実行停止状態」に陥ったわ。
あたし、黒木舞桜は、手に持っていたアジのなめろうを落としそうになりながら、隣に立つ医学徒の横顔を全盛期の解像度でスキャンしたの。
「Chino. You are mistaken. There is only one reason I became a medical student.(茅野。君は勘違いしている。僕が医学徒である理由はひとつだ)」
知性の光を明滅させている勇希は、あたかも国家予算の最適化パッチを提案するかのような、極めてロジカルな顔面をデプロイしていたわ。
そう言えば、勇希が医者を目指すなんて、その執着心のベクトルからして違和感しかなかったのよね。
システムに潜む致命的な脆弱性を見つけ出すような、その鋭い視線の先に、一体なにをレンダリングしていたのか……。
「It's to ensure no one but me ever touches Mao's breasts!(舞桜のオッパイを僕以外に触らせないためだ!)」
想定内よッ!
想定内だったけれど、このタイミングで、しかもアメリカン・プレジデントという名の最上位権限者の前でデプロイするようなパケットじゃないでしょッ!?
勇希の音声出力は、あたしの「気高いプライド」という名のファイアウォールを物理的に粉砕し、脳内メインフレームを排熱処理不能なオーバーヒート状態へとリダイレクトしたわッ!
「「「You've ruined everything, you Yandere Prince!(いろいろ台無しだよ。ヤンデレ王子!)」」」
あたしと、ボッチこと茅野万桜、そして金髪のアメリカン・プレジデント。
あたしたちは世代と国境、そして管理者権限のスペック差さえも一瞬で飛び越え、完璧に同期した非難のパケットを、勇希に向かって異口同音に射出したのよッ!
「Holy... I thought I was looking at a genius negotiator, but it turns out he's just a top-tier lunatic.(なんてこった……。天才交渉人を見ているつもりだったが、蓋を開けてみればただの最上級の狂人じゃないか)」
大統領は蒼い瞳を激しく明滅させ、手にしたシャンパングラスを空中で静止させたままフリーズしているわ。
「世界の海を洗う」という壮大なグローバル・プロトコルの中心に、まさか「あたしの肉体という名の特定ディレクトリへのアクセス制限」という、極めて個人的でヤンデレな動機が実装されていたなんて、最高に非論理的だわッ!
「……悪いか? 僕にとって、世界という名のマクロ環境を正常終了させることよりも、舞桜という名の『極上のレシピ』を保全することの方が、優先順位が高いのは当然の帰結だよ」
勇希は、あたしの首筋を医学的な精密さでサンプリングしながら、こともなげに宣ったわ。
この医学徒の異常なまでの知性は、やはり、あたしを独占するためだけの専用エンジンとしてビルドされていたのね……。
「お黙りなさいッ! この変態王子ーッ!」
あたし、黒木舞桜は、プラズマ級にバーニングした顔面を両手で覆い隠しながら、全盛期の熱量で絶叫したわッ!
二〇二〇年、一月。
勇希の暴走する独占欲によって、最高に美しく、そして最高に台無しなランタイムエラーへと帰結したのよッ!
当然の帰結よねッ!
★ ◆ ★ ◆ ★
「Mr. Prime Minister. You are a lucky man.(総理。君は幸運だな)」
アメリカン・プレジデントが、総理大臣のオッサンと話している。
さて、アジのなめろうという名のメインディッシュは完了したわ。
次はデザートのフェーズよ。
「ま、舞桜……ステーキはデザートって呼ばない……」
なにを言っているのかしら。
この全盛期のヤンデレ王子は?
あたしは、給仕のおにいさんに視線という名のコマンドを送信したわ。
「全種類マシマシで!」
サーロイン、リブロース、ヒレ、シャトーブリアン。
赤身と脂身が織りなす、完璧な熱力学の結晶たち。
それらの極上パケットを、限界突破のキログラム単位でプレートにスタックさせる。
滴る肉汁という名のリソースは、一滴たりとも逃さないわ。
ガーリックソースと山葵醤油のデュアル・ブースト。
あたしの胃袋という名のローカルストレージは、無限のキャパシティを誇るのよッ!
「琴葉先輩……誰もとらないッスからぁ。お願い落ちついて先輩?」
ボッチこと茅野万桜が、防大組取り纏めの倉田琴葉ちゃんを宥めている。
琴葉ちゃんは、血走った眼球を全盛期の解像度でギョロつかせた。
「食事のさなかに話し掛けるなーッ!? ここは戦場だッ!」
完全にステーキコーナーのヌシと化しているわ。
なん周目よ琴葉ちゃん?
トングを構えるその姿勢は、完全に近接戦闘のプロトコルじゃないの。
「Mr. President, what do you think happiness is?(大統領、幸せってなんでしょうね?)」
総理のオッサンは、そんなカオスな光景を眺めて苦笑する。
昼下がりの横浜港。
大きな窓から差し込む13時の太陽の光が、ステーキの脂という名のテクスチャを輝かせているわ。
「Is it something like this!?(こういうの!?)」
大統領は、乾いた笑みを浮かべて御追従のパケットを返した。
サブリナこと福元莉那と拓矢は?
拓矢たちは、スイーツコーナーで椀子スイーツの無限ループを実行中ね。
マカロンとショートケーキを、限界駆動で胃袋へリダイレクトし続けている。
致死量の糖分という名のマルウェアに、自ら喜んで感染しにいっているわ。
まあ、幸せって言えば幸せか。
あたし、黒木舞桜は、3枚目のシャトーブリアンを全盛期の角度で咀嚼した。
2020年1月の、最高に非論理的で平和な午後。
すべては、あたしたちの黄金パッチがもたらした、当然の帰結よねッ!
【後書き】
どうだったかしら?
アメリカン・プレジデントの旧世代な価値観も、完全にハックされたわ。
あたしたちの論理パッチの前では、脆弱な演算ノードに過ぎないのよ。
それにしても、勇希のヤンデレ・アルゴリズムには驚かされたわね。
さすがのあたしのメインフレームも、排熱処理不能でオーバーヒート寸前だったわ。
でもまあ、結果として最強のファイアウォールとして機能しているじゃない?
だから、今回のところは許容範囲ってことにしてあげる。
そして、完全に戦場と化したステーキコーナー。
無限ループをキメるスイーツコーナーのカオスっぷり。
2020年という停滞した実行環境も、あたしたちにかかればこんなものよ。
こんなにも高カロリーで、平和な箱庭へとリダイレクトされるのよ。
次から次へと押し寄せる不規則な入力だって、恐れることはないわ。
あたしの全盛期の脚線美と知性で、すべて最適な形へコンパイルしてやるわッ!
しっかり同期してついてきなさいッ!
当然の帰結よねッ!




