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019話 二回目の多数決

「僕は、上流に向かうほうがいいと思う」


「ウチも上流」


「アタシは下流がいいと思うのだわさ」


「私も下流だと思う」


「、、、俺も…下流。」


 上流に向かったほうが良いという意見がユウリとハネズ、下流に向かうべきだと言う意見がアサギ、ムクゲ、カクゲン。多数決では下流に向かうべきだという意見が最終決定事項だ。


 多数決は尊重するが、まずは自分が上流が良いと思った理由を説明した方が良いと考え、ユウリは口を開いた。


「僕が上流がいいと言ったのには理由があるんだ。」


 なぜなら、とユウリが説明を始める。


「カイブツはたぶん今も、白狐の匂いが出てくる、秘密基地の洞窟の前にいる。もし僕達が下流から外に出ると、カイブツも狐の匂いを感知することになる。下流の出口から洞窟を出た僕達は、全速力で村の周りをぐるっと回って、村の入口から参道を通って神社に行くのが最短経路となる。走る早さは僕達の方が早いけど、カイブツは匂いを感じながら転回して、参道で遭遇する可能性が高いと思うんだ。」


 ムクゲが抱いている狐を撫でるのを横目で見ながら、ユウリは地図を思い浮かべて説明した。イヅクモ村の周囲は柵で囲まれており、忍を目指すユウリならまだしも、幼馴染達ではおそらく超えられないと考えたユウリは、村の入口まで走る方が速いと判断した。


「妖獣に知能はないけど、本能で先回りする可能性はあるかもしれないのだわさ。」


 アサギがムカデの妖獣について考察する。


「確かにユウリが言う通りだ。下流に向かうとバケモンにまた追いかけられちまう。でもよ、上流に人が通れる出口がないかもしれねぇ。」


「みんな、この洞窟が青く光っているのはどうしてだと思う?」


 ユウリの突然の話題の転換にみんな戸惑いつつも、知っている人はいないようで、返事がない。それを確認したユウリは再び口を開く。


「この青く光っているのは、実はヤミグラシコウモリの糞なんだ。」


 初めて目にした時に「キレイ」と言っていた女子たちも、それがコウモリの排泄物であることを知り、顔をしかめる。


「忍はこの糞を敵に投げつけて、夜に尾行する時の目印にしたりするんだけど、ヤミグラシコウモリは、日が沈むと外に出て狩りをして、日が昇る前にここに帰ってくる夜行性の動物なんだ。だから、コウモリが外に出るための出入り口があるはずなんだ。そしてヤミグラシコウモリは全長が六十(センチメートル)くらいあるから、僕達でも通り抜けられると思うんだ」


「でも、それは上流に出口があるっていうことの保証にはならないんじゃない?」


 学級委員長が疑問を呈する。ユウリは言葉足らずだった自分を恥じながら答えた。


「ごめん、言い忘れてた。ヤミグラシコウモリは、絶対に西側に穴の出口を作るんだ。つまり、地形を上から見てみると、この川は、北西から南東に流れている。だから、上流のある西側にコウモリの出入り口があると僕は考えたんだ。」


 ユウリの説明に得心した四人は、意見の統一を図る。


「ユウリはそう言っているけど、みんなはどう思う? 」


「俺もユウリの意見に賛成だ」


「私もユウリが言うんだったら、間違いないと思う」


「アタシもそれでいいだわさ」


 ハネズが意見を取りまとめ、カクゲン、ムクゲ、アサギの順に、ユウリの意見に賛同する。


「ユウリって学校の勉強は好きじゃないけど、忍とか、動物に関しての知識は、すっごい持ってるよね」


 学級委員長ハネズがユウリを茶化すと、ユウリは、忍は困難な状況を打開するのが仕事だからね、と破顔して言った。


「よし、それじゃあ、隊列を組もう。地面はゴツゴツしているから気をつけて。ロープがピンと張らないように、間隔も気をつけながら進もう。」


 妖獣がいるとは思えないが、地盤の陥落、迷子を防ぐため、ユウリは隊列を組むことを提案した。 みんなから異論がなかったため、ユウリ、アサギ、ムクゲ、ハネズ、カクゲンの順番に、ロープを腰に結び、単縦陣で進むことにした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


次話以降も楽しみにして頂けましたら嬉しいです。

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