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018話 どうかこのまま

 絶えず襲う揺れの中で、急いで準備を終わらせたユウリ達一行は、青い光を放つ神秘の洞窟に向けて行軍する準備を終えた。


 まずユウリ達は青く光る洞窟に行くために、穴を広げる作業に入った。みんなが立っているこちら側の洞窟の壁と、奥に見える空間とを遮る壁は厚さが五糎くらい。秘密基地に保管していたクナイで、削り取るように叩くと、簡単に穴が広がった。五分ほどかけて、人の半身くらいの大きさの穴が出来た。ユウリが穴の中に身体を入れる。こちら側の地面と未踏空間の高さは三米程ある。日々鍛錬を行っているユウリにとっては、この高さは飛び降りても問題ないと判断し、腰に縄を巻き付けて飛び降りた。そして秘密基地から持ってきたクナイで地面を数回差し、踏み抜いたり崩落する危険はないことを確認した。


 ユウリは上を仰ぎ見ると、待っている幼馴染達に「来ても大丈夫だよ」と声をかけた。


 最初、女子達はお互い譲り合っているようであったが、最終的にムクゲが一番に降りることで決着したようだ。


 ムクゲは穴の手前で腰をおろし、白く滑らかで、キメの細かい柔肌の脚を穴から出し、段差に腰掛けるような体勢を取った。そしてカクゲンがムクゲの片手を握ると、ムクゲはゆっくりと身体を伸ばしながら、下に向かって脚を伸ばす。白い足先が地面まで残り一・五米という所で、激しい揺れがユウリ達を襲った。震動によってカクゲンの手から滑り落ちたムクゲは、そのまま重力に引っ張られ、落下する。落下時間は一秒。しかしムクゲの体感時間は引き伸ばされ、見守っていたハネズ達の顔がゆっくりと遠ざかっていく。地面に衝突する、嫌だ、ユウリ助けて。


 地面にぶつかると思い、ギュッと目を閉じていたムクゲが目を開けると、そこには吐息がかかりそうな距離で、心配そうに見つめるユウリの顔。二人はじっと見つめ合う。数瞬の後に感じる、背中と膝の裏の二本の腕。あまりに近いユウリとの顔の距離、…!。これは夢で想像していたお姫様抱っこ。ムクゲの血液が急速に全身を駆け巡り、熱を帯びる。


 怪我はしていないかと、ユウリがムクゲに声をかけると、真っ赤になった顔を俯かせて、小さな声で、大丈夫だよと返事があった。


 もう少しこの状態でいたい、と思うムクゲと、女の子の身体ってこんなに柔らかいんだ、それになんか甘い匂いがする、と考えているユウリ。二人はしばらくの間、そのままの体勢で固まっていた。


「おーい、お二人さん、ウチらはいつまで見てたらいいですかー」


 日々クシナダの丘で薬草を採取するために駆け回っているハネズにとって、この段差は特に問題ない高さだったようだ。ユウリが気付かない間に、下に降りてきていたハネズが二人の横に立ち、冷たい目で言った。段差の上からも冷たい視線を感じる。


 慌ててムクゲを地面に立たせたユウリは、ごまかす様にハネズに口を開いた。


「んー、えーっと、あのさ…」


 しかし、この場を打開するような気の利いた事を言えなかったユウリは、回れ右をすると、段差を降り始めているアサギに手を貸した。カクゲンは背中に担いでいた布袋をドサッとこちら側に落とすと、自分も飛び降りた。


 五人そろったところで、車座になって、状況を確認する。


「たぶん、ここは大昔に溶岩が降ってきた時に、元々あった川の上に倒れた木が蓋のように被さったんだ。それで溶岩が冷めて固まる時に、木は燃え尽きて、この空間が出来たんだと思う。」


「水が流れてるけど、池みたいに溜まってないってことは、どこかに出口があって、そこから流れ出してるってことだわさ」


 ユウリの仮説をアサギが首肯し、状況を分析する。


「ってことは、川の流れに沿って歩いて行けば、出られるってこと?」


「そういうことになるね。たぶん、下流の先は、村の東側にあるオッコト池に繋がってると思う」


 ハネズの質問に、ユウリが推論する。


「この川の上流に行ったら何があると思う?」


「イズハヤ川じゃねぇか?」


「イズハヤ川は遠すぎるのだわさ」


 ムクゲが聞き、カクゲンが答える。それをアサギが否定する。


「じゃあ、どこから?」


「アタシも知らないだわさ」


 アサギとカクゲンが問答し、自分がわからない事に腹を立てたのか、アサギが不機嫌になった。


「まぁ、僕たちは村の外に出たことがないから、わからないよ。それより今決めるのは、下流に行くか、上流に行くかだよ」


 ユウリはみんなに提案した。アサギは大丈夫だと太鼓判を押したが、ユウリの内心は、早くしないと、断続的に揺れる洞窟に押しつぶされないか、という不安でいっぱいだったからだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


次話以降も楽しみにして頂けましたら嬉しいです。

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