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Re:スポーンから始まるスパルタ式技能習得訓練

第16話です。

 「なるほどねぇ……うん。なんだか思った以上に波乱万丈ねキミ」

 「自分でしゃべっててもそう思います」


 騎士団長さんズにボコボコにされた僕とシャルロッテさんは、差し当たって僕の職業を決めるためにクワトロのお城の中にある教会に来ていました。

 ウーノでは総合ギルドで職業を変更できると聞いていたのですが、どうやらクワトロではこの場所でも変更ができるそうです。

 ……と、云いますか。どうやらこの『騎士姫の試練』というクエストは、クリアしない限りこのお城の外に出ることが出来なくなるクエストのようですので、このお城の中に一通りの必要な施設は揃っているという事でした。

 その上、リスポーンの地点まで自動でこの教会に設定していただけるという親切設計です。

 ……はい、つまり僕も出られなくなっていました。流石にこれは聞いていません。逃げられないじゃないですか。


 「あら? 私から逃げられるとでも思ってたの?」


 ナチュラルに人の思考を読まないでください。あとその言い方なんだか怖いです。

 

 「とりあえず、無職じゃステータスに補正もかからないからね。何になれるかはわからないけど、兎に角試してみましょ」


 教会の祭壇には大きな水晶玉のようなものが安置してありました。

 どうやら、あれに触れることで適性のある職業に転職することが出来るようです。流石ゲーム。便利ですね。


 「ホントにね。現実でも簡単に転職できれば楽なのに」


 妙に実感の籠っていそうなボヤキは聞き流すとして、早速触ってみましょう。

 指先で触れてみると、僕に適性のある職業が一覧となって――なって……ませんね。

 

 ……ええと、二つだけ、ですか?



 【狂戦士】

  命尽きるまで戦うことを求めた修羅道の戦士。STR補正極大 VIT減少補正極大


 【護衛獣】

  その身を盾として主を守る守護の獣。STR増加補正大。VIT増加補正大 MGI増加補正大



 「……こりゃまた、極端なのが来たわねぇ。まあ、『狂戦士』があるのは良かったわ」


 何がいいのかさっぱりですが、どうしてこう、剣士とか侍とか普通っぽい職業が来ないんですか。やっぱ斬馬刀折れてるからダメなんですか。

 ラスボスさんのうそつきぃ。

 

 「……ええと、これどっちにすればいいんでしょう」

 「何言ってるの。両方取るのよ?」


 ……ナンデスト?


 「このゲームじゃ職業は結構自由に変えられるの。選べる職業は片っ端から取っていくくらいのつもりじゃないと、とてもじゃないけどまともに戦えないわ」

 「ええと、すいません。職業ってステータスに補正がかかるだけじゃないんですか?」

 「違うわよ。スキルの習得率も変わるわ。職業によっては固有スキルもあるもの」


 は、初めて聞いたんですけどそんな情報。

 スキルは偶然手に入れるものかSPで取るものじゃないんですか?


 「あー……ひょっとしてワンニャンのやつ、隠してるな? もしくは正式版で調査中か……ま、シンくん一人くらいなら別にバラしてもいいでしょ」

 「ええと、ひょっとして内緒の話なんですか?」

 「んー。まあね。これ、βで私とワンニャン、あともう一人しか検証できなかった情報なんだけどね。シンくんは何かスキルを取った時、どんな表示が出たか覚えてる?」


 はて……スキルを取った時……たしか、【毒耐性】や【水中行動】のときは『スキル【○○】を取得しました』でしたかね?

 そういえば、【スケイルナックル】や【ヘヴィシュート】の時は別のスキルから変化したんでしたっけか。


 「まず、このゲームで確実に習得できるスキルっていうのは決まっているの。大体SPで取れる奴がそうだって思っておけばいいわ」

 「SPで、ですか。ああ、そういえばSPで取ったスキルは名前がそのままでしたね」

 「そうよ。でも逆に、名前が変わってしまうスキルもあるわよね? 例えば、キャラクタークリエイトの時に取ったスキルとか。覚えがあるかしら?」

 「はい。そういえば最初から持っているスキルはほとんど名前が変わってますね」

  

 ええ、【ナックル】が【スケイルナックル】になってますね。


 「仮に、その名前が変わってしまう前のスキルを『基礎スキル』と呼ぶわ。このスキルの変化はその人の種族が影響を及ぼすものと推測しているの。だから同じように取得した『基礎スキル』でも、種族によっては名前どころか全く別のスキルに代わってしまうことがあるのよ」

 

 へー……あれ? それじゃひょっとして種族の決定ってものすごく重要なことだったんじゃ……


 「重要ね。キミが最初に選んだ種族が違ってたら、間違いなく全然違う旅路になってたわよ。私みたいに延々同じ所から出られなかったかもしれないわね」


 なんともはや……衝撃の事実でした。

 まあ、あんな痴女みたいな恰好でネカマやるとか自殺案件です。リザードマン最高と思っておきましょう。


 「話を戻すわ。種族によって獲得できるスキルを仮に『種族スキル』と呼ぶけど、これを取るための前提である『基礎スキル』は、職業に就いた後の行動によって、ある程度意図して取得することが出来るの」

 「ええと……職業に就いた後で、ですか」

 「そ。つまり、キミは今までたぶんもっとたくさんスキルを取れていたはずなんだけど、無職だったから全部その機会をフイにしてるって訳ね」




 OTL  




 「ま、まあまだ大丈夫よ。まだレベル19でしょ? これからこれから。お姉さんも教えてあげるから一緒に頑張りましょ?」


 うう、慰めが逆にきついです……。

  

 「えーと……あ、そういえばシン君の【龍鱗装甲】の元になった【鱗装甲】や、いつの間にか増えていたっていう【テイルアタック】は、多分キミの種族が持つ『固有スキル』になると思うわ。これに関しては職業関係ないからちゃんと取れてるっていうのは頑張った証拠よ」

 「……ありがとうございます。あ、そういえばさっき職業でも『固有スキル』が取れるみたいなこと言いませんでした?」


 あ、シャルロッテさんがなんだかうれしそうな顔になりました。

 というか、この笑顔どこかで……あれ、嫌な予感が……


 「そうよ。一定の職業についたものがほぼ確実に、しかも種族制約なく取得できる『固有スキル』というものもあるの。それが、キミが今から取得を目指すスキルよ」


 


 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》


 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》

 

 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》


 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》

 《スキル【バーサークハート】を取得しました。種族によりスキルが変化します。【グレンデルロアⅠ】を取得しました》


 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》


 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》


            ・ 

            ・

            ・

           (中略)

            ・

            ・

            ・ 


 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》


 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》

 《スキル【ブラッドレイジ】を取得しました。種族によりスキルが変化します。【逆鱗Ⅰ】を取得しました》


 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》


 《死亡しました。デスペナルティが継続されます》


            ・

            ・

            ・




 「もう……ゆるして……もうむり……」

 「何言ってるの、まだ50回も死んでないでしょ! ほら、ちゃんと起きて!」


 ひどいスパルタです。

 何をやっているかって、さっきから延々騎士団長と魔法団長のところに一人で突っ込んで戦ってはボコボコにされるのを繰り返しているのです。

 ええ、たしかにボスキャラはたとえ倒せなくても大量の経験値が手に入るとは聞きました。

 で、あの二人はまごう事なきボスキャラです。

 しかも、僕が倒せたクソ犬なんか目じゃないレベルの、とんでもない強さのボスキャラです。


 「私だって一人の時はこうやってレベルとスキル上げてたんだからね。大丈夫大丈夫! シン君はまだ頑張れるよ!」

 「根拠のない応援程無責任で酷いものは無いと思います」

 「何言ってるのよ。ちゃんと根拠はあるわ。キミ、段々耐えられる時間が伸びてきてるもの」


 ……ああ、そうですね。

 確かに最初は『狂戦士』の職業になってしまったせいでHPが激減していましたから、文字通り一撃で殺され続けていましたが、今は何とか騎士団長と魔導団長の攻撃を一発づつなら回避できたりしてますよね。

 でもそれ、目くそ鼻くそって言いません?


 「安心しなさい。間違いなく動きの方もよくなってるから。スキルも結構増えたでしょ?」


 ふむ、では休憩がてら少し確認してみましょう。


  アバター シン

  種族   リザードマン

  レベル  26(+8)

  職業   狂戦士

  HP    743(-700)

  MP    0

  STR    351(+260)

  VIT    46(-45)

  AGI    90(+33)

  MAG    14(-14)

  LUC    0

  スキル (余剰SP:26)

  【スラッシュⅥ】【スケイルナックルⅦ】【ヘヴィシュートⅦ】【テイルアタックⅤ】【直感Ⅸ】【龍鱗装甲Ⅳ】【HP自動回復Ⅷ】【水中行動Ⅱ】【毒攻撃Ⅲ】【毒耐性Ⅲ】【麻痺耐性Ⅲ】【剛体Ⅳ】【グレンデルロアⅡ】【逆鱗Ⅱ】【ハウルオブフューリーⅠ】


 右手装備 折れた斬馬刀

 左手装備 なし

 頭    なし

 胴    なし

 脚    レザーレギンズ

 足    なし

 装飾1  なし

 装飾2  なし

  

  称号

   【決闘者】【狼の天敵】【七転八倒】


 【グレンデルロアⅡ】

  自身にバーサーク効果を付与。VIT減少(極大)。減少分のVITをSTRに加算(1回)。スキルレベル上昇によりSTR強化効果上昇。


 【逆鱗Ⅱ】

  被ダメージによりSTR強化(累積)。スキルレベル上昇により効果上昇。


 【ハウルオブフューリーⅠ】

  悍ましき恐怖を撒き散らす咆哮。相手に確率で恐怖・スタン効果付与。スキルレベルにより付与確率上昇。


 【七転八倒】

  圧倒的な敵に立ち向かい続けるものに与えられる称号。但しもう少し工夫しましょう。スキル経験値上昇補正(微)




 最後お!


 畜生。最後の最後で妙な称号が増えてるじゃないですか。もう少し工夫しましょうって誰に採点されてるんですかこれ。女神さまですか? ラスボスさんですか?

 シャルロッテさんお腹抱えて笑わないでくださいよ泣きますよ僕。


 「ご、ごめん……く、くくく、そんな称号取るなんて……お、思わなかったから……ふ、ふふふふふ……」


 理不尽です。







 「あー、落ち着いた。まあ、称号はさておき狂戦士で比較的取りやすいスキルの派生形はとれたみたいだから、あとは『固有スキル』を取得するだけね」

 「……うう、あとどれくらいぶっ飛ばされればいいんでしょうか僕」

 「んー、うまくいけば一回で取れるわよあれ。できないときはほんと出来ないけど」


 なんですかその滅茶苦茶不安になるコメントは。運が絡むのなら僕には無理だと断言しましょう。LUCが0というのは伊達ではありません。

 

 「ああ、大丈夫よ。運はあんまり絡まないわ。単に『自分に向かってくる魔法を破壊する』ことが出来ればいいだけよ」


 「あの、人間にできる真似をやりませんか?」

 「大丈夫よ。このゲーム人間居ないでしょ?」


 そういう問題ではありません。

 

 「冗談は置いといて、シンくんもこの街までこれたのなら、ゴーストくらい撃破できたんでしょ? あれと同じ要領よ。殴れると思って殴れば大抵どうにかなるわ」

 「……いえ、確かに幽霊もどきは殴って倒しましたけど、改めて他人に言われると無茶苦茶な理屈だとわかりますね」

 「ファンタジーに理屈を求めるのはナンセンスよ。さて、これからキミにチャレンジしてもらうのは、狂戦士の職業が持つ固有スキル【ブレイクファンタズム】の習得よ。効果は『実体のない存在を物理攻撃によって撃破する』ね」

 「実態のない……ああ、だから魔法を武器で壊せばって習得方法なんですか。あ、幽霊もどきを延々倒し続けるってのはダメですかね?」

 「ああ、1000体くらい倒せばいけるんじゃない? 私やったことないけど。あと、このお城から出られないのにどうやってゴースト倒すのよ?」


 アッハイ。

 ……結局、また騎士団長さんズのところですか。

 気のせいか、NPCのあの二人がすごく楽しそうに僕を見て笑っているんですが、きっと気のせいですよね?

 ご覧いただきありがとうございます。


 多くの方にご覧いただけましたようで望外の喜びを賜っております。

 重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。

 このお話も残り半分となりましたが、どうぞ最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

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