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お出かけ

本文は4日くらい前に書き終わっていたのですが、なかなか見直しする機会が無く、引き延ばしているうちに更新が遅れてしまいました。すいません。

待ち合わせは、校門の前に私服に着替えて集合になった。

「服は……よし、これで行こうっと!」

せっかく、クラスメイトとのお出かけなので、僕はお父さんとお母さんにもらった誕生日プレゼントである服を着た。

櫛で髪をとかし、鏡と向かい合って念入りにおめかしをする。

ただ、時間をかけ過ぎてしまったようで、待ち合わせの時間にギリギリになりそうだった。そこで僕は髪型を崩さないように注意しながら、早歩きで待ち合わせ場所に行く。

すでにルカは校門の前にいるようだった。

「ルカ〜!」

僕が呼びかけると、こちらに振り向いて手を振ってくる。

「ごめんね、待たせちゃったかな?」

「ううん、私も今来たところ。ていうか、待ち合わせ時間には間に合ってるし、遅れてないんだから気にしなくて平気だよ」

彼女は、首元を赤いリボンで結んだ白いシャツを着て、その上に茶色いコートを羽織り、薄いピンク色のゆるりとしたスカートを履いていた。

ルカの可愛らしい顔立ちによく似合っている。

「わぁ……ルカ、凄く可愛いよ!」

思わず感嘆の息が漏れる。

「ふふっ、褒められると嬉しいよ。頑張った甲斐があるってものね」

少し照れた様子でモジモジするルカ。

が、その後すぐに僕の事をまじまじと見つめてから、微妙そうな顔をした。

「えっと……どうかした?もしかして、どこか変?」

不安に思ったので聞いてみる。

「いや、全然変じゃないよ……なんていうか、うん。男の子に言う言葉じゃないんだけど」

少し言い淀んでから、僕の両肩に手を置いて言った。

「すっごく可愛い」

真面目な顔で言われたので、ちょっとびっくりした。

「そ、そう?ありがとうね。頑張っておめかしして来た甲斐があったよ」

僕が褒めてくれた事に照れながらお礼を言うと、ルカはますます微妙そうな顔をした。

「可愛いって、男の子にとって誉め言葉、なの……?ていうか、アリエルって本当に男の子、なの?」

首をかしげて難しそうな顔をするルカ。一人で悶々と唸っている。

「ねぇルカ、行かないの?」

見かねた僕が促すと、ルカはハッとして元の表情に戻ってから、微笑んだ。

「あ、ごめんごめん。そうだね、行こっか」

学院から出て、歩き出した彼女についていく。

「まずはどこに行くの?」

「う〜んとね、実はさ、まだ具体的な事はあんまり考えてなくってね。とりあえず、商業区に行こうかなって思ってるよ」

「商業区って何があるの?」

ルカは僕がまだ行ったことのない方面へと進んでいく。

心なしか、通りに人が増えて来たような気がする。


「簡単に言うと、お店がたくさんあるんだよ。食べ歩きが出来る串焼きのお店が並んでたり、服屋があったり、少し先の方まで行けば、宝石屋なんてものもあったかな」

「食べ歩き……」

食べ歩きって、あれだよね、軽食を食べながら、街を見回ったりするやつだよね。

そういえば、王都の中でもちょくちょく食べ物のお店を見かけたなぁ……

「食べ歩き、したこと無いの?」

「うん、一回もしたこと無いんだ」

僕の顔を覗き込むようにルカが見てくる。

「なら、食べ歩きしに行こっか?」

「え、いいの?!」

「別に、どこか行く場所が決まってたわけじゃ無いから。アリエルが行きたい所に行こうよ」

にっこりと笑ったルカにお礼を言い、彼女の後をついていく。

そして、10分ほど歩いていると、あたりちいい匂いが漂ってきた。肉の焼ける、ジューッという音と共に、甘じょっぱいタレのかかった串焼きの匂いが鼻をくすぐる。

匂いにうっとりしていると、ルカが立ち止まった。

「この辺りが食べ歩きのできるお店が並んでるところかな」

「なんていうか、いい匂いが立ち込めてるね……!!」

僕の言葉に、ルカは相槌を打つ。

「まぁ、お店も色々あるし、たくさん回ってみよっか」

「うん!」

通りには、だいぶ先の方まで出店が並んでいる。1番多いのは串焼きのお店で、その他にも焼き菓子や飲み物を売っている所もある。

ちょっと興奮した僕は、ルカの少し先を行くようにしてお店を見ていく。

そして、タレのかかった豚肉が串に刺さって、焼かれているものがあった。

「うわぁ、美味しそうだなぁ……」

煙が立ち上るのを見ていると、お店の人、少し髭を生やしたおじさんが話しかけてきた。

「お嬢ちゃん、これに興味があるのかい?俺の豚串は美味いぜ!」

「おいくらですか?」

「一本100メキアだ」

結構量があるのに、100メキアなんだ、安いなぁ。

「えーっと、僕は一本でいいとして……ルカは何本食べる?奢るよ」

「えっ、私?私はいいよ、奢ってもらわなくても」

「今日はルカのおかげで楽しくなりそうだからさ、そのお礼として、ねっ?」

遠慮するルカに、ウィンクしてみる。

「うっ、可愛い………なら、一本だけもらおうかな」

「うん、わかった。おじさん、二本ください!」

僕が注文すると、串にタレを塗って焼き始めてくれる。どうやら、出来立てのものが貰えるみたいだ。

「あいよ、豚串二本な。200メキアだ」

タレが炭に落ちて焼ける匂いが香ばしい。よだれが垂れてきそうなくらいだ。

「あっと、いけないいけない、お金の事忘れてた。お財布は……」

僕はポケットにからお財布を出して、200メキア分の硬貨を探そうと、お財布を開いた。

が、しかし。

「…………」

僕の手は、お財布の中を見てピタリと動きを止めた。

「えっと、どうかしたの?お金無かった?」

その様子を見て、不安そうな顔をするルカ。

「……いや、そういうわけじゃ無いんだけど、ね」

やっちゃったなぁ……これは、幾ら何でもやりすぎた。寮に帰ったら整理しなくちゃ。

僕は苦笑いで財布の中から、200メキア分のお金を探す。

確か、お母さんとお父さんに貰ったお金の中に、細かいのがあったはず……

内心汗をかきながら財布の中を確かめていると、ルカが覗き込むようにして、何があったか確かめようとしてきた。

「そんな引きつった顔して、どうかした、の………」

そして、僕の財布の中を見たルカの口が、言葉の途中であんぐりと開いてしまう。

それもそうだろう。だって、僕の財布の中は、金色一色、つまり、金貨ばかりが詰まっていたからだ。

後ずさるように、二、三歩後ろに下がるルカ。

お金の事は後で説明しなくちゃ、と思いつつも、とりあえずは財布の中からやっと見つけた、200メキア分の硬貨を取り出し、おじさんに渡す。

「お、おう、200メキア頂いたぜ……」

どうやら、おじさんも僕の財布の中を見たようで、目を丸くしていた。

「あ、あ、あり、アリエル。私は、何も見てない、から。何も、見てない、から」

そ、そんなに怯えた顔しなくても……

少し過剰な反応に、僕は少し苦笑いをした。

「ん?アリエル……?嬢ちゃん、アリエルっていう名前なのか?」

ふと、おじさんに名前を聞かれる。ルカのように声を震わせず、普通に聞いてくるあたり、どうやらこの人はルカほど驚いてはいないようだ。

「はい。僕の名前は、アリエル・ナーキシードですが?」

僕が答えると、おじさんは納得したような顔をした。

「あぁ……なるほどな。そういう事か。嬢ちゃん、今王都で噂の子だろ?」

噂……あ、ダークウルフ殺しのアリエルってやつかな。

「まぁ、ちょっとだけ噂されてたりもするらしいですね」

「くくっ、なるほどなぁ!納得したぜ、なんで嬢ちゃんみたいな子がそんな大金持ってるのか」

おじさんは、串焼きを三つ手に持って、僕に渡してきた。

「えっ、一本多いですよ?」

「まさか、王都で噂の子に会えるとは思わなかったからな。こいつは、酒飲み友達にする自慢が出来た礼だ」

ニカッと、楽しげに笑うおじさん。

そういう事なら、ありがたく貰おうかな。

「ありがとうございます!」

僕はおじさんに三本の豚の串焼きを受け取った。

そして、その内の一本をルカに渡す。

「はい」

「あ、ありがとう……」

恐る恐る串焼きを受け取るルカ。まだ開いた口が塞がらないようだ。

「もう、そんなに驚かないでよ」

「い、いや。だって、アリエルのお財布の中……」

それは、ダークウルフ倒してるからなんだけど……まぁ、今朝も冗談って言われたし、言っても信じてはくれないかな。

「僕、結構儲かる仕事をしてるんだよ。だから、お金がたくさんあるんだ」

「えっ?!自分で稼いだの?」

「うん」

「す、凄いんだね、アリエルって……」

呆れたような、感心したような目で見て来るルカ。

僕はそんな彼女に笑いかける。

「ほら、串焼き冷めちゃうよ?食べながら、歩こうよ」

「あ、うん。そうだね!」

しばらく固まっていたルカだったが、僕が声をかけると、もとの調子に戻ってくれた。

おまけでもらった串焼きは、ルカにあげようとしたら断られたので僕が食べた。

一本でもそれなりに量があったので、食事前なのに結構満腹になってしまった。

それからは、ルカに商業区のお店をたくさん案内してもらった。

二人で楽しく会話をしてお店を巡っていく。

気がつけば、空は赤くなりはじめていた。

「さて、色々見たし、そろそろ帰ろっか。もう日が落ちてきてるし」

「うん、そうだね。帰ろっか」

僕達は道を引き返し、来た道を通って学院に戻って行く。

「アリエル、今日はなにが1番楽しかった?」

「うーん、全部楽しかったけど、やっぱり、ルカと話すのが1番楽しかったかな」

「 えっ、どこかのお店とかじゃなくて?」

思っている事をそのまま伝えると、ルカに不思議そうな顔をされる。

「うん。僕、家族以外の誰かと一緒に出かけるのって、初めてだったから。学院に入ったら、クラスメイトと一緒にどこかに行ってみたいなって思ってたんだ」

「そっか」

ルカは僕を見て、満足そうに笑った。

「あっ、でも。クラスメイトじゃなくて、友達って言って欲しかったかな」

「えっ?」

思いがけない言葉に、僕は驚いた。

「ほら、一緒に出かけたんだし、結構仲良くなれたでしょ?なら、友達でいいじゃない。それとも、私じゃ嫌?」

「ぜ、全然嫌じゃない!全然嫌じゃないよっ!!」

首をかしげたルカに、慌てて首を振って答える。すると、彼女はまた笑った。

「それじゃ、私達友達だね。改めて、よろしく、アリエル」

「うん。よろしくね、ルカ!」

僕もルカも、笑いあって帰り道を進むのだった。

入学初日、どうなるか心配だったけど、早速友達が出来ちゃったよ!これから、楽しくなりそうだなぁ〜〜。

早速友達が一人増えたことに喜ぶ。

「よぉ、嬢ちゃん達」

突然、男の人が声をかけてきた。

「二人とも、可愛いなぁ、お出かけかい?俺達と、一緒にあっちでお話ししねぇか?」

声の方を見ると、無精髭を生やした五人の男達が、楽しそうにヘラヘラと笑っている。

そのうちの何人かは、体や顔に傷があった。

うぅ、なんだろう?ちょっと怖いな……

僕が萎縮していると、ルカが僕の手を取った。

「ナンパでしたら、他の人を当たってください。行くよ、アリエル」

「う、うん……」

手を引かれて少し転びそうになりながらも、僕はルカの後について行った。

ルカ、すごいなぁ。僕と違って、全然怖がってない。むしろ、威圧してる。

内心でルカに感心しながら、手を引かれるままに、少し早歩きで男達を避ける。

ところが、男達は僕達を追いかけてきた。

「おいおい、随分と素っ気ない態度だなぁ?え?」

ルカが無視をしているので、僕も話さない。

そのまま、かなり早歩きになったルカについて行くが、男達は大股で僕達の前に立ちふさがった。

「待ってくれよ、ちょーっと、話すだけでいいからさ?」

ルカは軽く舌打ちすると、大通りから逸れて、男達のいないほそい路地の方へ入って行く。

「少し面倒だけど、こうでもしないともっと面倒な事になっちゃうから」

小声で伝えられた声に無言で頷き返して、路地を進んで行った。

「おいおい、そんなに逃げる事無いんじゃねぇの〜〜?俺達、話がしたいだけなんだからよぉ〜〜」

「「「「ギャハハハハハハ!」」」」

結構進んだのに、後ろからはずっと声が途絶えない。

振り切ろうと移動方向を変えるたびに、男達が僕とルカの前に回り込んで道を塞いでくるからだ。

しばらくの間は追いつかれて逃げてを繰り返していたけど、ついにそれも終わった。

「追いかけっこは終わりかぁ〜〜、残念残念」

僕とルカは、男達と向かい合っていた。

僕達は苦渋の表情を浮かべるのに対し、男達は楽しげに笑って僕達を見下ろしていた。

「くそっ、やられた……こんな事なら路地に入るんじゃなかった」

ルカは悔しそうに後ろを見つめた。

入り組んだ路地を歩いているうちに、僕達は袋小路に追い詰められていた。

そして、リーダー格と思われる男が他の男達に声をかけた。

「ここなら、人はいねえな。おいお前ら。あれ出せ」

その合図で、二人の男達が、上着の中に隠していた大きな麻袋を出した。

「なるほど、そういう事ね」

それを見たルカは、苦虫を噛み潰した表情をして、僕を背中で隠すように庇った。

「えっと、ルカ。どういう事……?」

この場で、僕だけが状況が掴めず、ルカに尋ねる。

すると、彼女は申し訳なさそうに言った。

「こいつら、ナンパに見せかけて私達を誘拐しにきたのよ。」

「ゆ、誘拐?!」

「そう。こいつらは人攫いよ。裏で人を売る連中。王都では大分減ったって聞いてたんだけどな。ごめんね、アリエル。私が路地に入らなければ、大人に助けを求められたのに。きっと、こんな路地じゃ、よっぽど大きい音でも立たなきゃ、大人は来ないよ」

「ルカのせいじゃ無いよ、悪いのは あの人達なんだから」

僕とルカが話していると、男二人が麻袋を構えて、ゆっくりと近づいてきた。

「さあて、お話はそこまでにしてもらおうか」

「抵抗しなければ、痛くしないぜぇ?」

どうやら、このままだと本当に攫われてしまいそうだ。

まだ怖いし、人相手に戦うのは初めてだけど、そんな事言っていられる状況じゃないよね。

僕は覚悟を決めて、戦おうと一歩前に踏み込んだ。

「待ちなさいっ!!」

その時、僕が足を一歩前に出そうとしたのと同時だった。路地に、ルカの大声が響く。

恐怖を感じさせないような、震えが一切ない声に、僕も男達も驚く。

「私達は王立中等学院の生徒よ。これ以上近づくなら、魔法を使ってあなた達を攻撃するわ!!」

生徒証を見せながら男達に声を張り上げるルカ。

迫ってきていた二人の男は、ルカの言葉にうろたえた。

そっか、国内でも名の知れた王立学院の名前を出せば、いくらかは牽制になるかもしれないし、魔法を使えば、この人達にも対抗できるかも!!

近づいてきた男の反応を見て、少しだけ形成が変わるかもしれないと、思った僕だったが、彼女の足を見て考えが変わった。よく見ると、彼女の足は震えていたのだ。

そ、そうだよね。ルカも、怖いんだ。怖い中で、僕を背中に庇って牽制をしてくれたんだ……

「へっ、学院がなんだよ、所詮ガキだ。お前ら、こいつらの言う事に耳を貸すな。魔法だかなんだか知らねえが、できるならとっくにやってるはずだ。だがまぁ念のためだ。魔法を使われるとまずい。とりあえず、そっちの髪が長い方からやれ」

リーダー格の言葉に、男二人が頷き近づいてくる。

どうやら、魔法が使える可能性のあるルカのから捕まえるようだ。

そんな男達を見て、今度はルカがうろたえた。

詠唱をしようとしているようだけど、カチカチと歯が鳴る音がしていて、口が震えて言葉が出てこないようだった。

それだけ怖いはずなのに、僕を庇ってくれている。

僕が、なんとかしなくちゃ。

男二人がルカに襲いかかるのと同時に、僕は彼女の前に出た。

男達は、僕がいきなりルカの前に出てくると思っていなかったのか、驚いて目を見開く。しかし、とっさの判断で標的を僕に変えて、二人掛かりで麻袋を上から被せてきた。

瞬間。

ゴスッッッ!!

僕の両拳が、男二人の鳩尾(みぞおち)にめり込んだ。

「「ごぶぁっっ」」

男二人は、一瞬でリーダー格のいる二、三メートル先まで飛んでいく。

そして、破裂音にも似た音を立てて路地の曲がり角の壁に叩きつけられた。

その様子を見て、最初に言葉を発したのは、ルカだった。

「………えっ?」

何が起きたか理解出来ない、といった顔だった。

「ルカ、怪我は無い?」

「う、うん……ない、けど」

ルカは戸惑っている様子だったけど、怪我した様子はない。

ふぅ、良かったあ。

ひとまずは彼女が無事でホッとする。

それから、呆然と立っている男達の方を向いて睨みつける。

倒れた男達二人は体を震わせるだけで、起き上がれそうになかった。

人と戦うのは初めてだったけど、かなり手加減したのにここまで効くなんて………

僕は自分の力が相手に通用する事を確認した後、リーダー格の男を見つめた。

「お、お前!!こいつらに何しやがった……?!」

リーダー格の男は、あからさまに怯えていた。

「殴っただけです」

「な、殴っただけで人が吹っ飛ぶわけないだろうが!!!お、お前ら、やるぞ!二人の仇だ、三人でやれば、このガキにも勝てるはずだ!!」

「「は、はい!!」

僕の反撃に焦っている男達だったが、懐からナイフを取り出して、その刃先を僕に向けてきた。

「いくぞお前ら!!」

それを合図にして、男達は一気に僕に飛びかかってきた。

「ルカ、下がってて!」

「う、うん」

僕はルカを下がらせると、ナイフを握った三人の男達を見た。

咄嗟に、男達がどの順で僕と接触するか確認する。

「左、右、真ん中」

自分に言い聞かせるように呟くと、僕も男達に向かって行った。

「だああっ!!」

1番左にいる男がナイフを突き出してくるが、男の手を下から蹴りあげて阻止する。

手が痺れた様子の男が落としたナイフを足で後ろに飛ばしつつ、回し蹴りで男の首元を蹴る。

その場で横に一回転してから、ドシャッ、という音を立てて、男はそのまま倒れた。

「よくも………たあっ!!」

すると、右側にいた男がナイフを投げてきた。

僕の頭めがけて投げられてきたナイフは、ダークウルフの鋭い牙や爪に比べれば、とても遅く感じた。

左手の人差し指と中指でナイフを掴み、勢いを止める。

このナイフも同様に後ろに捨てると、武器がないために慌てている男の腹に、素早く蹴りをかまして、気絶させる。

「す、すごい……」

ルカが後ろで何かつぶやいたのが聞こえたけど、今は戦闘中なので気にしない。

次は真ん中。

そう思って、僕がリーダー格の男を見すえた時、もはや男は戦意を消失していた。

2、3歩後ろに歩いてから、崩れ落ちるように尻餅を着き、ナイフを落とす。

「お、お前、一体………何者だ!!」

怯えていて、震えた体の様子から、もう戦う必要はないと判断して、最低限の警戒はしつつも、肩の力を抜く。

何者って、聞かれてもなぁ。

「僕の名前は、アリエル・ナーキシードですが、それが何か」

「ぼ、僕?お、お前、女じゃ………」

何気なく、何の意図もなく言ったつもりだったけど、僕が答えた瞬間、男は顔を真っ青にして、震える人差し指を僕に向けてきた。

「あ、あああ、アリエ、ル……整った、女のような容姿に、背の低い子供で、本当は、男……ま、まさか、まさかお前、お前っ!!!」

ところどころ震えた声を発しながら、僕を指す男が何を言いたいのかわからず、首を傾げてみる。

僕の中からは、拍子抜けという思いはあっても、恐怖は無くなっていた。

「A級冒険者……ダークウルフ殺しのアリエルッ!!」

言われてから、納得した。

あぁ、何者ってそういう意味だったのかぁ。確かに、巷ではそう呼ばれてるし、今度からは名前を聞かれたら、名乗ることにしようかな。

そう考えていると、男達が壁に叩きつけられた轟音によって気づいたのか、何人かの衛兵さんがこちらにやってきていた。

良かった、一時はどうなるかと思ったけど、これでなんとかなりそうだね。

僕は改めてルカの方を見て、彼女が怪我をしてない事を確認し、安堵の息をつくのだった。

アリエルに対するルカの反応まで入れようと思っていたのですが、どうにもうまく書けなかったので次回に回しました。次回も話が進みます。これからは1話1話を大切にしていくので、少し更新の速度が落ちてしまうと思いますが、引き続き読んでいただければ幸いです。

次回の更新は明後日を目指して頑張ります。

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