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母と子


大和撫子を体現したような黒く長い髪と均等な顔の作り。妖狐である麗に負けないぐらいの美しい、一応は俺の母親である人。

できれば俺もこっちに似たかったんだけど・・・残念ながら、俺はどちらかと言うと父親似。逆に義頼は母親似である(実父は見たこと無いけど)。


いや、そんなことよりもだ。俺に・・・いもうと???????


「は、母上、聞き間違いでは―――」

「正真正銘、貴方の妹ですわ。まあ、血は半分しか繋がって無いけど」


!!!まさか、母がふり――――


「貴方の異母妹よ。殿と松の方との間の子よ」


なるほど、そういうことか。松の方、つまり京極家の当主の養女としての父の側室になった女性との間の子ということ。松の方母とは、俺の実母と比べたらそれなりに話をしている方である。朗らかで優しく、家臣たちからも慕われている。


「い、いつ頃生まれたのですか?」

「二ヶ月前よ」


つい最近じゃねえかよ!ってか、何で俺は知らないんだ?というか、後ろにいる和丸も驚いた表情をしている。つまり、後瀬山城にいた人でさえ知らなかったということか。

・・・いや何で!


「妾も驚いているのです。この子の存在も、生まれる一ヶ月ほど前に知ったのです」


ああ、そういうことか。

側室との間に子供はできたと言えど、性別が分からない。もし仮に男の子だった場合、ただでさえ、無能な嫡子VS優秀な養子という泥沼な対立に油を注ぐ事態になってしまうから、父は生まれるまで隠し通したかったのだろう。


後は、単純に母を恐れたのだと思う。仮にも妻の後ろ盾をしているのは将軍。その妻を差し置いて別の女性との間に子供が・・・となれば夫婦間、そして将軍との関係にも亀裂が入りかねない。事実、歴史上ではそういう理由で隠し子が出家したり当主の座を奪われた側室の子(庶長子)などが数多くいる。


「あの人は本当にこういうところは臆病なのね。今回は女子だったから良かったけれど、もし男子だったら・・・」


母の目がギラリと光る。怖い、俺が殺されそうになる。


「この子は妾が育てるわ。貴方とはあまり会う機会はないだろうけど、しっかりと面倒を見るのよ」


あの〜〜今の現状を分かっていますか?面倒を俺が見るとか、そういう状況ではないんだけれど。


でも、妹か。前世にも前前世にも妹も弟もいなかったな。常に末っ子だった俺にとっては新鮮だ。


『目元なんかが主に似ているな』


「うわ、白虎!?」

「白虎?」

「あ、いえ、何でも無く」


驚かせるなよ!


『久しぶりですな、主』


俺が常に付けている短刀、白虎。前世からの仲であるが・・・それにしても今まであまり話しかけてくれなかったじゃないか。


『ポチとはよく話していたぞ』


それなら俺に話しかけてもいいじゃなかったのか?


『どうにも戦略だの、戦術だの、内政だの。退屈すぎるんだ、ガハハハ!』


相変わらずの戦闘狂だ。


『この刀はもの凄く居心地が良いのだが・・・良すぎて常に眠気に襲われている。そのせいで、ついつい寝てしまい、気付いたら一年ぐらいだな』


そんぐらいになるのか、最後に話した時から。神様に作り変えてもらった刀なだけあって、白虎でも力が出しづらいのか。


『会話は何故か聞こえているぞ。だから、主の初の妹を見てみたいから、今回は何とか頑張って起きた』


なるほど、戦争が始まるから起きたわけじゃないのか?


『いや、そういうこともあるかも知れない。ガハハハ!』


「どうした、孫犬丸?」

「あ、いえ、何でもございません」

「・・・急に黙ったりして、そういうところよ。だから貴方は当主として殿から期待されないの」


急に話をぶっ込んできた。


「貴方を呼んだのは、別にこの子を見せるためじゃないわ。今回の家督の件よ」


薄々はそうだろうなとは思っていた。わざわざ俺をここに来させたのだから、何かしら家督の件の話だろうとは思った。


「本当にこの家は愚かよ。十年程前に内乱が起こったというのに、また同じ事を繰り返すなんて」


うっ、返す言葉もありません。俺だって起こらないように努力はしたんだけど、まさか父がこんな事になるは想像していなかった。


いや、最初から全力で自分をアピールするべきだったのだろうか?暗躍せず、俺が次期当主としてしっかりと振る舞っていれば・・・いやいや、結果的には同じ、むしろ今回の方が良かったのかも知れない。


俺が暗躍した理由は、基本的には父と対立をしないため。

武田義統という男の性格は知っているからこそ、もし嫡男である俺が目立ってばかりいると家督をすぐに奪われる危険があり、俺を敵視して結果的に親子内乱が起こっていただろう。

残念ながら、若狭武田家というのは肉親で対立しやすい家なのだ。


どちらにしろ内乱が起こっていた。だったら、結果的上手く本当の敵である別の転移者から存在がバレないようになっているなら、暗躍するという判断は良かったと思う。信頼できる家臣の選別もできるし。


『主はもう少し自分の判断に自信を持った方が良いぞ』


そうだな、白虎の言う通り。


「ただでさえ幕府が揺らいでいるというのに、味方である京北武田家が揺らいでいては三好などの思う壺よ。単刀直入に言うわ。孫犬丸、貴方は出家しなさい」

「奥方様!」

「貴方はだまりなさい、和丸。これは母と子の話し合いよ」

「そうではありません!家臣である我々の問題でもあるのですよ!家督争いというのそういうものです!」


珍しく和丸が声を荒げているな。まあ、それだけ理解しがたい提案なんだ。


「和丸、俺は大丈夫だ」

「しかし、」

「母上の言う通り、母と子の話だ」


俺の目を見て和丸は引き下がってくれる。


「母上、結論から先に申し上げますと、その提案は受け入れがたいものです。絶対に俺は当主にならなければいけません」

「何故?」

「俺が、天下統一をするためです」


俺がそう真面目に言うと、鼻で笑われる。


「男どもはそうやって無謀なことを考える」

「いえ、無謀ではございません。事実、この武田家はここまで大きくなりました」

「それが貴方のお陰だと」

「俺だけとは申しませんが、ここまで大きくなれたのは父上だけの力ではございません」


俺を含めた難波江組、その他熊谷や粟屋、皐月、吉郎など、多くの人の助けがあって暗躍したからこそ、京北武田家がある。

それは紛れもない事実である。


「俺は俺を信じた家臣と仲間、そして日ノ本の為に天下を取らなければならないのです」


この時代に間違ってきた転生者として。


「はぁ〜〜〜、本当に貴方達は愚かよね」

「貴方達?」


何処か含みのある言い方をする母は、何故か悲しそうな表情を浮かべる。


「ねえ、孫犬丸。貴方は家族について、どう思っているの?」

「それは・・・」


その質問に言葉が詰まる。


俺にとって一番の家族は、前前世の両親だった。前世の両親は本当にクズであり、特に肉親と思ったことはない。今世の家族は―――


「分かりません。俺達家族の仲は良くも悪くもないので」


他愛もない会話を話すことはある。でも、お互い関わろうとしてきたことはない。父は俺を気にかけないし、母は息子たちに無関心、異父兄は俺を敵視している。

これが正常とは言わないが、この時代では別に普通の事だと思う。いつ、誰が敵になるか分からないから。


「妾はね、別に貴方他に無関心ではないわ」


俺の心を読んだかのように言われる。


「妾は貴方達の母親である前に、武田家の正室である前に、将軍の娘である妹。その肩書きは、決して軽くはないわ。一番に考えなければいけないのは将軍家、そう小さい頃から教わって染み付いている」

「だから息子に無関心と?」

「そう、思われてもいいわ。あくまで私は将軍家を支えるための柱、を繋ぎ止める紐に過ぎないから」


そう言われると、俺も反応に困る。この時代の女性の扱い方は、確かにあくまで政治の道具に過ぎないから。将軍家の娘だと、より意味が深まってくる。


「本当は息子二人に血を流し合ってまで争って欲しくないわ。腹を痛めてまで産んだ二人なのだから」


母は続ける。


「女である妾は愚かな男どもの政治に口出しはしないわ。でも、できれば話し合いで解決しなさい」

「話し合い???」

「龍水丸とは既に話したわ。あの子も食い下がらない、貴方も家督を狙うつもり。内乱は起こってしまうわ」

「それは・・・」

「母としてのお願いよ。血を分けた兄弟、最後ぐらいは話し合いなさい。それで決まらなかったら、戦場で決着なさい」


そう言われて、俺は頷くことしかできなかった。



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