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久しぶり

一五六四年 永禄七年 十二月下旬 若狭国難波江城




「やあ、久しぶりだな」

「お久しぶりでございます」

「大変だな」

「大変でございます」


ニヤニヤと話しかけてくる一色義忠。その横に座る稲富祐秀はその言葉を諌める。


「そのようなことを言うものではありません」

「言ってもいいだろ?何せ自分の家を実質潰されたのだから」


その返しには俺も苦笑いを浮かべるしかない。確かに京北武田家が丹後一色を倒して守護の座を降ろしたのだから、喜ばれても仕方がないと思う。


「まあ、予は別に気にしていないがな。今の生活には満足している」

「そう思っていただけているのなら安心です」


初めて会った時よりも大分ふっくらとしており、光秀の報告を聞いている限りでは毎日楽しい日々を過ごしているとのこと。最近は茶道にハマっているらしく、メキメキと腕を上げているらしい。

・・・まあ、俺には関係のないことだ。


「まあそういう訳で、お前が当主にならないと予の今の安寧が無くなってしまうから。だから予としてはぜひお前に肩入れしようと思う」

「それは、ありがとうございます」

「け、けして九郎の為ではないからな」


何故九郎の名前が出てきたのかは分からないけど、とりあえず一色家が味方になったことは大きい。これで丹後の指示を得られやすくなった。


「稲富殿もこちらを支持されると?」

「もちろんでございます。一色家を救っていただいた御恩、ここで返さないわけには行きません。戦があったら、同志達を集めて必ず参戦します」

「それはありがたいが、そうならないように頑張らなくてはな」


とりあえずは胸を撫で下ろすことができる。この二人の言葉は大きいから、丹後大部分を味方にできるからな。あっちで取りまとめている叔父にも良い牽制ができる。



一色義忠との会談の後、俺は久しぶりに九郎と八郎に会った。光秀とは良く会っているが、向こうで警備などの仕事をしている二人とはあまり会うことはなく、おそらく半年ぶりぐらいだろう。

ただ、二人の恋模様は常に見張っており、未だに発展が進んでいないのには腹が立っている。


「久しぶりだな、九郎、八郎」

「お久しぶりでございます、孫犬丸様」


八郎は相変わらず礼儀正しく挨拶をするが、どうしてだか九郎の方はムスッとしている。


「どうした、九郎?」

「・・・・・・」

「何か言いたいことがあるのか、九郎?」

「・・・やめろ」

「??????」

「その九郎って言う呼び方をやめろと言っているんだ!もう俺には忠常っていう立派な名前があるんだ――――イテッ!」


九郎が言い終わる前に、八郎の拳が九郎の頭に降り注いだ。


「何すんだよ、兄ちゃん!」

「失礼だぞ、九郎」

「兄ちゃんも何で九郎呼び何だよ!いっつもみんなから九郎って呼ばれていてやなんだよ!武士らしくない」

「和丸様は今でも幼名で呼ばれているじゃないか」

「和丸様は武士っぽく無いから良いんだよ」


おっと、本人がいないからって・・・・勝手にディスられて和丸は可愛そうだな。


「僕だって八郎呼びだぞ」

「うっ、そうだけど・・・」


はぁ〜〜〜、中々引き下がらない九郎。体と年齢は大きくなっても、性格は子供のままだな。でも、その腕前は今では武田家で一、二を争うのだから恐ろしい。


「おい、二人共。また昔のようにげんこつを喰らいたいのですか?」


二人の会話を止めたのは、俺の後ろに控えていた重政。流石に圧を感じ取ったのか、一瞬で沈黙をする。


「孫犬丸様、どうぞ」

「ああ、ふざけている時間はないな。二人共知っていると思うが、俺の父が何者かによって襲撃され、危篤状態だ。もしかすると、家督争いになるかもしれない」

「戦争か!」


嬉々とした表情を浮かべる九郎。


「「九郎!!!」」

「二人共、別にその可能性は十分あるのだから、咎める必要はない」


俺は話を続ける。


「未だ誰が敵か味方か分からな現状、最も警戒すべきは何か分かるか、九郎」

「そりゃあもちろん、国外の勢力だろ」

「ああ、それともう一つ。八郎」

「内部の他勢力―――傘下に下った元敵の内乱」


俺は大きく頷いた。

家督争いというのは、本当に全てを失いかねない危険なことだ。過去の若狭内乱しかり、他家を見ても周りから介入されて落ちぶれた名門は数多くいる。ここで崩れたら元も子もない。天下なんて狙えない。


「気にするべきは、三好と浅井だ。そこで二人には、その二勢力への監視をしてもらいたい。八郎は浅井を、九郎は三好をそれぞれ担当してくれ。もし仮に動いてきた場合、すぐに知らせてくれ」

「ちょっと待ってくれよ!」


俺の言葉に待ったをかける九郎。


「家督争い中、ずっと監視をしないといけないのか!」

「ああ、そうなるな。八郎は近江に、九郎は丹後で活動してくれ」

「嫌だぞ!俺は戦でもっと名を上げて―――イテッ!」


また八郎に叩かれる九郎。

まあ、この所平穏だったから鬱憤が溜まっているのは仕方がないな。武士というのは戦場に出て戦うことにしか無い奴もいる訳だし、九郎はそういう部類なのだろう。


「お前の言いたいことは分かる。だがな、今後お前は軍の中心になっていく存在だ」

「そ、それはそうだろ!だか―――」

「だからこそ、大将として腕を磨かなければならない。兵を率いる者が、何も腕っぷしだけしかないのは駄目だ。色々な経験を積んでこそ今後に生きていく」

「そうなのか?」

「ああ、俺はお前を成長させるためにこの役割を任せようと思ったんだ。信頼のできるお前にしか頼めない。引き受けてくれるか」

「そ、そこまで言うならやってやらなくもないな」

「よし、武士に二言は無いということで」


チョロいな。こういうタイプは褒めて持ち上げれば何だって頷いてくれる。俺も大分扱いに慣れてきたと思う。


「なあ、犬丸様は何をやるんだ?ずっと暇そうだけど」


こいつ、本当に失礼だな。

俺だって暇ではない。色んな所に指示を出しながら、これからについてほとんど毎日重政達と話し合う。何より難しいのが、来年に将軍で俺の伯父に当たる足利義輝が三好家に襲撃されて殺されることだ。


現状を見れば起こるかも分からないし、正史通りだから関与をする理由は本来はあまりない。でも、俺としてはそろそろ正史通りには進めたくは無いとっ考えている。


俺と同じような転生者、或いは転移者がこの時代にいる。まだ出現したかは確定では分からないけど、必ず俺の命を狙ってくる。


知識量ではもしかすると俺よりもあるかもしれないからこそ、そのアドバンテージを無くす。そのために正史を壊す。神が言うには、ぐちゃぐちゃになっても天下さえ統一されれば戻すことができるらしいし。


とりあえず、色々と策を練らなければならない。・・・本当に暇じゃない。




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