家督
お久しぶりです!とりあえず前回の続きからですが、時間が空いているので忘れていたらぜひ一話前も読んでください。
それと、今後についてなどの事を近況報告に書いたので読んでみてください。
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「重政、状況は」
落ち着いた重政は厳しい表情をしている。俺も流石にこの事態には動揺を隠せない。別に父とは仲が良いわけではなく、本当の親ともあまり感じていない。
ただ、それでも育ててくれた恩はあるし、何より今後起こることを想像して落ちついてはいられない。
「誰に刺されたんだ?」
「順を追って説明します。まず、御館様が刺されたのは山城と近江の国境あたり。数は不明ですが、護衛の話だと十人以上はいたとのこと。忍びなのか盗賊なのか・・・・一つだけ分かっていることは、西の言葉で話していたらしいです」
「つまり六角だったりでは無いということか」
「おそらく」
俺の中で真っ先に浮かんだのが、三好と六角だった。どちらもうちと隣接していて動機も十分。精鋭を雇える財力もある。
「刺された御館様は、泊まる予定であった田屋家の屋敷で治療を受け、症状が少し和らいでから若狭に帰ってきたとのこと。ですが、その移動のせいでまた悪化してしまいました」
「何で田屋家で治療に専念を・・・・!!!」
「ええ、そうです。もちろん、犯人が誰か分かりません。田屋明政殿も信用はまだできませんから」
当たり前か。当主が殺されそうになった以上、家中内でさえ犯人がいるかも知れない。まだ新参で渋々裏切った家にいるよりは、無理してでも安全なホームに帰ったほうが良いという判断だったのだろう。
「はぁぁーー、まさかこんな突然起こるとは」
正直、イレギュラーな事態への対処は何もしていなかった。何処かで、俺が掻き乱したところ以外は史実通り行くだろうという慢心があった。
でも、もちろん歴史は変わってくる。
「孫犬丸様、とりあえず、小浜に向かいますか?」
「・・・・・・どうするべきか。重政、意見をくれ」
思うように頭が働かない。それなりに動揺している自覚はある。
「既に和丸が向かっております。御館様の状態の確認と家中の内部調査のためです。ですから、すぐに行くべきかどうかは分かりません。そこを狙って、孫犬丸様が襲われる可能性も考えられます」
「そうだな、襲った犯人が分からない以上、むやみに動いたら同じように襲われるかもしれない。半兵衛はどう思う?」
俺は重政の後ろに座る竹中半兵衛に聞く。少し悩んだ後、答えてくれる
「最悪なのは御館様が亡くなられて家督争いになることです」
「半兵衛殿!不謹慎ですぞ」
「重政、構わない。続けてくれ」
俺だってその可能性を頭に入れている。
「その場合、まず大事になるのは誰が敵で誰が味方かということ。それをはっきりさせるためにも、小浜に行くのが一番よろしいと思います」
そうだよな、現時点での敵味方をはっきりさせなくては。
真っ先に味方として名前が上がるのが、内藤、粟屋、熊谷、一色、それと難波江にいる人々。それにプラスで、近衛と土御門、敦賀朝倉辺りも大丈夫。
問題は六角家がどう動くか。俺と六角承禎とはそれなりに知った仲だが、だからと言って向こうがこちらをよく思っているとはいえない。むしろ内紛に火を付けてくるかもしれない。
「・・・とりあえず、浅井家及び田屋家、元浅井家家臣の動向は監視しておいてくれ」
「ええ、もちろん。特に浅井賢政については、常に監視をつけております」
この内紛に乗じて独立をする恐れもあるからな。
「戦支度まではしなくていいから、とりあえず何があっても動ける準備をしておいてくれ」
「「「ははっ!」」」
部屋にいる全員が大きく頷いた。
三日後
父の知らせを聞いて早三日。未だに難波江から動けていない状態である。
もちろん俺にも会いたい気持ちはあるが、情勢が許してくれない。
現在、小浜に義頼(龍水丸)陣営が居座っており、難波江から小浜に行く道中を通行止めにして俺達を通れなくしている。むろん適当な理由をつけてだ。
今把握できる限り、難波江と小浜の中間にいる本郷氏、大飯郡一の領地を持ち武田家重臣である武藤氏、遠敷郡の膳部山城の松宮氏などが義頼方に付いた。
他には丹後の二割程の豪族も義頼付くと思われる。
・・・中々の量だと思う。まあ、俺の認識なんて『あくび様』で止まっているのだろうし。
「孫犬丸様、近衛家からの書状を」
「ああ、光秀。忙しいのに、わざわざありがとう」
「いいえ、この緊急事態に拙者だけ何もしない訳には行きませんから」
俺は渡された書状に目を通す。そこには俺を支援する旨の内容が書かれていた。これさえあればより有利に進められるだろう。
「光秀、お前の目から見て何かあるか?」
「・・・・・・」
「遠慮はする必要はない」
「・・・では、一つだけ。武田大学助(信方。正六位下)様には少し気をつけられたほうが良いと思われます。拙者の目から見て、危険です」
「叔父上がか?」
確かに少し危ない目をしている。いつか兄である俺の父に代わろうとしているのは薄々と感じ取ってはいた。
「今のところは特にどちらに付くかを表明はしておりません。もしかすると、このまま静観し続けるかも分かりませんし、漁夫の利を得ようとするかもしれません」
「とにかく気をつけておけと」
「はい」
そうだな、イレギュラーとして頭には入れておいたほうが良いのだろう。
「あ、それともう一つ。京に行って感じたことなのですが・・・三好にも気をつけるべきです」
「三好?まさかもう動いているのか?!」
「いえ、まだそのような情報はありません」
そうか、それは良かった。この段階で動いているとなると、父を襲ったのは三好な気がするが――――しかし、それは無いとは思う。今は内部で分裂しているというのに、こちらに構っている余裕はあるのだろうか?いや、逆に侵攻されないために・・・
いろいろと可能性を考えてしまう。
「とりあえず、全てを警戒するということだな。たとえ味方の可能性があっても」
「仰るとおりです」
傍らで控えていた重矩が大きく頷いた。彼の他に、俺の部屋にいるのは、光秀、重政そして員昌。それ以外の全員が各地を走り回っている。
「!!!そういえば、お伝えし忘れたことがございました」
憔悴した表情を浮かべて書状を書いていた重政が、顔を上げる。
「一色権少納言(義忠)様から今朝、お会いしたいという書状が届いておりました。申し訳ございません、お伝えするのが遅くなり・・・」
「いや、お前は忙しいのだから無理しなくて良い」
子供も成長真っ盛りだというのに、毎日泊まり込みで俺のところにいるのだから大変だろう。
「それよりも一色か」
今更何か話すことがあるのか?まあ、俺よりも位が高い人だし会わないわけには行かない。と、言うことで二日後に俺の屋敷に来ることになった。




