『君と過ごす夏』第9話『二人の帰り道』
「私の家、こっちだから」
そう言って歩き始めると、葵はどこか嬉しそうに私の隣を歩いていた。
「美琴の家ってどんなところなんだろう?」
「普通の家だよ」
「えー、もっと教えてよ!」
「教えるほどのことじゃないって」
そんな他愛のない会話をしながら歩いていると、時間が過ぎるのはあっという間だった。
さっきまで知らない人だったはずなのに、今ではこうして自然に話している。
そのことが、少し不思議だった。
やがて家に着き、私は鞄から鍵を取り出す。
「ここが私の家」
鍵を開けて扉を開く。
「どうぞ」
「お邪魔します!」
葵は元気よくそう言って、家の中へ入った。
その姿を見て、私は思わず少し笑った。
「こっち。私の部屋」
部屋へ案内すると、葵は辺りを見回しながら興味深そうにしていた。
「飲み物を取りに行くけど、何か飲みたいものある?」
「何でもいいけど、麦茶とかあれば嬉しいな!」
「分かった。取ってくるね」
私はそう言って部屋を出た。
リビングへ向かいながら、ふとスマートフォンを見る。
母からの着信履歴が、まだ残っていた。
「……先に学校に連絡しないと」
私は担任の泉先生に電話をかけた。
「はい、泉です」
「三年一組の水無瀬美琴です。今日は連絡も入れずに休んでしまって、申し訳ありませんでした。実は、体調が悪くて……」
「水無瀬さん、まずは体調に気をつけてください。もし体調が悪いときは、早めに学校へ連絡してくださいね」
「はい……ありがとうございます」
先生の言葉に少し安心して、私は電話を切った。
それから麦茶を二つのコップに注ぎ、家にあったお菓子をいくつか持って部屋へ戻る。
「遅くなった」
「全然いいよ~! 麦茶持ってきてくれてありがとうね!」
葵は嬉しそうにコップを受け取った。
「わあ、お菓子もあるんだ!」
目を輝かせる葵を見て、私はまた自然に笑っていた。
こうして私たちは、並んで麦茶を飲みながら、少しだけ休憩することになった。
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