『君と過ごす夏』第7話『今日という一日』
私は、少しだけ何かが変わった気がした。
何が変わったのかは、まだ分からない。
ただ、葵と一緒にいると、不思議と心が動く。
嬉しい。
楽しい。
少し恥ずかしい。
そんな感情が、次々と胸の中に浮かんでは消えていく。
今までの私は、何をしても、何を言われても、心が大きく動くことなんてなかった。
周りの人が笑えば笑う。
悲しんでいれば心配する。
でも、それは相手に合わせていただけだった。
なのに、葵と出会ってからは違った。
「……私、葵に助けてもらってばっかりだね」
ぽつりと呟く。
「そうかな?」
「うん。最初は私が葵を助けたのに、気づいたら私のほうが助けてもらってる」
葵は少し考えるように首を傾げて、それから笑った。
「じゃあ、お互い様だね」
「……お互い様?」
「うん。美琴が私を助けて、私が美琴を助ける。それでいいんじゃない?」
その言葉を聞いて、胸の奥が少し温かくなった。
「……そうかもね」
気づけば、私は笑っていた。
すると葵が、嬉しそうに私を見る。
「美琴、笑顔になってるね」
「え?」
「その顔もいいと思う」
その瞬間、私は気づいた。
私は今、人前で笑っている。
誰かに合わせるためでもない。
相手を安心させるためでもない。
自分が、嬉しいと思ったから。
自分が、楽しいと思ったから。
私は今、嘘偽りなく笑っている。
それが、なんだか不思議だった。
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