『君と過ごす夏』第6話『初めての笑顔』
「……え?」
頬を伝った涙に、自分でも驚いていた。
どうして泣いているんだろう。
悲しいわけじゃない。
むしろ、嬉しかった。
でも、その理由を自分の言葉で説明することはできなかった。
そんな私を見て、彼女は少しだけ不安そうな顔をした。
「……大丈夫?」
「え……」
「どうして泣いてるのかは分からないけど……大丈夫じゃないなら、無理しなくていいよ」
そう言って、彼女はそっと私を抱きしめた。
突然のことに、私は何も言えなかった。
ただ、彼女の体温だけが伝わってくる。
温かい。
それは、今まで感じたことのない温かさだった。
誰かに心配されること。
誰かに何も求められず、ただ寄り添ってもらうこと。
こんなにも温かいものだったんだ。
「……温かい」
思わず、そんな言葉がこぼれた。
彼女は少しだけ笑って、
「うん。人って、温かいんだよ」
そう言った。
その言葉を聞いて、胸の奥が少しだけ軽くなった。
気づけば、涙は止まっていた。
代わりに――
「……ふふっ」
小さな笑い声がこぼれた。
自分でも驚いた。
私は今、笑っている。
誰かに合わせるためでもない。
相手を安心させるためでもない。
ただ、嬉しくて。
ただ、温かくて。
自然に笑っていた。
それが、私にとって初めての笑顔だった。
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