『君に出会う前の夏』第2話『終わらない夏休み』
毎朝、同じ時間に目を覚まし、制服に袖を通す。
窓の外では、今日も蝉が休むことなく鳴いている。
その声を聞くたびに、「今日も一日が始まるんだ」と、少しだけ気持ちが重くなった。
毎日学校に行き、補習を受け、週末には模試を受ける。
帰ればまた机に向かい、受験勉強をする。
そんな毎日が、いつしか当たり前になっていた。
昔から私は体が弱い。
少し無理をするだけで熱を出しやすく、それでも周りに迷惑をかけたくなくて、「大丈夫」と笑ってしまう。
人の気持ちは、不思議なくらいよく分かる。
友達が笑っていても、その奥にある不安に気づいてしまう。
先生が励ましてくれても、その言葉の裏にある焦りを感じ取ってしまう。
誰も悪くない。
それでも私は、相手の気持ちを考えすぎるあまり、自分の気持ちを後回しにしていた。
だから、人が当たり前に楽しめることを、私は心から楽しめたことがほとんどない。
笑っていても、本当に笑えているのか分からない。
友達と過ごす時間も、学校行事も、どこか遠い世界の出来事のように感じていた。
気づけば、自分が何をしたいのか、何が好きなのかさえ分からなくなっていた。
人の気持ちは分かるのに、自分の気持ちだけは分からない。
そんな毎日を、私はただ繰り返していた。
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