『君に出会う前の夏』第1話『夏になると、蝉の声が聞こえる』
夏になると、決まって蝉の声が聞こえる。
私は、その声が嫌いだった。
生きようと必死に鳴いているその声は、何もかもを諦めていた私には少し眩しすぎたから。
──あの日までは。
高校三年生、最後の夏。
窓の外では、朝から蝉が休むことなく鳴き続けている。
カーテンの隙間から差し込む日差しは強く、まだ朝だというのに部屋の空気はもう夏の暑さをまとっていた。
世間では「夏休み」と呼ばれる季節。
テレビでは旅行や花火大会の話題が流れ、電話の向こうの友達も「夏らしいことがしたいね」と笑っている。
だけど、受験生の私には、今年の夏にそのようなことをする余裕はなかった。
毎日のように続く補習と、週末にある模試。
今年の夏も、勉強だけで終わっていく。
そう思うと、不思議と何も感じなかった。
期待もしない。
楽しみも特にない。
ただ今日を終えて、また明日を迎えるだけ。
そんな毎日を繰り返していた。
このときの私は、まだ知らなかった。
たった一つの出会いが、この夏を、そして私自身を変えることになるなんて思わなかった。
茶葉と言います‼小説の投稿をしていくので今後ともよろしくお願いします‼
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