『君がくれた夏』第17話『帰り道』
バスの窓から流れていく景色を眺めながら、私は葵と並んで座っていた。
四日間の旅行も終わって、今は家へ帰る途中。
窓の外には、見慣れた街の景色が少しずつ増えてきていた。
「四日間って、あっという間だったね〜」
葵が、少し寂しそうに言った。
「うん。本当に早かったな」
「初日は遊園地だったよね!」
「そうそう。あのジェットコースター、葵が最初は怖がってたの覚えてるよ」
「怖がってないよ〜!」
「いや、乗る前に『これ大丈夫かな……』って言ってたじゃん」
「それは……ちょっとだけ確認してただけ!」
葵が頬を膨らませる。
その顔がおかしくて、私は思わず笑った。
「でも、乗った後は楽しそうだったけどね」
「うん! すっごく楽しかった!」
葵は嬉しそうに笑った。
「そのあと、プラネタリウムも見たよね」
「うん。人工の星も綺麗だったけど……」
「夜に見た本物の星も綺麗だった」
「そうそう!」
二人で顔を見合わせる。
「山のログハウスで食べたカレーも美味しかったな〜」
「夏野菜のカレーね。あれは美味しかった」
「また食べたい!」
「じゃあ、今度また行こうよ」
「うん!」
葵は嬉しそうに頷いた。
二日目は都会を歩き回った。
いろんなお店を見たり、食べ歩きをしたり、神社に寄ったり、カフェでゆっくりしたり。
「二日目は結構歩いたよね」
「美琴、途中で疲れてなかった?」
「ちょっとだけ。でも楽しかったから平気だった」
「そっか」
「葵こそ、ずっと元気だったじゃん」
「私は元気なのが取り柄だからね〜」
「ふふっ」
三日目は、満開なひまわり畑。
一面に広がるひまわりを見ながら歩いたこと。
お揃いで買ったひまわりのペンダント。
そして、夏祭り。
「三日目は、やっぱり夏祭りが一番印象に残ってるな」
「私も!」
「花火も綺麗だった」
「浴衣も奇麗だったよね」
「うん。どちらもすごく綺麗だったね」
葵が窓の外を見ながら、少しだけ目を細める。
「写真もいっぱい撮ったよね」
「撮ったね。帰ったら整理しないと」
「一緒に見ようよ!」
「うん。一緒に見よう」
そして四日目。
海。
青い海と、雲一つない青空。
波の音を聞きながら、何度も海に入って遊んだ。
「海で食べた焼きそばも美味しかったな〜」
「海といえば焼きそば、だもんね」
「また食べたい!」
「じゃあ、また海に行かないとね」
「うん!」
葵は笑った。
私も笑った。
こうして振り返ってみると、本当にいろんなことをした。
遊園地。
プラネタリウム。
ログハウスから見た星空。
普段いかない都会。
満開なひまわり畑。
二人で浴衣を着て楽しんだ夏祭り。
そして海で何度も遊んだ。
どれも、たった四日間の出来事なのに、ずっと前から一緒に過ごしていたような、不思議な感覚があった。
「……楽しかったね」
私がそう言うと、葵は優しく笑った。
「うん。すっごく楽しかった」
しばらく二人で窓の外を眺める。
そして葵が、ふと思い出したように言った。
「ねえ、美琴」
「ん?」
「また一緒に遊ぼうね」
「……うん」
私はそう答えた。
もちろん、また遊べると思っていた。
だから、いつものように笑おうとした。
なのに――
胸の奥に、小さな違和感が残った。
どうしてだろう。
ただ「また遊ぼう」と言われただけなのに。
その言葉が、なぜか遠く感じた。
まるで、「また」が来ないような。
そんな気がした。
私はその理由を考えながら、もう一度、窓の外を見た。
夏の景色が、ゆっくりと後ろへ流れていった。
茶葉と言います‼小説の投稿をしていくので今後ともよろしくお願いします‼
広告の下にある☆☆☆☆☆から、作品の率直な評価をよろしくお願いします。
また、『ブックマーク追加』と『レビュー』も一緒にして頂けると、大変助かります。
コメントもぜひお待ちしております‼




