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『君の夏を書き継ぐ。』  作者: 茶葉


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14/21

『美琴と葵の旅行』第14話 君と過ごす都会での一日

朝。


葵より先に目を覚ました私は、軽く身支度を済ませると、朝ごはんを作ることにした。


昨日買った食パンに、ピザ用のチーズ、卵、ベーコン、マヨネーズを乗せ、トースターで焼いていく。


焼き上がるまでの間に冷蔵庫を確認していると、昨日のカレー作りで余った夏野菜とお肉が残っていることに気づいた。


「これ、まだ使えるね」


せっかくなので、それらを使ってさっぱりした煮込み料理も作ることにした。


料理を作っていると、時間はあっという間に過ぎていった。


朝ごはんをお皿に盛りつけようとした、そのときだった。


「……んぅ……」


振り返ると、葵が眠そうな顔をしながら起きてきていた。


「おはよう、葵」


「……おはよ~、美琴……」


まだ眠そうに目をこすりながら、葵はテーブルの上に並んだ朝ごはんを見る。


その瞬間、眠そうだった葵の目がぱっと輝いた。


「わぁ……! 朝ごはん作ってくれたの?」


「うん。昨日の残りもあったから、それも使ってみた」


嬉しそうに料理を見る葵を見て、私は思わず、


――可愛い。


そう思った。


けれど、その言葉を口にすることはなかった。


二人分の料理をお皿に盛り、食べられる準備ができたところで、向かい合って座る。


そして二人で顔を合わせ、


「いただきます」


そう言って、朝ごはんを食べ始めた。


一口食べた葵は、すぐに嬉しそうな顔をする。


「美琴! これ美味しいよ! 美琴、料理ほんとうまいね~!」


「ありがとう~。家で料理してた甲斐があったかな」


「うん!」


葵は満面の笑みで頷いた。


そんな葵を見ながら、私は自然と笑っていた。


朝ごはんを食べながら、私たちは今日の予定について話し始めた。


昨日の一日目とは違って、今日は普段ならほとんど行かない都会へ向かう。


人も多いだろうし、行きたい場所もたくさんある。


「ちゃんと予定を決めておいたほうがいいよね」


私はそう思いながら、葵と相談していった。


話し合った結果、駅に着いてから和菓子やスイーツを楽しみながら有名な神社へ行き、その後は気になったお店があれば入ってみることにした。


細かい予定を詰めすぎず、その場で見つけたものも楽しむ。


そんな一日にすることにした。


朝ごはんを食べ終え、荷物をまとめる。


ログハウスをあとにした私たちは、電車に乗るまでの間も、


「どんなスイーツ食べたい?」


「私はクレープ食べたいな~」


「私は和菓子も食べたいかも」


そんな話をしながら歩いていた。


そして気づけば、もう電車の中だった。


そこからはあっという間だった。


窓の外の景色が少しずつ変わっていき、見慣れない建物が増えていく。


そして――。


「着いたね」


都会の駅に降り立った。


駅を出た瞬間、私は思わず周囲を見渡した。


「……人、多いね」


「ほんとだね~!」


想像していた以上に人が多い。


少しでも離れたら、すぐにはぐれてしまいそうだった。


私と葵は顔を見合わせる。


「……手、繋いどく?」


「うん。そのほうが安心かも」


昨日も繋いだ手。


それでも、今日は少しだけ違う気がした。


そんなことを考えながら、私たちは手を繋いで目的地へ向かった。


少し歩くと、たくさんの出店や屋台が並んでいた。


色とりどりの食べ物が並ぶ中、最初に目に入ったのは――いちご飴だった。


「美琴!いちご飴あるよ!」


「ほんとだ!食べよっか~」


「うん!」


屋台の前には思っていたよりも長い列ができていた。


けれど、葵と話していると時間はあっという間に過ぎていった。


そして、ようやく私たちの番になる。


いちご飴を受け取って、一口。


「……美味しい」


「美味しいね~! いちご飴、絶対食べたかったんだ~!」


葵は嬉しそうに笑う。


「私も食べたかったんだよね。甘いの好きだからさ。結構楽しみだったんだけど……美味しかった~」


その後も、クレープやアイスを食べながら街を歩いた。


普段なら、こんなに食べ歩きをすることなんてない。


でも今日は、不思議なくらい楽しかった。


しばらく歩いていると、近くにあったお店に入ることになった。


店内を見て回っていると、バッグにつけられる小さなクマの人形が目に入った。


どうやら、それに目を引かれていたのは私だけではなかったらしい。


葵が真っ先にその前へ向かう。


「美琴~! これ、お揃いにしない?」


「私も気になってたんだよね。どっちにする?」


二人でしばらく悩んだ。


そして最終的に選んだのは、白色に赤いリボンがついたクマの人形だった。


「これにしよっか」


「うん!」


二人で同じものを購入した。


店を出ると、それぞれのバッグにクマの人形をつける。


「お揃いだね!」


「お揃いだね!」


顔を見合わせて、二人で笑った。


その後、私たちは近くに有名な神社があることを調べ、そこ行くことにした。


私はスマートフォンだけではなく、持参したカメラも持ってきていた。


せっかくだから、二人で写真を撮りたかった。


神社に着くと、近くにいた人にお願いして、二人の写真を撮ってもらった。


「ありがとうございました」


お礼を伝えて、撮ってもらった写真を確認する。


そこに映っていた私は――。


とても自然に笑っていた。


以前の私なら、こんな笑顔をしている自分を見ることなんて、ほとんどなかったと思う。


葵と出会ってから、私は少しずつ変わっている。


不思議だった。


でも、不思議と驚きはなかった。


むしろ、


――変われたんだ。


そう思えたことが、少し嬉しかった。


神社では、お守りも買うことにした。


たくさん並んでいるお守りを見ながら、私はあるものに目を止めた。


縁結び・恋愛成就のお守り。


私は、もう自分の気持ちに気づき始めていた。


葵に惹かれている。


一緒にいると楽しい。


もっと一緒にいたい。


その気持ちを、私は少しずつ自覚していた。


だから――。


「これにしよう」


私はそのお守りを一つ買った。


後で葵に渡そうと思った。


一方で、葵も同じお守りを買っていた。


けれど、私はそのことをまだ知らなかった。


気づけば、もう昼になっていた。


私たちは近くにあったカフェへ入ることにした。


調べてみると、そこのパンケーキがとても美味しいと評判らしい。


先ほどまで食べ歩きをしていたこともあって、二人ともそこまでお腹は空いていなかった。


「一つ頼んで二人で食べる~?」


「うん、それがいいね~」


しばらくして運ばれてきたパンケーキには、たっぷりのメープルシロップとホイップクリームがかかっていた。


見るからに美味しそうだった。


パンケーキを眺めながら、私はふと今日一日を振り返る。


「今日も楽しいね!」


「うん!」


「こんなに楽しめたの、初めてだよ。本当にありがとうね、葵」


葵は少し照れたように笑った。


「こちらこそだよ。本当に楽しいもん! でも……自然に笑える美琴が見れて、よかったよ~」


「……そっか」


葵と出会ってから、まだそれほど時間は経っていない。


それなのに、人はきっかけがあれば、ここまで変わることができる。


私はそんなことを思った。


パンケーキを二人で分けながら、この後の予定を話す。


近くには見晴らしの良い観光地があるらしい。


そこへ行ったあと、少し買い物をして、予約していた旅館へ向かうことにした。


見晴らしの良い場所から見えた景色は、とても綺麗だった。


高さもあり、足元の一部が透明になっている場所では、


「ちょっと怖いね……」


「うん。でも、こういうのも楽しいね!」


と、少し怖がりながらも二人で楽しんだ。


その場所を後にした私たちは、今日楽しかったことや、美味しかったもの、嬉しかったことを話しながら街を歩いた。


そして、いくつかのお店を見て回り、買い物を済ませる。


気づけば、夕方になっていた。


旅館に着くと、受付で予約していた名前を伝え、部屋の鍵を受け取った。


「思ったより疲れたね~」


「うん……今日は全力で楽しんだからね」


部屋に入ると、二人とも荷物を置いて一息ついた。


順番にお風呂へ入り、せっかく旅館に来たのだからと、用意されていた浴衣を着てみることにした。


「美琴、似合ってるね~」


「葵もね」


「なんか旅館っぽくなったね!」


「ほんとだね」


そんな他愛もない話をしながら、二人で笑った。


しばらくすると、旅館で頼んでいた夕食が運ばれてきた。


二人で食事を楽しみ、お腹いっぱいになったところで、今日は早めに眠ることにした。


布団に入る前。


私は、バッグの中から昼間に買ったものを取り出した。


「葵」


「ん?」


「寝る前に渡したいものがあってさ。もしよかったら、受け取ってくれない?」


葵は少し驚いた表情をした。


「何がもらえるのかな?」


私は、昼間に神社で買ったお守りを葵へ差し出した。


「これ……」


葵はお守りを見る。


そして、その意味に気づいたのか、少しだけ頬を赤くした。


「……嬉しいよ。まさか、もらえるとは思ってなくて…」


葵はお守りを大切そうに見つめたあと、私を見る。


「そのお守りの意味って……美琴は分かって渡してるんだよね?」


「うん…」


私は少しだけ視線を逸らした。


「そういう意味で渡したんだ」


言葉にするだけで、顔が熱くなる。


「これ以上は恥ずかしいから言えないけど……その気持ちは、後日改めて言わせてほしい」


今までの人生で、一番緊張した。


心臓の音が、自分でも分かるくらい大きく感じる。


すると葵は、嬉しそうに笑った。


「実は私も、美琴に渡したいものがあったんだよね」


「え……?」


葵が取り出したものを見て、私は言葉を失った。


それは――。


私が今渡したものと、全く同じお守りだった。


「……同じだね」


「うん……」


二人とも、同じことを考えていた。


それに気づいた瞬間、言葉が出てこなくなった。


しばらく、静かな時間が流れた。


お互いに何かを言おうとしても恥ずかしくて言えない。


やがて私たちは、照れながらお互いのお守りを交換した。


「……大切にするね」


「私も大切にするね」


それだけを言って、二人で小さく笑った。


そして、眠る時間になった。


昨日と同じように、葵が私の布団に入ってくる。


「今日も一緒に寝てもいい?」


「……うん。いいよ」


布団に入ると、私たちは今日あったことを少しだけ話した。


「今日は楽しかったね」


「うん。明日も楽しみだね」


そんな話をしているうちに、疲れていたのだろう。


葵はあっという間に眠ってしまった。


私は昨日と同じだから、きっと今日も眠れる。


そう思っていた。


けれど――。


明日が楽しみで仕方がない。


そして何より、私は葵のことを意識してしまっている。


そのことに気づいてからは、なかなか眠りにつくことができなかった。


隣から聞こえる静かな寝息。


今日一日の出来事。


そして、交換したお守り。


いろいろなことを考えているうちに、いつの間にか私も眠っていた。


――こんなに楽しい日々が、ずっと続けばいいのに。


そんなことを思いながら。

茶葉(ちゃっぱ)と言います‼小説の投稿をしていくので今後ともよろしくお願いします‼


広告の下にある☆☆☆☆☆から、作品の率直な評価をよろしくお願いします。


また、『ブックマーク追加』と『レビュー』も一緒にして頂けると、大変助かります。


コメントもぜひお待ちしております‼

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