『君と過ごす夏』第11話『二人の今後の予定1』
「ねえ、葵」
「なに?」
「夏休みの予定って、何かあるの?」
そう聞くと、葵は少し考えてから答えた。
「今日から合わせて、五日間は特に予定ないよ!」
そして、少し照れたように笑う。
「美琴がいいなら……遊びたいけど」
「遊ぶ……か」
私は少し考えた。
明日からは四日間の補修がある。
どうしよう。
そう悩んでいると、葵が口を開いた。
「あくまで私の意見なんだけど……聞いてくれる?」
「うん。ぜひ聞かせて」
そう答えると、葵は少し安心したように息を吐いた。
「私はね、美琴のしんどそうな姿を見るのが、正直苦しい」
「……」
「だから……そんなに無理してまで、補修に行かないといけないのかなって思って」
葵は少し言葉を選びながら続けた。
「できるなら、補修を休んで心を休めてほしい」
そして、私の目をまっすぐ見た。
「このままだと、美琴が壊れてしまいそうで……」
その言葉を聞いて、私は黙り込んだ。
今までの私なら、きっと何があっても補修に行こうとしていた。
休むことは悪いことだと思っていたし、周りに迷惑をかけたくなかった。
でも――。
葵と出会って、人の温かさを知った今は、その言葉を否定することができなかった。
しばらくの間、部屋には静かな時間が流れた。
そして私は、ゆっくりと口を開いた。
「……そこまで考えてくれて、ありがとう」
葵がこちらを見る。
「葵と出会って、私は少しずつ変わってると思う」
自分の胸に手を当てる。
「だから、葵の話を聞いてから、私も自分自身と向き合って考えてみた」
少しだけ息を吸う。
「私……補修を休もうと思う」
「え……?」
葵は驚いた顔をした。
「補修、休んで大丈夫なの?」
「うん。たぶん、先生にはちゃんと謝らないといけないと思う」
私は少し笑った。
「でも、葵に言われたから休むわけじゃないよ」
「……?」
「葵の話を聞いて、私自身も考えたんだ。たまには、自分の心を休ませる時間も必要なんじゃないかって」
葵は少し黙ってから、優しく笑った。
「美琴が自分で決めたなら、私はいいと思うよ」
そして、
「無理してまで行くのは、きっとしんどいと思うし」
と言ってくれた。
その言葉を聞いて、私は少しだけ安心した。
今までの私なら、絶対に選ばなかった選択。
それを今、私は自分の意思で選んだ。
「じゃあ……」
私は葵を見る。
「今日からの五日間の予定、一緒に考えない?」
「うん!」
葵は嬉しそうに笑った。
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