9・古賀澤はるかの視点2・恋する乙女
赤い毛糸玉作戦に行き着いたのは偶然もあった。
以前、国木戸君の学校での活動を調べている時に、一度帰宅したはずの会長が戻ってきて乱入してきたことがある。
国木戸君の部活動記録、手芸部に入部した後女子だらけの活動について行けず三カ月で退部していたこと、校内でも浮いた存在で、だがその彼の特殊性ゆえに虐められることもなく独りでいることなどが、周囲の活動報告から類推できて、行間を読む楽しさにハマっていたので、少々我を忘れかけていたタイミングだったので、取り繕って挨拶をするのは少し苦労した。
会長は、私がなぜそこまで校内の情報を調べつくそうとしているのか理解できないと言った風で、私にそれを説明を求めてきたが、その場で思いついた伝統と格式の継承について…と出まかせを言ってその場を凌いだ。
会長は痛く感銘を受けたようで、僕も過去を振り返って生徒会長としての模範を個人ではなく崎高の生徒会長として体現すべきだ!と言い出したので、実直に育っているのだなと思った。
…まあ、有体に言って少しうざいかも…と思ってしまった、いけません。
会長に合わせて学校新聞の過去の記録を閲覧していると、「赤い糸の伝説」という記事に目が留まる。この学校も以前は女子高でそういったロマンティックな物語が娯楽の一つとして生徒間で囁かれる時代があったのだ…と思うと同時に、赤い糸と手芸部の用語が私の中でスパークした。
『これだわ!国木戸君を吊り上げる罠にして最高の餌だわ』
かくして、赤い毛糸玉の作戦に繋がったので、生徒会長には感謝しかない。
会長もその赤い糸の伝説自体に興味があったらしく詳しく読み込んでいたが、私は既にどうやって国木戸君を釣り上げるのか…の算段を組んでいた。
結果、赤い毛糸玉作戦は功を奏し、想定以上の結果をもたらせた。
何と、毛糸玉を回収した国木戸君は、その毛糸玉でクマのキーホルダーを作ってくれて、私にプレゼントしてくれたのです。
素敵すぎる結果です。
もうコレ公認カップル成立です!
ところが、トコロがあろう事に桝村生徒会長が乱入して私と国木戸君の仲を裂こうとするではありませんか!ハッキリ言って何が目的かわかりませんが、校則違反とは言い難い難癖で国木戸君の分、ペアアイテムになるはずのクマちゃんを取り上げたのですから…こんな横暴生徒会長でも許されません!
しかしそこで、更なる奇跡が起きました。
いえ、奇跡とか運頼みの様な安い言葉では言い表せない国木戸君の完璧な返し…
愛玩動物として愛でようと思っていた私の浅ましい策略も吹き飛ばす「それは会長に差し上げます。ボクはもう一つありますので、コレで皆んな友達ですね」
と、理不尽を上回る度量と許容、寛容で包み込んでしまったのです。
この時、私は国木戸健一君に本気で恋をしていたのです。




