40・桝村宗一郎の視点・生徒会長としての立場で述べる
「僕は、友人として皆と共に、国木戸君を支えたいと考えている…その上で、僕にしかない視点で語ることにするよ…」
古賀澤さんは、今回の一件を通して本気なんだなと…ベクトルがどういう方向を向いているのかは人それぞれだ。
普通は家庭の事情を知ったからと言って、その場合は「大変だね…」「同情するよ」「これから良いことあるよ」という凡百に表される言葉を並べて一線を画す。
彼女は違った…
僕たち学生は自分体の手の届く範囲は限られている。お金は多少のアルバイトなどで入手可能でも、責任ある立場で立ちまわることは叶わない…いや、叶わないと思っている。
だが、古賀澤さんは自分で全てを決めることなく、親、先生、大人の力も自分の用いる全ての情報と知恵を使って動かし、国木戸君を結果的に本来一番僕らにどうにもならない部分で救うことに成功した。
僕は生徒会長などと、学校内に収まった世界、組織からはみ出さず、システムが出来上がった中だけで天下を取って、優秀であると気取っていても何もなしていなかったことを思い知らされた。
それでも、父が僕の話を聞いて、過去に向き合うことになっても逃げずに付き合ってくれたのは僕の頼みだったからだと思いたい。それだけの信用を得る行動をしてきた評価だと思いたかった。
「生徒会長としては、成績を付け教科学力能力による優劣を評価し、競い合うことが学校としてのシステムで、その中で他人を蹴落とし競うだけでなく…優劣を超えた認め合う切磋琢磨が人間形成の礎となる組織としての…」
「カイチョー前置き長いで〜す…」
千鳥アキラがだるそうに手を挙げて僕の話を遮る…うむ。
彼女の風紀を乱す振る舞いは容認しかねる逸脱でしかないと思っていたが…ルールに従うだけが学生の本文では無いという体現なのだろう…このストレートの物言いも要点を早く言えという要望に他ならない
「まあ、崎高は学校としての名のもとに学生は等しく権利を持っていると言いたいのだ…だから、国木戸君の意志を尊重する義務が学校にはある。誰かを不幸にする、傷つけると言った自分本位でないならば、国木戸君本人が決めることだ」
「ソレって教師が言いそうな一般論ジャン…生徒会長視点か?ソレより桝村宗一郎はどう思ってんだよ…」
「うむ…一応肩書がある以上模範解答はして置かないとな…しかし、難しいな…個人の意見と言っても…立場を気にしない訳にはいかない。千鳥アキラ君の意見は至極真っ当だが…理解して欲しい。その上で僕としては……こ、ここのメンバーで独占したい」絞り出すように本音の片りんをひねり出す。
「それは一人で独占したいと言っているのと同じだな」
滅多に千鳥アキラ意外と話さないと思っていた鹿部ヒロキ君が開いた口から聞かされた言葉は…真実だった。
自分でその言葉から逃れようとして逃れきれずに誤魔化そうとした結果……避けようのない答えだった。だが、待て…
「そのセリフはそのままお返ししようじゃないか…国木戸君を外せば残る君と僕、二人の男性として問うが…鹿部君こそ国木戸君を独占したいと考えるからその発想が出るのではないか?」
「な…」表情がほとんど動かない鹿部君の動揺が伝わってくる。
絞り出す様な声で「質問を質問で返すな…」と言われる。それはそうだ。
そして一つの結論に到達する。
男がどうこうと言う話ではないのだ。
ここに居る皆が国木戸健一君を独占したいと願いつつ、ここにいる個性的なメンバーは不思議な縁で結ばれて、そう…言うなればチームとしての機能を共有している。
【クマとも】と名のついたこのグループが特別な連帯感と一つの目標にある意味競い合い協力し合う…だが、秘密を分かち合うのを独占する事に対する背徳感と高揚感…嗚呼、秘密結社等の組織のスタートなどはこんな感じかも知れない。
「僕たちの絆と、巡り合せの運命…それこそが、僕たちに課せられた使命かも知れない」
「言っていることの半分は分かるが、半分は理解しかねる」鹿部くんの冷静な反応は当然かも知れない。
「いや、ウチ分かるぜ!モンチが顔出しデビューしたらバズって社会現状になると思うもんねーだから、ウチらがモンチを守るって話だろ?」
「そ、その通りだ千鳥君…」そう言う世辞がらみは流石と言うべきか。
「わ、私だって、見守り隊なら負けません!……あ、ご、ごめんなさい」
「誇るべき事だ…と、思う」
花鶴くんの一言は僕には重い。
色々報告をもらっていた身としても、彼女の献身は計り知れない。
そう、様々な人が集まり様々な思想と嗜好、思考と試行を繰り返して影響し合って今がある。
古賀澤さんの試行は、恋愛に不器用な彼女の真面目さが反映されて、最後は家庭の事情迄巻き込んだ騒動に発展したわけだ。
「結果的には僕は国木戸君の行動と自由を生徒会長としても個人の桝村宗一郎としても全面的に支持すると言う話になるかな…結果的に特徴の無い回答になったが…本心だ」
「話長い割にフツーな話だよなぁ〜『オレ達ダチだから何時デモ味方』って言えばイイじゃん」
千鳥君の直感の様な思考は僕の様な考察を飛び越えて本質を掴んでいる…それも才能なのだろう。
「要約ありがとう、その通りだ」
そこで礼を言われるとは思っていなかったのか、千鳥君は少し驚いた顔をしてからニカッと笑う。
本当に不思議な巡り合わせだと思う。




