38・収束する世界
結果から言えば、母の癇癪で、真相を追求して誰かが逮捕されるとか訴訟問題になるとかの話も起きず、現状を大きく変えるような事態の変化はなかったが、少しばかりの慰謝料という奴で、僕の家の借金は無くなってしまった。
「なあ、健ち…ウチのせいで偉いことになってしまって悪かった…」
『モンチ』から『健ち』に僕の呼称はすこしだけ変わったけど、アキラさんはそこまで変わった印象はない。
「ア…アキラさんは、ボクのことを考えてくれたんですよね…う、嬉しかったので何の、問題もあり…ません…なんで鹿部君はそんなに怖い顔を…」
「あ?顔が怖いのは元からじゃハム助」鹿部君は、相変わらずアキラさんのボディーガードだ。アキラさんの虫よけと自分では言っている。
「あ、健ちゃんまた髪の毛切りにいつでも来てね…」花鶴さんは相変わらずだ。まさか彼女まで家の騒動に巻き込まれていたなんて…
「ねぇ~ビックリだよね…私、本でいろいろ勉強しているつもりだったけど、実際に起きている問題とか、そんな教本通りじゃないよね…」
「…みゆきちゃんは…な、何を目指しているの?」
「え?…やっぱり何か資格とかとって?将来に備えるとかかな…」
(ホントは健ちゃんのお嫁さんだけど…)ボソっといった言葉は僕には聞こえていない。
「僕は上に立って人を率いてみんなが幸せになる社会を作りたい…と思っているのは変わらない。父さんのやっていることは…正直厳しい目で見ないといけないと思う…僕は…今回の一件でいろんなことが実際起きているということを学んだ…理想ばかり追い求めるのはダメだが、だからと言って理想を捨ててもだめだと思うのだ…改めて、何を目指すのか考えることにするよ!」
桝村生徒会長は、そう言ってすこしだけ笑った。
よく言われる政治家の利権構造云々というのが身近にあったことに少なからずショックを受けている様だが、その言葉からはそれを乗り越えようという強い意志も感じで、それが会長っぽいなと思った。
借金は大部分が無くなった。だからと言って、生活は一変するほど変わる訳ではない。
まあ、僕は母親の脛齧りな息子なのは変わらないし、無駄を嫌う性格は体に染みついてしまっているし、大きくは変わらない。
古賀澤さんはあれ以降、その話題に触れるようなことはしていない。
【クマとも】のメンバーは結局親のすることをこれで知らぬ存ぜぬという感じには出来ないが、少なくとも学校生活上において、個人の資質を親の行動でどうこうではない…という話で、今後も変わらず…と言う形に一旦なった。
僕たちは少しは成長できたのであろうか…




