36・桝村宗一郎の視点・大人の話
校長室に案内されたメンバーは国木戸親子、千鳥アキラ、呼び出されてやってきた千鳥誠治、黒木サキ保険医そして父名が出たことで僕、桝村宗一郎も参席している。
因みに鹿部ヒロキは入室許されず部屋の前で不動で待っている。
「少々話が入り組んでいる様なので、僭越ながら私が介入させていただきます」
校長の天野幸三が出てきて仕切る。
観音崎高等学校は基本的に生徒の自主性を重んじる校風もあり、校長が何か中心になって動く様な事はあまり記憶にない。
「私としては、この一件に関して外からの干渉は受け付けるつもりはございません」国木戸健一君の母君は、頑なにこの一件から手を引けとわざわざ学校にまで来て訴えるのか…それも僕にはわからないことであった。
感情的にも見えるし、何かの秘密がある様にも見受けられる。
今回の場合は、子供の喧嘩に親が出るというより、親たちの確執を僕たちを立ち会わせさせている…?
「国木戸の奥さん、私は千鳥誠治と申します。旦那さんはお気の毒でした…彼とは若い時にちょっとした付き合いがありまして……彼のことはそれなりに知っているつもりです…今は、まあ、ヤクザ方面を得意とする弁護士をやっていましてね…ついでに道を踏み外した、もしくは外しそうなヤンチャどもの面倒も見る施設とかも経営させてもらってます」
「そのヤクザ屋さんが何の御用でしょうか?」
「いや、私はその方面に詳しいだけで組とは関係ないですよ」
「弁護士なんて皆ヤクザみたいなものです」
「辛辣ですな…まあ、全否定できるほどクリーンってわけでも無いですが」
「パパそこ笑いどころじゃねーし」アキラさんがツッコむ。
「ちょっと調べた感じでも、キチンと事故保険には入られていたようですし、保健会社からも支払いはされている…なのに奥さんにはそのお金が入ってないように見受けられますが」
「ですから、ほっといてくださいと言っています」
「息子さんも苦労しているようです、なぜそこまで頑ななのですか?」
「エミリア…貴女の問題だけじゃないんでしょ?」黒木先生(保健福祉士)は国木戸君の母のことを知っているのか?
「サキ…貴女にこんな形で再会するなんて…」
「奇遇ね…それとも運命かしら。あの時三崎になんて連れていかなければ…と思わない日はないわ」
「サキ、貴女とても素敵な友人だったけど、私が自分で選んだ道に貴女が介入したとは思って居ないわ。ソレに私には健一がいる。その事が全てなの」
すかさす千鳥パパが乱入する。
「奥さん、その健一君と二人で生きて行くために背負う必要の無い業を背負っていませんかね?」
「ソレも私が望んだ結果です」国木戸母はキッパリと言った。何故?
そこから語り出す国木戸家の話は僕の様な温室育ちの坊ちゃんに…と言わんばかりの現実を突きつけられた。




