34・古賀澤はるかの視点・残されたクマ
「アキラさんのお父様って弁護士だったのですね…てっきり…」花鶴さんが言いかけて
「おいおい、それは偏見というものだろう…」桝村生徒会長が冷静を装って留めるが、実のところ皆さん鹿部さんは堅気に見えず、アキラさんの破天荒さは家庭の事情と…言う点からも、同じ事を想像していたに違いありません。
かく言う私も、疑ったのですが…その事をパパに話した事がある。
「ウチの学校に筋金入りの悪の系譜が入り込んでないかしら?」
パパの眉がピクリと跳ね上がり、読んでいた新聞を置いて私に向き合う。
「はるか、聞きなさい。観音崎高等学校は名門だ。この国の総理大臣まで輩出している」
その先は語らずとも分かるだろう?と言う顔をする。
従ってアキラさんの身元はハッキリしている。
ソレでも花鶴さんの感想はよく分かる。
「アキラさんのお父様は立派な方でしたが、迫力がありましたわね…」と言っておく。
花鶴さんは元より、国木戸君もコクコクと頷く…可愛すぎます!
「それで、どうするのかい?僕は法律にはそこ迄詳しくないが、一般的に保険金受け取り人の詐称は罪に問われる。保険会社から既に保険金が支払わられた場合でも、その内容が虚偽と証明できれば裁判で取り戻すことも可能だ…と思う」
桝村会長は極めて一般的な反応でしょうか…
国木戸君は「千鳥誠治」と書かれた名刺を前に複雑な顔をして固まっています。
「ともかく…母に相談してみます」と言って彼も喫茶店を出ていく。
私たちも追うために会計を済ませようと思ったら、既にアキラパパが済ませてくれていた。
流石と言うか…プロだわ。
【クマとも】のメンバーは自分たちの青春問題から急に大人の世界の話に巻き込まれて、混乱し戸惑いながらその問題を見直す機会を頂いていたのかも…と前向きに捉えるキッカケを頂いたのかも知れません。
私はコレがキッカケで、国木戸君の悩みが無くなり、明るく闊達な青年になって皆んなと笑い合える時が直ぐ来るのではないかという希望に満ちた未来を想像して嬉しくなっていました。
ですが、ソレは私たちが未だ学生で、世間の事を何も分かっていない未熟な存在であることをこの後知ることになるのです。




