24・鹿部ヒロキの視点2・意識無意識
俺達は普段そこまで早い電車で通学しない。
遅刻しないことよりお嬢の安全の方が優先だからだが、今朝はお嬢が早く行くと言って聞かなかいので、渋々付き合う。
「いやだってさぁ〜モンチと早く会いたいじゃん」
「そこまでですか?…理解しかねますが」
「うっそヒロキ、お前アレの可愛さ見ただろ?触っただろ?抱いたじゃねぇか…」
「お嬢、ソレは成り行きと言うか…確かにアレの存在は俺も初めて見るタイプ何で、貴重だとは思いますが…」
確かに…確かに国木戸健一と言うあの存在は、非凡で小さくて可愛くて必死で真摯で、そして自分の無力に気付いて絶望している「助けてあげたいな」と言う関わる人の本能をくすぐる才能と容姿を持っている事を感じる。
お嬢がコレまで出会ったことのないタイプで珍しいのは理解出来る。
だが、生活スタイルを変えてリスクを取るまでの事だろうか?と疑問に思う。
「お嬢、何がそこ迄自身があのハム助に執着するのか考えたりしてんてすかい?」
「まぁた、ヒロキは難しいこと言い出してるなぁ…良いじゃん理屈なんて!早く会いたいって思うだけぇ~」
そんな話をして電車の混雑の中戸袋横で彼女を俺が被さるようにガードしているのだが、そこから外を眺めるアキラお嬢が騒ぎ出す。
「あ、はるかの奴、朝から抜け駆けしやがって…」
「はるかってのは…古賀澤はるか副会長の事ですかい?」
「他に『はるか』は居ないだろ?」
駅に着く前に逆行する線路沿いの通学路に松葉杖をつく古賀澤はるかと国木戸健一が見えた。
「お嬢のその距離感は羨ましいですぜ」
「……」振り向いたお嬢の顔が少し哀愁を感じさせるのは俺のせいなんでしょうかね…
お嬢の本当のところは俺にも分かるものではない…が、近くにいて分かってしまう事もある。
お嬢が自らを守るため、舐められないためと言ってギャルを貫くは今ツルンでいる連中との距離感の為のものではなく、学校以外の社会、取り分け彼女の父親とその取り巻きに対する反抗心と言うのが分かる。
俺に惚れてみたり、他の男を垂らし込んだり…身体を見せびらかす様なファッションでも、無理をして努力の上で維持している。
お嬢は誰とでもすぐに近づく、距離間を詰めるのが早い。ソレは一つの才能だし、ソレを維持する努力も厭わない。
だが、詰めた間合いからより深く相手と繋がる事を恐れている。ソレは過去の俺との関係が迎えた結果を彼女が真摯に受け止めているからだ。
国木戸健一は異質だ。
お嬢がモンチと呼ぶアレは、俺から見ても新しい扉が開かれる気がする特異点だ。
正直、男女とか性別どころか人類の外に居る生物かと思うレベルだ…まぁ宇宙人と言うつもりもないが…
お嬢が小動物に喩えて距離を詰めるのはいつもの手段のバリエーションで、正統なやり方じゃないから、相手を困らせる。
お嬢は見た目派手だが、ルックスはかなり上位だろう。だから、大抵の人間はその距離感にやられる。
だから、国木戸健一は見た目ハム助でも男である以上あっさり接近を許すか?と思ったが意外と手強かった。彼は元々独りが多い所謂陰キャだと調べた時は思っていたが、実際接触すると何故か生徒会長と副会長まで出てきた。
この特別感がよりお嬢を燃え上がらせている気がする。
そして、ハム助の前に立ちはだかったのが、古賀澤はるか。見事なくらいのお嬢の鏡面存在だ。
水と油くらい混じり合わない二人の存在が、一堂に会した状態はどうなるのか?と思ったが、互いに思うところあったのか、ハム助が特異点として機能したのか不思議な関係が出来たと言えるだろう。




