21・黒木サキの視点・保険医の過去の出会い
「今日エミリア、アンタの息子に会ったよ」
保健室の机の上にある大学のゼミの集合写真に向かって思わず呟く。
私は医師を目指して医療系の大学に進学したが、想像以上に自分が血が苦手だったという事に気付き、臨床心理士、カウンセラー方面に進む事にしたが、そこで出会ったのがスウェーデンから留学に来ていたエミリアだった。
彼女は聡明で美しく、大学でも注目の的だった。
私の地元はマグロの水揚げ漁港だったので、マグロの寿司は好きだがマグロは見た事ないと言うから、休みの日に誘って行ってみたら、地元のオッサンにナンパされてた。
助けに入ったら彼女はコロコロ笑ってダイショウブって言ってた。
暫くして彼女が休学すると聞いた。
国に帰る事にでもなったか?と聞いたら妊娠したと。
どうするのか?と聞くと「医療従事者として授かった命を守る」と言ったが、そんな単純な話では無いだろうと言うと、彼女は真剣に怒っていた。
残念ながら喧嘩別れになってしまった。
どうしたら彼女を説得出来るか、あの時三崎の漁港を誘わなければ…私は深く後悔して悩んだ。
あれから16年か?お前の子供はこの世の奇跡みたいな容姿だぞ…まぁ、男らしい…とは真逆だが、この世に降臨した天使が居るなら彼のことを指して言うだろう。
もっとも、彼自身はそれが幼少期からのコンプレックスになっているのは間違いないだろう。
私もこの無駄に大きな脂肪の塊のお陰で随分くだらない騒動に巻き込まれたモノだ。お陰で私は男は嫌いだ。会う男皆私の顔は見ない。私の胸だけを見ている輩が殆どだ。
まぁ、そう言う生き物なのだと割り切ると、そう言う扱いになるわな。
国木戸健一。エミリアの息子…私の向き合うべき贖罪の子供。
今お前の息子はコレまでの殻を破って世間と向き合おうと必死だ。私はその過程を見守る義務がある。
ふふふ、彼を治療する時必死に胸から視線を外そうと抵抗しながら、オズオズと私の顔を見上げる顔はそのまま抱きしめてしまいたくなる程愛らしかったな。
エミリアは逆で美しい顔で見下ろされたモノだからな。私が寄せていた想いにお前は気づいていたのだろうか?
大きなマスクと目元迄垂らした前髪からスタイルを少し変えたのは、成長の証なのかな。
取り巻きに集まるメンバーも学校の極端なメンバーばかりで騒がしいな。
悩んでぶつかって様々な経験をするのが青春だ。
黒妃なんて不名誉なあだ名だが、魔女っぽい私の立場で彼を見届けようじゃないか。




