19・古賀澤はるかの視点・車窓
足首の痛みは殆どなかった。
松葉杖の操作にはちょっと興味があったけど、煩わしいだけ。
ハイヤーの送迎は、便利だけどその特別感は特進科クラスがあっても、私立のお嬢様学校じゃあるまいし…とやはり二日も乗ったら飽きてしまった。
でも、国木戸君への興味は益々上昇するばかりで抑えられるものではなかったです。「何で千鳥アキラさんは突然絡んできたのかしら?」彼女の素行に関しては度々噂があって気にはなっていた。
実際会ってみて、あの挑発的ないで立ちとメイク、髪の毛の色…私の規律を隙なく完璧に守って自身の魅力を最大限に生かす…という努力とは全くの別角度での主張は、滑稽で蔑む対象でさえあると思った。
だが、会話をしてみると少し印象が変わった。
ボディーガードがついているとも聞いていたが、それは本当だった。
鹿部ヒロキという生徒は、どうみても堅気では無いと直感が告げていた。ただし、無鉄砲な暴走暴力装置だと困ると思いましたが、寧ろ冷静で頭の回転も早いタイプでした。
千鳥さんはかなりの変わり者ですが、主義主張は世間に単純に流された主体性の無い流行り廃りに乗ったものではなく、根拠ある抵抗や疑問から派生しているものだと理解できました。
まぁ、国木戸君の魅力に気付いた点においては、寧ろ親近感さえ湧くくらいです。
マスクからの保健室の一件は、私も悪ノリして仕舞いました。カチューシャでクマの耳を付けようと言う話になった時は、思わず予備の毛糸玉を提供したくらいてすし。
国木戸君はその際の私のこれまでの計画に気付いていたかもしれませんが、ソレは構わないと思っています。
何故そうしたのでしょう?
ソレは千鳥さんの単純な好意と素直な彼へのアプローチに、あっという間に私のコレまでの仕込みを飛び越されて序列が変わってしまうという恐怖があったからかもしれません。
そのくらい、彼女の言動は新鮮で魅力的に見えたのです。
それともう一つ。
桝村生徒会長の朝からの不愉快な私と国木戸君への干渉ですが、あの理不尽なキーホルダー取り上げからの逆転で、私と同様に『国木戸君に堕ちた』と理解しました。
最初は私に対する対抗心と、生徒会長としての理想を共有したいと言うエリート意識からの私に対するアプローチが、私がそこに興味が無いことに対する嫉妬だと断定していましたが…今回の一件で、少し人間らしい反応を見せてくれたので、僅かながら興味と共感を持てました。
明日からは、電車通学に戻して朝から国木戸君に「おはよう」と声を掛けたい。




