13・放課後の図書室
千鳥さんは、僕が明確に断ってしまったので少しだけ午後は大人しくなりました。良かった…。なんか、僕は古賀澤さんに少し認めて貰えて自信が付いたのか、ちゃんと話ができるようになった気がします。
午後の授業も終わり、僕はいつものように図書室に行き…ます…が、あれ?千鳥さんと鹿部君が付いて来るんだけど…何でだろう?
図書室に着くと、千鳥さんも鹿部君も友達が列をなしてついてくるように当然のように僕に付いてくるでは無いですか…
いつもの窓際の席に着くと「カレぴはここがいつもの定位置なん?」とその横千鳥さんも座る。
「あ、あの…今日はご友人たちとカラオケに行かれるのでは?」鹿部君の圧が怖すぎてなんか敬語になってしまった。
「あん?ギャハハ…何その言い方?!ウケるんですけど…カレぴっぴが普段どんなことしてんのか興味あるじゃん?!」
豪快に笑う…のは少々この場には相応しくない。
「あ…えっと…その…ココは静かに過ごす場所なので、そういった大きな声は…」
「えー?だって、ほら、そんなに他に人も居ないじゃん…誰もウチらのことなんか気にしなく無い?モンチはマジめか?」
「真面目…というか、ルールなので…」
「もー固いこと言わないで…ウチはモンチのことが知りたいと思ってさ?普段何してんのかな?ってちょっと追跡てきた」
ええ…追跡て来たというかすぐ後ろに居ましたよね…まあ、憑いてきたのか。
もう一人付いてきた鹿部君は僕らには背中を向けて立ったままだ。彼はまるで何かから千鳥さんから守っている様だ…千鳥さんといつも一緒にいる様だし、友達とは違うのだろうか?
すると、廊下から近づく話声が…僕の安息の場所だった図書室は何で新学期になってこんなにも騒がしい場所になってしまったのか…ちょっと困ったなぁと思っていたらその声の主は二人とも聞き覚えがある。
「なんでそれで会長が私の行くところに付いてくる必要があるのですか?」
「それはだな…君の最近の行動についてどうしても確認したいことが…」
ガラっと図書室の扉が開かれて、そう桝村生徒会長と古賀澤副会長が図書室に現れた。古賀澤さんは松葉杖をしている。わざわざ図書室迄来たのだ。
そして、古賀澤さんの目がカッと開かれる…そのまま無言で僕のところにやって来る。すると、腕を組んで立っていただけの鹿部君が古賀澤さんの前に立ちはだかる。「何か用ですか副会長?」威圧的ではないが低くかすれた声だ。
女性としては背が高い古賀澤さんを優に見下ろす巨漢の鹿部君を大して気にもせず「私は国木戸君に用があって参りましたの」
「奇遇だね…ウチもモンチちゃんカレぴっぴに用があるんで、後にしてくんないかな?」千鳥さんは僕の隣で足を組んで挑発的な態度で応える。
組んだ足元のスカートの奥が…僕は深くマスクをたくし上げて目を伏せる。
何か僕にはさっぱり状況が良く分からないけれど、何か始まったのか?
「き、君たちは…普通科の二年生か…確か…」桝村生徒会長がその状況に割って入る。
「副会長に会長まで…生徒会運営お疲れ様です…が、そこから先はご遠慮願えますか?」鹿部君の声が低く響く。
「む、僕が生徒会長ということを知って尚且つその行動を阻止しようというのか?」
「今この時の会長の行動原理に生徒会の権威が関係している様には見えねぇですが、何の活動の一環ですかい?」
「う…うむ。そうだな…き、君たちの出で立ちは風紀的な規律から大きく逸脱している…その点については話がしたい」
やり取りを聞いていると、鹿部君は見た目厳ついが、問答無用の排他主義で千鳥さんを大切にしているだけ…と言う訳でも無さそう。
なんか優秀なボディーガードみたいで、カッコいいな。
「私は生徒会副会長の立場関係なくここに来ました。そこに座っている国木戸君に用があったから会いに来たのです」古賀澤さんは…もう一度念を押す。
「さあ、国木戸君いきましょう」と松葉杖を脇に支えたまま僕に手を伸ばす。
「ちょ~待ちぃって…ウチが先にモンチと話してんじゃん…それとも、アポでもあったん?」その手に向かってシッシと手を払う千鳥さん。
「モンチって誰のことですか?…国木戸君とは朝話をしていて、その続きを語る必要があります。この時間という指定はありませんが話の続きは彼も望んでいるはずです」
いえ…特に望んでいたわけでは無いですが…
僕としてはもちろん、古賀澤さんとこうして会話することができることは夢のような出来事だが、この状況は…
「モンチは、このカレぴのことに決まってんじゃん~」
千鳥さんは隣に座っていた僕を両手で抱き寄せて、その豊満な胸に直接押し付けるように抱き寄せる。
甘い匂いと、しっとりと弾力のある胸の感触は巨大な羊羹に包まれたような感触だ。男子諸君ならだれでも憧れるシチュエーション。
だけど、僕はマスクの下、踏切で古賀澤さんを抱いて転んだ時に彼女の後頭部で受けた頭突きで鼻を負傷している。
マスクの下で血の味が広がる。
「ご、ごめんなさい!」僕は思わず千鳥さんを両手で押して突き放す。
その手がガッツリ千鳥さんの胸を掴んでいたのは事故だと思ってほしいです。
「オイてめぇ…この小童がぁ~」すごい勢いで鹿部君が振り向くが、千鳥さんが僕のマスク顔の下の絆創膏に気づいて止めてくれた。
僕は余りの激痛に顔を伏せる。
「あ、ごめん…モンチ、ケガしてたん?痛かった?」
千鳥さんが慌ててどうしていいかという感じで声をかけてきた。
「だ、大丈夫です…ちょっと鼻血が…出てしまった様で…皆さんに血が付かないように…少し離れて頂けますか?」
顔を上げる。
覗き込むように僕を見ていた千鳥さんが、僕の顔を見て心配そうな顔から急に何かをこらえる様に口元を抑えて反対方向を見てしまった。
横に立っている鹿部君も僕の顔を見て困惑した顔…
奥の古賀澤さんも松葉杖を倒して口元に手を当てて何かを耐えている。
桝村生徒会長も何やらショックを受けた顔をして、口元を手で隠している…
一体どういう状況なのであろうか?




