12・鹿部ヒロキの視点1・お嬢のボディーガード
お嬢がまた素っ頓狂なことを言い出した。
ハルウララかな二年生の教室。オレはお嬢こと『千鳥アキラ』に付き従っている弾避け人員だ。
「ウチ、クラスのモンチをペットにしたい」
「はい?」
「席譲ってもらって隣に座ったんだけど、マジ可愛すぎ~天然記念物」
「それは…人なんですか?モンチって何すか?」
「もう、ヒロキは鈍チンだな…モンチって言ったらモンチッチ…だってば。あのピグミンマーマレードみたいな可愛い生き物だよ」
「それは『ピグミーマーモセット』だと思いますけど…お嬢が席変わったのは知ってますが…ああ、そういえばチンマイ奴が奥に座ってましたね」
「それな~あの子めっちゃ可愛くね?何だろ、母性本能擽られる感じ?あんな子を抱きしめて甘えさせたい」
お嬢は天真爛漫という意味を地で再現している様な人だ。
オレは中学で暴れすぎて院の出入りをしていたところに千鳥の親父さんに拾われた。喧嘩の強さと見境ない狂犬っぷりを買われた感じだ。
家も金も無く、頼る親族も無く施設でも手に負えないオレを「見込んで世話してやる代わりに娘を護れ」と言われた。ただし…
「娘に手を出したら…分かってるな」
まあ、よくある誓約だ。
オレはその時既に十七歳だったが、お嬢と同じ中学に強引に【同級生】として通った。
お嬢は、俺の見た目や性格に関して特に何もなく立場も受け入れて良くしてくれた。
オレも狂犬の様な常に殺気を放ちながら渡り歩く生活にうんざりしていたから、二つ返事で引き受けた軽い気持ちから、目まぐるしく変わるお嬢の天衣無縫天真爛漫な生活に付き合うだけで随分変わったと思う。
だが、中学の卒業時期にやらかした。
お嬢から告白を受け、接吻迄許してしまった。
これはマズいと思った。だが隠しておいてもどうにもならない、お嬢は裏表がない性格なので、そもそも隠せるわけもない。
報告をすると、千鳥の親父は「そうか…」と言い、次の瞬間オレは吹っ飛んでいた。その後も何をされたのか分からないくらいボコられた。
気が付くと、お嬢が俺に覆いかぶさって泣いていた。これ以上やるなら私はパパとは二度と口を利かない、出ていく!と言って俺の命を懇願して助けてくれた。
病院で1か月入院する羽目になったが、お嬢はほぼ毎日見舞いに来てくれた。
退院したあと親父さんの前で、お嬢が熱弁をふるって俺に存在価値を与えてくれたことは感謝している。オレも覚悟を決めてお嬢の盾になることを誓った。
その後に提示された条件もすべて飲んだ。
お嬢は、その後変わった。
天真爛漫はそのままで、ファッションは派手になり、いわゆるギャルになった。高校デビューとも言えるが、本人の中ではもう少し違う割り切りがあったように見受けられる。
友達と呼べるような取り巻きもやや増えた。社会や家庭や勉学からやや外れかかった何かを抱えてでもそんなの笑い飛ばそうというメンツに見える。
まあ、年齢詐称のオレから見ても、人それぞれ生き方に悩みはつきもので、外見弄ってみたり素行変えて見たり、墨入れて見たり足掻いてやがる。
そんな中、お嬢のモンチッチブームだ。
戯言のネタかと思っていたが、意外とガチそうだ…その話をされた昼休み明けに教室で改めてその子ザルを確認してみた。




