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ライブ練習

「ワン、ツー、ワンツースリーフォー」

花咲先輩の合図と共に演奏が始まる

最初はキーボードメインのイントロなのでギターは目立たない

だが、一つ一つの音に手を抜かず丁寧に弦を弾いて行く

「君たちみんな口を揃えて、誰が悪い?君が悪いって

証拠不十分な容疑で、取り締まって揚げ足取って…」

水瀬先輩の力強い歌声に合わせるようにギターを鳴らす

Bメロからはギターがメインになって来るので気合を入れる

「後ろ指さして笑い、挫ける心突き刺して…」

水瀬先輩がキーボードを離れ、シンセを弾き始めるサビのタイミングでコーラスが入る

「視野が狭いくて言葉の選べないような、醜い存在にはなりたくない…」

大山先輩が上のパートを歌い、僕は下のパートを歌う

水瀬先輩に教えて貰ったように、遠くまで声を投げるように

「バカが多くて多角的になれないような、モンスターになりたくない…」

世界の現状を風刺するような歌詞が胸に刺さる

精一杯の気持ちでギターを弾いていると、2番のサビも終わりシンセのソロパートへ入る。

水瀬先輩がシンセの鍵盤の上で指を滑らせるように弾き、大山先輩はそれに合わせてベースを弾く。

ソロが終わり、ラスサビに入ると一気に雰囲気が変わり、少し静かになる

ピアノの音の伴奏と共に水瀬先輩が歌う

「誰も信じたくはない、誰も助かりやしない

誰に言っても届かない、誰の言葉も信じない

誰も誰かを愛さない…」

最後のフレーズが終わり、先輩はスタンドマイクに向かってMCパートの練習をする

「こんにちは櫻崎高校軽音楽部です」

その様子を見ていた新橋先生が提案する

「もうちょっと声のトーン上げて、声も大きくして言ってみると良いんじゃないかな」

「分かりました」

しばらくMCパートの練習が続き、それが一段落すると2曲目だ。

「それでは聴いてください。『My Heart Bule』」

この曲は何度も練習しているが、どうしても上手くいかないパートがある

ラスサビ直前に何度も変わるコード、今まで成功した事は1度もなかったので、今はただギターを必死に握ってがむしゃらに弾くしかなかった。

「My Heart Bule さぁ駆け出して…」

落ちサビに入ったタイミングで、一旦ギターパートが無くなる。

そのタイミングで深く深呼吸し落ち着こうとする

もうすぐだ。

全てを投げ捨てるように弾いた、何故か不思議と上手くいった。

ラスサビに入るとギターは少なくなるので余裕を持ってコーラスをする。

マイクを掴む手が震えて滑る。

まだ練習なのに本番くらい緊張しているのが目に見えて分かる。

ここでミスをすればどうなってしまうんだろうと嫌な考えが過っている。

だが、嫌な考えは現実にはならず2曲目が終わった。

少しの安心と、3曲目への恐怖が入り混じる

呼吸が乱れて心臓の鼓動もおかしいくらいの音を立てている。

「青海君大丈夫?」

大山先輩が声を掛けてくれた

「大丈夫…です…」

途切れ途切れに返事をする

「一旦休憩しよっか」

「了解〜青海水飲んで休んどけよ〜」

新橋先輩がドラムから離れて水を取りに行く

壁に持たれ掛かってそのまま座ると、水瀬先輩が声を掛けてくる

「セトリキツかった?」

「いえ、僕のトレーニング不足です」

まだ息は上がっているが、落ち着いてきた

水瀬先輩は僕に胸に手を当てて言う

「緊張してた?」

「はい…」

「僕も初めてサポートメンバー入った時そうなった」

「そうなんですか?」

「だから大丈夫だよ」

そう言うと先輩はシンセサイザーへと向かい、音色を再調整する

立ち上がった僕は、再びギターの方へと向かった。

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