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スミレが咲いたあとに  作者: うちの生活。


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8/10

8 それでも目を凝らしてみると

 もう何度、一緒に遊びに行ったり、泊まりにきたりしたかわからないくらい会っている。これまでずっと、この子は楽しそうな顔をしていた。でも、最近は少し考えこんでいるような時がある。


 ⋯ちょっと聞いてみようかな。気になるし。


「ひまちゃん、どうしたの?なにかあった?」

「ゆりちゃん⋯⋯」


 ⋯あれ?


 聞かないほうがよかっただろうか。今までに見たことがない、苦しそうな、泣きだしそうな、そんな表情をしている。


「⋯あのね、ずっといっしょにはいられないのかな?」

「⋯ずっと一緒?」

「うん。お父さんもゆりちゃんも好きだよ。でも、ゆりちゃんとはあまりいっしょにいられない。おうちにかえらないといけないよね。⋯⋯かぞくじゃないからなんでしょ?」

「⋯⋯それは、そうだね⋯」


 仲良くなってはいるけど、友達のようなものであって家族ではない。でも、このままの関係でいいんじゃないかって思ってた。


「⋯かぞくじゃない⋯⋯」


 でも、この子は思っていたよりも私の事を想っていてくれているのか、もう少し進んだ関係を求めているようだ。⋯私だって、この子のこんな顔は見ていたくない。でも⋯⋯。


「今の話、お父さんには言ってみた?」

「んーん、いってない⋯」

「そっか。私もねぇ、陽茉ちゃんとずっと一緒にいられたらなって思うときはあるんだよ?」

「⋯そうなの?」

「そうだよ。ルームシェアっていって、お友達と一緒に住んだりするのもあるしね」


 この子が、⋯⋯いや、私が本当に求めているのはそれじゃないと思う。でも、今言えるのはこれくらいじゃないかなとも思う。

 

「おともだちとルームシェア⋯。それだといっしょにいられるの?」

「うん。同じ家に住むからね」

「⋯⋯ルームシェア!!」 


 先ほどまでとは打って変わって、表情が一変した。


「まず、お父さんに言ってみたら?」

「うん!いってみる!!」


 言われたお父さんはどう思うのかな?⋯⋯まずいこと言ったかなぁ。


 私とルームシェア。


 もっと大きくなってたらわかるけど、小学生の子が親と離れてまではそんな事はしないよね。それにお父さんだって好きなんだから、今と逆になるだけでは意味がないもの。そうなるとお父さんも一緒にならないといけないけど、どんな関係になるんだろう?⋯⋯単なる同居人??⋯いや、説明難しいよね。⋯⋯⋯え?これもうお父さんと結婚したほうがいいんじゃない??私がお母さんになっちゃう??⋯⋯いやいや、話がとびすぎだよね⋯。


 ひとまずいつもの笑顔に戻ったことに、ほっとしていたら考えがあれこれと飛躍してしまった。


「⋯ゆりちゃん?どうしたの?」

「なんでもない!⋯さ、今日の夜は何を食べようかなぁ?」

「ひまね、カレーがいい!!」


 いけないいけない。私、変な顔してなかったかな。



ー☆ー☆ー☆ー



 ルームシェア。


 はじめてきいたけど、それならかぞくじゃなくてもいいんだって。


 ⋯⋯でも、それでいいのかな?

 ゆりちゃんとかぞくにはなれないのかな?


 もし、かぞくになったら⋯⋯ゆりちゃんがお母さん??⋯⋯なんかちがう⋯??だって、お母さんはしゃしんのひとだよね?


 あれ?みんなですんでたら、ともだちのおうちとなにがちがうんだろう??みんなもルームシェアなのかな??⋯⋯かぞくってなんだろう⋯??


 お父さんはかぞく。ゆりちゃんはともだち。でもいっしょになれる。かぞく⋯⋯ルームシェア⋯⋯。


 ⋯⋯⋯んー⋯⋯???


「よくわかんない!!」


 おっきいこえだしちゃった。


 あ、お父さんにいわないといけなかった!


「おとーーさーーん!!!」

「んんっ?」


 ルームシェアのこと!!みんないっしょがいいって!



ー☆ー☆ー☆ー



 最近の陽茉は、何かを考えているのか難しい顔をしている時がある。


 学校で何かあったんだろうか?


 けんか?

 先生に怒られた?

 ⋯まさか、父子家庭からのいじめ?!


 とまぁ、いろいろ変な想像なんかしてないで聞けばいい。そう思っていたら、


「おとーーさーーん!!!」

「んんっ?どうした?」


 いつもの元気な陽茉だ。かわいい。癒やされる。


「お父さん、ルームシェアってしってる?」

「え?知ってるけど⋯」

「それ、したい!!」

「はっ??!」


 はい?どういうこと??


「え、ルームシェアを?!誰と??」

「ゆりちゃんだよ。それだとかぞくじゃなくてもいっしょにいられるんでしょ?」

「っ!?⋯⋯あー⋯⋯⋯」


 あー⋯ルームシェア⋯⋯あー⋯⋯。


 ほんの少しだけ「どうして?」と思ったけど、最近の様子を見てると「あー、なるほど」とわからなくもない。遊びに行くときはあんなに嬉しそうなのに、帰ってくると少し悲しそうにしている。もちろん、嫌なことがあったわけではないのはわかっている。


 家での陽茉。

 学校での陽茉。

 菫の両親と会っている陽茉。


 他にもいろんな場面での陽茉の姿はあるだろう。でも、百合さんと会っている時はそのどれとも違うんだろうな⋯。


 もちろん、何故そこまで?とは思うけど、聞いたところで答えられないだろう。


 うちには母親がいない。


 それも理由の一つではあると思う。


 それでも、多分⋯。


『一緒にいたい』


 今は、それ以外の答えはなさそうだ。


「⋯ダメかな?」


 陽茉がすごく不安そうな顔でこちらを見ている。そんな顔で見られるとすぐに「いいよ」と言ってしまいたくなる。


「えーと⋯とりあえず、百合さんとかいろいろ相談しないとわからないかな」

「そうだよね!みんなでそうだんしないとね!」


 ⋯とりあえず、陽茉に対する答えは間違ってはいなかったようだ。


 ルームシェア。


 どうしたもんかな⋯。一緒に住むなんて、百合さんは本気なのか?⋯うーん⋯。


 ⋯⋯⋯⋯⋯。


「⋯よくわかんないな 」


 今度聞いてみればいいか。陽茉もうるさく言うだろうしな。


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