少年、ポーション作りに腐心す③
楽園への扉でスラムの入り口に飛び、カレンの案内でヒショウの自宅へとやってきた。それは大きさこそそこそこあるものの、他の家とあまり変わらない粗末な作りで、王都のギルド長とは思えぬものだった。
「ヒショウさん!」
「お、カレンじゃないか」
「ポールさん?」
玄関を開けるとそこにいたのはポールだった。かつてフロストクイーンと遭遇した時にライラたちの指導役を勤めた義勇士である。部屋の中には簡易的な寝床があり、そこかしこに死眼病の患者が眠っていた。体に浮いた斑点はくっきりと目の模様になっており、末期症状になっているのが明らかな患者が多数だった。
「ポールさん、ヒショウさんはどこにゃ?」
「ハクレイさんの部屋だよ」
「そっか、ポールさんはヒショウさんの手伝いにゃ?」
「ああ、とりあえずここに重病人を集めたんだが、まだまだ足りなくてな。しかし、流行り始めた時に一度調査したんだが、ほかの地区と比べても感染者の割合が多かったわけじゃなかったんだ。なんでスラムだけ重病人が多いんだろう」
「死眼病の特性ですな」
ジュリアンの言葉に全員が振り向いた。
「特性って?」
「死眼病は富裕層はなりにくく、感染しても軽症で済む場合が多いと聞きます。恐らく十分な食事と休息をとれば重症化しにくいと思われます。しかし栄養状態が悪い貧民になると、死亡する確率が飛躍的に高くなります」
「・・・でもぅ、貴族の中には下賤の者だから死ぬって言う人もいますぅ。その人たちは死眼病のことを“下賤病”って言っている人もいるんですぅ」
クリスティーナの言葉に怒気が混じっている。
「ポールさん、これ、ここの人たちの分。あとポールさんも飲んで」
「俺はまだ感染していないぞ」
「だめ。飲んで。感染してからじゃ遅いんだよ?」
「・・・わかった。遠慮なく飲ませてもらうよ」
ポールがポーションを一気に飲む。
「おお!?な、なんだこりゃ、力があふれ出そうになるぞ!」
ラルカたちが作ったポーションは、通常のポーションと比べ、桁違いの性能を誇る。ポールは今まで何度もポーションを飲んだことはあるが、身体に生命力が満ちていくのを感じたのは初めてだった。驚くのも無理はない。
「ポールさん、手分けして飲ませるよ」
「あ、ああ」
驚くポールだが、すぐに気を取り直した。ラルカたちもそれぞれ患者にポーションを飲ませる。
「大丈夫?ほら、これを飲めば元気になるよ」
「・・うう」
ラルカは患者である犬の獣人男性の体を起こし、ポーションを飲ませた。男性は息をするのも苦しそうだったが、ラルカは半ば強引に男性の口に薬瓶をつける。男性は少しずつそれを口に含み、やっとの思いで飲み干した。ラルカは男性を再び寝かせる。すると体の斑点がどんどん消えていき、男性の顔に生気が戻っていく。
「あ、あれ、か、体が、動く!」
先ほどの間での苦しさが嘘のように、あっという間に治ってしまった。
「どう?苦しくない?」
「あ、あ、ありがとう!なんて感謝すればいいのか・・・!」
感極まって泣いている。ラルカはにっこり微笑むと、部屋を見渡す。そこかしこで笑顔と歓喜の涙が見える。ラルカたちは手分けして、部屋にいる患者全員に飲ませた。
「よし、ここの人たちはもう大丈夫だね。残りはヒショウ先生に預けよう」
「配らなくていいにゃ?」
「僕たちは明日からポーションの製造に集中しよう。配布はヒショウ先生たちに任せたほうが効率がいいと思うんだ」
「俺も賛成だ。カレン、心配な気持ちはわかるが、俺たちに任せろ。誰も死なせないさ」
「・・・ありがとうにゃ」
ポールの言葉に、カレンが涙をぬぐった。
「じゃあ、ヒショウ先生にも話をしよう。確か、ハクレイさんって人の部屋にいるんだっけ?」
「案内するにゃ」
お読みいただきまして、ありがとうございます。
ご感想、評価、リアクションお待ちしております。
しばらくは毎日投稿しますので、応援よろしくお願いいたします。




