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一度世界を救った少年は、再び世界を救う!?  作者: 長月楠


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少年、ポーション作りに腐心す②

「戻ったぞ、今配り終えた」

 王都北東の地区にポーションを配り終えたライラが、学園でポーションの製造をしているラルカとクリスティーナのところに戻ってきた。

「お疲れ様、ライラ。まだ次のポーションは時間がかかるから休んでて」

「何か手伝うことはないか?」

「大丈夫」

 そこにゴンゾ、ジュリアンが戻ってきた。

「こっちもいったん終わっただよ。南東地区はまだそんなに患者いねえべな」

「我が君、本日の薬瓶はこれだけにございます」

「ありがとう、二人とも休んでて」

 ゴンゾは疲れた様子で椅子へ腰かけた。ゴンゾとライラ、それにカレンは街へ聞き込みをし、患者のいる家にポーションを配る役目で、ジュリアンは薬瓶の支給、ラルカがケヒト草の収集、クリスティーナがポーション製造と役割分担をしていた。午後にはライラとゴンゾは北西部、南西部へ配布の予定だ。

「クリスもいったん休んだら」

「だ、だいじょうぶですよぅ、これくらい平気ですぅ。私の夢がかなっているんですぅ、疲れなんて感じないですよぅ」

 そうは言うが、クリスティーナは朝食をとってから休みなく作業している。傍目に見えても疲れているのは明らかだった。

「クリス、気持ちはわかるが休むのも仕事のうちだ。ポーションの製造はお前が要だ。お前が倒れたら元も子もないんだぞ」

「・・・は、はいぃ」

 しぶしぶといった様子で手を止める。そんなクリスティーナ達にラルカは童子の宝物庫(トイ・ボックス)からサンドウィッチをとりだし、一人一人に配った。

「お疲れさま。これ、昨日グリメルさんに作ってもらったの。これ食べて、午後に備えよう?」

 大きいコッペパンの中にレタスとトマト、チーズに薄く切ってからみを抜いた玉ねぎ、そしてパン粉をつけ香ばしく揚げ焼きにした白身魚のフライが挟まっている。白いソースはモルネーソースだろう。見ているだけでよだれが垂れそうだ。

「カレンはまだ帰ってきてないけど、食べていよう。いただきまーす!」

 全員、かぶりついた。フレッシュな野菜のみずみずしさと、しっとりしながらもジューシーなフライの食べ応えがモルネーソースで完璧に融合している。全員空腹だったのだろう、夢中で食べ終えてしまった。

「いや、グリメルさんの食事はいつも最高だな」

「同感だべ。カレンも早く帰ってくるといいだな」

 するとそこにどたどたと足音が近づいてきた。

「たいへんにゃ!!」

 開口一番カレンが叫ぶと、ラルカに飛びついた。

「ラルカ、大変にゃ、助けてほしいにゃ」

「ど、どうしたのカレン、落ち着いて」

「一体何があったんだ。お前はスラムへ配りに行ったんじゃなかったのか」

「す、スラムで、重病人が大量発生してるにゃ!このままじゃ、みんな死んじゃうにゃ!!」

 その言葉に、全員が立ち上がった。

「なんだって!王城の発表じゃ、そんなこと言ってなかったぞ!まだ重病者は出ていないって!」

「恐らく、スラムに関しては病気に関する知らせはおろか、調査自体していなかったのでしょうな。愚物どものやることです」

「そ、そんなぁ、ひ、ひどいぃ・・・」

 クリスティーナが泣きそうになる。

「カレン、落ち着いて。絶対に助けるから。スラムの様子はどうなの?」

「と、とりあえず、貰ったポーションは重病人に飲ませたにゃ。飲んだ人は治ったけど、数が全然足りなくって、それで・・・」

 カレンが涙ぐむ。

「わ、私ぃ、今すぐポーション作りますぅ!」

 クリスティーナがすぐに作業を開始する。

「ライラはこのことを、ヒショウ先生に伝えて」

「わかった!」

 ライラはすぐに部屋を出た。

「ゴンちゃんも作るの手伝って。ジュリアン君は死の大地へケヒト草の収拾に向かって」

「おうよ」

「御意」

 ジュリアンが部屋を飛び出る。ゴンゾは残ったケヒト草の粉砕に取り掛かった。

「か、カレンはどうするにゃ!?」

 ラルカはにっこり笑うと、サンドウィッチをカレンに渡した。

「これを食べて休んでて。ポーションを作ったら、スラムのみんなに届けてあげてね」

 カレンはサンドウィッチを手にして、しばらく呆然としていたが、涙をこらえてかぶりついた。本来美味しいサンドウィッチのはずだが、涙の味しかしなかった。




「遅くなった」

 しばらくしてライラが戻ってきた。ラルカとクリスティーナ、そしてカレンはポーションの生産中だ。

「ライラ、お疲れ様。どうだった?」

「ヒショウ先生はすでにスラムに向かったらしく留守だった。どうやらスラムの現状に、私たちと同時か少し前に気付いたらしい。オーザカさんに聞いたら、スラムにある先生の自宅を拠点にして、対応をすると言っていた。数人の義勇士も応援に来てくれるそうだ」

「そっか、ありがとう。じゃあポーション作ったら、先生の家にいったん行ったほうがいいね」

「ああ、そう思う。・・・まだ時間かかりそうだな。わたしはその間、王都の西側の感染状況を確認してみよう。王城の発表は当てにならん」

「うん、よろしく」





 さらに時がたち、ライラが戻ってきた。

「西側の感染者は東側より多そうだ。だが重病人のうわさは聞こえない。スラムを集中的に対処したほうがいいと思う」

 ライラの言葉にラルカが頷く。そこへケヒト草を集めたジュリアンも戻ってきた。

「我が君、いったん戻ってまいりました。今回集めたのはこれだけです」

「ありがとう。この時間では、ケヒト草の日干しはできないから、今できた分だけでも持っていこう」

 既に時間は昼時の終(17時)を回っている。日差しはすでに陰り始めていた。

「誰が行くんだ?カレンだけか?」

「いや、全員で行こう。今日はこれ以上作業進められないし、全員現場を見たほうがいいと思う。百聞は一見に如かずだからね」

 ラルカはポーションをライラ、ゴンゾ、カレン、クリスティーナへ渡した。

「これ飲んで。予防の効果もあるから。少なくとも一年は死眼病はもちろん風邪にもかからないと思うよ」

「ラルカとジュリアンはいいのか?」

「我はヴァンパイアだからな。生者のかかる病気とは無縁だ」

「僕も大丈夫。病気とか毒とか効かないの。なぜかわかんないけど」

 四人が飲み干す。

「じゃあ、出発しよう。カレン、案内をお願い」

「わかったにゃ!」

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