少年、薬草集めに奔走す③
「あ、あれは」
「あ、あわわわわ・・・」
黒い巨大な二体のカマキリが近づいてくる。金属のように光る両手の鎌で大木を数本まとめて薙ぎ払いながら。
「やはり死の大地だ。こんな奴がごろごろいやがるとはな」
ダイガンが大剣を抜刀すると、二体の魔物、カイザーマンティスがその鎌を振り下ろした。しかしそれより早くダイガンがその大剣を上段から振り下ろす。銀色の闘気が斬撃となって飛び、カイザーマンティスの肉体が真っ二つに裂けた。それでも手足は震えるように動いていたが、すぐに動かなくなり、絶命した。
(・・・やはり、強い!カイザーマンティスは城落しだったはずだ。それが相手にもならない)
(ほう、人間にしてはやるな。デュバロらでは勝ち目はないだろう。我でも勝てるか怪しいところだ)
「坊や、お前の番だぜ」
「うん」
ラルカが返事をすると同時に、もう一体のカイザーマンティスが鎌でラルカの命を刈ろうとする。その鎌をラルカは素手で受け止めた。
「なに!!」
「ばかなっ!?」
今度は狂戦士の栄誉のメンバーが驚きの声を上げた。カイザーマンティスも何が起こったかわからないように呆然としている。それもそうだろう、百年を超える彼女の生涯でも、自身の鎌をよけられたことはあっても、受け止められたのは初めての経験だった。ラルカは右手で鎌を受け止めたまま、左手の人差し指を空へ指差した。
――――戦いの音が聞こえる、完全無欠なる者の雷鳴が。愚かなるものを貫き、物言わぬ死体とならん
「木星時雨」
その言葉と同時に、天から数多の雷が落ちてきた。死の大地に雷鳴が轟く。稲光の一つがカイザーマンティスに命中し、瞬時に彼女の命を奪った。
「・・・・」
スタルク達が言葉を失う。決してラルカを過小評価していたわけではないが、これほどまでの使い手とは思っていなかった。そんな視線の中、ラルカは淡々とカイザーマンティスの死体からコアと鎌を切り落とした。
「じゃあ、これ貰ってくね。あと、さっき雷落としたところに魔物の死体があるはずだから、おじさんにあげる。お礼だよ」
そう言って背を向けたラルカに、ダイガンが「待て」と声をかける。
「なあに?」
「大した強さだ、坊や。だが、この地の奥には行かないほうがいいぜ」
「どうして?」
「これは親切心で言ってるんだぜ。何しろ死の大地には、人間が戦ってはいけない魔物がいるんだ。坊やでも、七星使徒でもな」
「そうなんだ、ありがとう。じゃあみんな、帰ろうか」
にっこり笑うと、今度こそラルカたちは帰って行った。
「あきれた子だな。あれほどの強さとは。見くびっていたつもりはなかったが」
ラルカたちの姿が見えなくなると、リキッドが眼鏡の位置を直しながらつぶやく。
「あ、あの魔法、雷の最上級魔法ですよ。それをこともなげに。しかも詠唱破棄で」
ゲルも驚きを隠せない様子だった。
「落ち着け、てめえら。確かに坊やの強さには驚いた。だが、それが何だってんだ?あの子が俺たちの目的の障害にならなけりゃいいって話だろうが」
「スタルクの言う通りだ。あの坊やは確かに強い。だが、ただ強いだけだ。忘れるな、俺たちの目的を。別にあの坊やを倒すことじゃねえ、視界を広げるのは結構だが、見失うんじゃねえぞ」
ダイガンの言葉に、全員が頷いた。
お読みいただきまして、ありがとうございます。
ご感想、評価、リアクションお待ちしております。
しばらくは毎日投稿しますので、応援よろしくお願いいたします。




